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「医療革命! ゲノムが世界を変える(後編)」GINZA CROSSING Talk

ソニー銀行の1社提供でお送りしている経済情報番組「GINZA CROSSING Talk」。
番組前半のゲストトークコーナーでは毎回、「旬」のリーダーを招き、尾河眞樹氏が鋭く切り込みます。

ヤンセンファーマでメディカルアフェアーズ本部長を務める鈴木蘭美さんの後編。がんや難病の新薬開発で注目される「ゲノム解析」。欧米各国が本腰を入れ、国際競争は激しさを増す中、日本も大規模なデータベース構築に動き出しました。日本がゲノム医療の分野で世界一になることはできるのか、私たちのヘルスケアの未来はどうなるのか、クロッシングトーク。

このブログでは、後編の放送内容を抜粋してお届けします。
※前編記事はこちら


★ 去年末、厚生労働省は、がんと難病の患者およそ10万人を対象に、全ゲノムを解析する計画を打ち出しました。欧米各国が全ゲノム解析に本腰を入れる中、日本もデータベースを構築、新たな薬の開発につなげるといいます。

鈴木蘭美さん:
全ゲノム解析は、簡単に言うと、細胞の中に入っている遺伝子を網羅的に見るものです。簡易的な遺伝子解析は約1、2万円でできますが、全ゲノムでは数十万円かかります。今は原因の分からない難病や、難治性がんの研究などに用途が限られていますが、個別化医療や予後にも有益と考えられ、少しずつ普及してきています。
 
一般向けにはそれほど多くありませんが、北米の西海岸に、それに特化したクリニックがあります。彼らは、全ゲノム解析と先駆的な健康診断を組み合わせたサービスを過去数年提供しており、全身MRIや継続的な心臓モニタリング、メタボロミクスといわれる代謝のプロファイリングのデータをAIと医学の専門家が精査して、個人に合ったベストのアドバイスを提供しています。

私も簡易的なゲノム解析を行った経験があります。それによって、自分がかかりやすい病気と、かかりにくい病気がわかりました。例えば、私は心臓の血管が詰まる可能性が普通の人より高い。ちなみに、私の祖母は40歳半ばに脳血栓で倒れていますので、祖母の影響を遺伝的に受けているのかもしれません。また、アルツハイマーの可能性も、普通の人の3、4倍高いことが分かりました。もちろん、知らない権利もありますが、少なくとも私の場合は、知ったうえでできる限りの予防を始めています。

尾河眞樹さん:
一方で、ゲノム解析の結果を受けて予防的手術を選択したハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんには賛否の声が。

鈴木蘭美さん:
彼女が受けたのは、BRCA1/2と呼ばれる遺伝子の解析です。このリスク遺伝子を持っていると、70歳までに乳がんにかかる可能性が極めて高い。例えばイスラエルや欧州では、予防的な乳房切除が普通の対応として考えられています。
ただ、そういった非常にパワフルなリスク遺伝子を持っていても乳がんにならない人がいるのも事実です。乳がんにならない人に共通の因子が発見できれば、BRCA1/2の遺伝子変異を持っていても乳房を切除しなくてもいい時代が来ると思います。

がん治療が非常によく効くかたがたのことを、スーパーレスポンダーと呼んでいます。一方、治療を受けたけれども効果がなかったというかたがたをノンレスポンダーと呼んでいます。では、それはどうしてなのか。例えば、遺伝子で事前に特定できるのか。患者の環境のせいなのか。副作用も同じで、たまに重篤な副作用が薬では生じます。こういうことを紐解いていくと、患者のかたに、より適したがんの治療が届くようになると思います。
こういった個人情報については、自分の情報をここまで使っていいという同意がない限り、研究など、目的以外の活用はできません。今後、同意の方法や倫理委員会などを整備する必要があります。また、私たちの健康情報が悪用されない、差別を受けないという法の整備も必要だと、個人的には思っています。例えば、病気のリスクが高い場合に、雇用や保険の差別を受けないといったことです。

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★ ゲノム解析でがんや難病の治療法が進化する一方で、ゲノム医療を巡る国際競争も激しさを増しています。日本の課題は何でしょうか。

鈴木蘭美さん:
日本は、ゲノムにおいて世界一になれる可能性を持っています。いくつか理由があります。ひとつは、素晴らしい国民皆保険を持っているということ。そして、健康で長寿の人口がある科学立国であるということです。
でも、あえて日本の課題を申し上げると、ひとつは品質を担保するための認定システム。もうひとつは、誰でも参加できるゲノム研究。三つ目の課題は抱え込みです。営利・非営利にかかわらず、研究者または研究する団体が、自分たちの作った人の健康情報を、ゲノムも含めて、自分たちのアセットとして抱え込んでしまうことが過去に多くありました。今でもあります。非営利に関しては、積極的にデータをシェアすることによって一緒に研究ができるエコシステムをつくる動きがあります。一方、営利に関しては、そこまで達していません。

最近では、ヤンセンファーマと塩野義製薬が、途中で中止されたアルツハイマーの治験のデータと患者の検体に、世界中の研究者がアクセスできるしくみをつくりました。将来的には、製薬企業が行う治験のすべてがオープンアクセスになるといいと私は思っています。

★ 最後に、鈴木蘭美さんがビジネスパーソンに伝えたいこととは。

鈴木蘭美さん:
私は、自分を音楽に例えるなら、ゲノムは楽譜だと思っています。その楽譜の全容、各箇所の意味が、今後、医学と科学の前進でわかってくる。自分の楽譜を見ながら、私はより良い音楽を奏でたい。また、自分の楽譜が他の人に役に立ったり、私自身も他の人の楽譜から学べるのであれば、どんどんシェアしていきたいと思っています。


日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式Youtubeに掲載しています。
ぜひ、こちらもチェックしてみてくださいね。

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