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「医療革命! ゲノムが世界を変える(前編)」GINZA CROSSING Talk

ソニー銀行の1社提供でお送りしている経済情報番組「GINZA CROSSING Talk」。
番組前半のゲストトークコーナーでは毎回、「旬」のリーダーを招き、尾河眞樹氏が鋭く切り込みます。

5月のゲストは、ヤンセンファーマ(株)でメディカルアフェアーズ本部長を務める、鈴木蘭美さん。
進化するゲノム情報解析技術。個人の体質や病状に最も適した治療が可能になる「ゲノム医療」に期待が高まっています。ヤンセンファーマの鈴木蘭美さんは、若き日のある出来事をきっかけにがんの完治をライフワークと志し、ゲノム医療の進化がもたらす未来像と課題についてさまざまな問題を提起してきました。未来の健康はゲノム医療でどう変わるのかクロッシングトーク。

このブログでは、前編の放送内容を抜粋してお届けします。

★ すべてのがんを平均化した5年生存率は、日本では2011年の時点でおよそ64パーセント。アメリカは、2013年、67パーセントに達しています。乳がんや前立腺がんなどは、日米とも5年生存率が9割を超えています。近年では、AIの進化やゲノム解析が進んだことで、新薬の開発やがんの治療が変化してきました。

鈴木蘭美さん:
がんの細胞は自分の細胞ですが、少し違う。何が違うかというと、遺伝子が違うのです。細胞が分裂するときに遺伝子変異が起こり、普通の細胞ががんの細胞になって、そしてがんの細胞が増えていく。ですから、遺伝子がどのように変化したかを理解して、その違いを治療としてアタックできるということが重要です。そこで、より効率的、効果的に治療を行うため、近年、注目されているのがゲノム医療です。

ただ、自分の細胞とがん細胞の違いは、がん細胞によっても違う。私のがんと他の人のがんによっても違うので、自分のがん細胞の遺伝子変異をアタックできる治療を選ばなくてはいけません。つまり、どの遺伝子変異が起こっているかをまず察知することができたら、自分のがんに最も適した治療を選ぶことができるわけです。患者さんにとっても、社会にとっても、自分に効かないがん治療は最も好ましくないものです。薬Aが効かなかったら、次はB、そしてCというふうに、いろいろな治療を試している間に、刻々とがんは進化していきます。細胞が分裂するたびに遺伝子変異が生じる恐れがあるので、なるべく早期に、自分に最も合ったがん治療を受けることが大切です。

2019年に、日本でもがんの遺伝子パネルが承認されました。このパネルは、114種類の遺伝子を解析することができます。このようなパネルの普及はこれから期待できると思いますし、一度に調べる遺伝子の種類も劇的に増えていくと思います。2020年2月の理研の発表によりますと、4,600万個の遺伝子変異ががんに関して同定されています。これらの数の遺伝子の種類が、今後、ルーティンの解析の中に載っていくのも夢物語ではないと思っています。

また、最適な治療を選ぶ上では、遺伝子プロファイルの情報だけではなく、例えば免疫のプロファイルや栄養などの情報を蓄積することも重要です。しっかり栄養が取れているか。また、体重があまりにも軽いと、抗がん剤はかなり体に負担が大きい。そういうさまざまな患者さんのご自身、そして環境の情報も蓄積されて、よりよい治療効果が期待できる環境が整備できたらいいと思います。

さまざまながんの治療法が開発されていますが、特に期待されているのはCAR-T細胞療法と呼ばれるものです。
このCAR-T細胞療法は、患者さんの体内から免疫細胞を取り出して、これを特別な施設に持って行って遺伝子の改変を起こし、品質検査を厳密にした後に、医療施設にその細胞を戻して、その患者さんの体内に注入するというものです。特に子どもの白血病では、ほぼすべての薬に有効性が認められず、余命6カ月以下といわれていたような子どもが、CAR-T細胞療法で完治して長い間生きることができているといったデータが出てきています。コストはかなりかかる治療です。

今、CAR-T細胞の治療を国民皆保険で受けている人は数が限られていますが、今後、このCAR-T細胞療法がより多くのがんの治療に使われていくときには、それをどう国民皆保険でカバーするかというのは一つの課題だと思います。

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★ 現在、製薬会社の要職にあり、世界の医療従事者と患者に医薬情報を伝えている鈴木さん。この道に進もうと決意する出来事がありました。

鈴木蘭美さん:
私は15歳のときに、女優になろうと思って日本を離れました。ところが、20歳ぐらいのときに私の友人が2人、がんを患い、私とあまり年齢も変わらない彼らが苦しむ姿を目の当たりにしました。当時の抗がん剤は、副作用が非常に重篤だけれども効果は十分ではありませんでした。それを私が許せませんでした。ある朝、目覚めてみると、自分はがんを完治するために生まれてきたということが腹にすとんと落ちていたのです。降りてきたのですね。これを周りの人にお話ししたら、たくさんのかたがたが協力してくださって、奨学金までいただいて、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでがんの研究をして博士課程を取得しました。


★ 若くしてがんに苦しむ友人を見て、がんを心から憎み、完治を志した鈴木さん。正しい医薬情報を伝え続けることがその達成につながるといいます。

鈴木蘭美さん:
日本は、素晴らしい国民皆保険が存在して、その保険下にあるかたがたは最良の、そして最新の治療を保険で受けられます。ただ実際、すべての患者さんに最善の治療が届いているかというと、そうでもありません。例えば、正しい診断を受けていないかたもいらっしゃいますし、自分に合った治療法が存在することを知らないというかたもいらっしゃいます。そのような医療における情報の格差をなくし、正しい情報に基づいて患者さんと医療者が治療を選べるようなことを実現したいと思って仕事に励んでいます。

このような進歩の半面、今直面している課題もあります。直近の日本でいえば、保険外になってしまう治療というものがあります。例えば私が乳がんを患っていて、通常使われる乳がんの薬が効かない難治性の乳がんだったとします。そこで、ゲノム解析をして自分のがんに最も合った治療薬を見つけたけれども、その治療薬は肺がんで承認されていたとすると、私の乳がんにはその保険が償還(適用)できないという可能性があるのです。そうすると、がんのゲノム解析も治療も自己負担しなくてはいけなくなってしまいます。つまり、乳がんに対して乳がんのお薬は保険の適用が付くけれども、肺がんの薬は付かないということなのですね。

そのような課題に対する一つの方法としては、乳がんとか、肺がんとか、臓器別で薬や治療の承認をするのではなく、遺伝子変異とか、それから作用機序に注目するということです。薬が何をアタックするかというところを基準に薬を償還(適用)したり、承認するということがあり得ると思います。もしそれが難しいようであれば、これは私の個人的な意見ですけれども、たとえ私が自己負担でゲノム解析や治療をしたとしても、自分の情報を匿名化して、製薬企業や他の研究者に有償あるいは無償で譲渡できるようなしくみがあるといいなと思います。例えば、肺がんの薬を売っている製薬企業が、実は自分たちの薬が乳がんにも効いたということになれば、これはとても重要な情報なので、価値があることだと思うのです。ただ、このようなしくみはまだできていません。


★ AIの活用で急速に進化するゲノム医療。果たして、がんの完治は可能なのでしょうか。

鈴木蘭美さん:
20年後には、ほとんどのがんは完治できると思っています。

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日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式Youtubeに掲載しています。
ぜひ、こちらもチェックしてみてくださいね。

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