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「日本を救うのは"マーケティング"だ!(前編)」GINZA CROSSING Talk

ソニー銀行の1社提供でお送りしている経済情報番組「GINZA CROSSING Talk」。
番組前半のゲストトークコーナーでは毎回、「旬」のリーダーを招き、尾河眞樹氏が鋭く切り込みます。

6月のゲストは、ケイ アンド カンパニー(株)代表の高岡浩三さん。
高岡さんは世界最大級の食品メーカー「ネスレ」の日本法人のトップを務め、業績を大きく伸ばしました。現在はマーケティングのエキスパートとしてコンサルティング事業を行っています。「キットカット受験生応援キャンペーン」や「ネスカフェアンバサダー」など高岡さんが手掛けてきた革新的なマーケティング戦略についてお聞きします。


尾河眞樹さん:
グローバル企業であるネスレ日本の経営トップを10年間務められましたが入社することになったきっかけはなんですか。

高岡浩三さん:
私は10歳のときに父親を肺がんで亡くし、祖父も42歳で病死しています。ですから、どこかで自分の寿命について42歳を意識していました。そしていざ就職しようとしたとき、普通に日本の会社に入ってもいいのかと悩んだのです。当時、外資系は人気がありませんでしたが実力主義で、ネスレの年金制度は社員が亡くなった後、その給料の半分が家族に入り続けます。その2点が決め手になり、ネスレへの入社を決断しました。

日本にネスレが来たのは今から105年前で、長い間スイス本社で採用された人材が社長に就任していました。しかし、ちょうど10年前に各国の優秀な人材を引き上げて、経営陣にしようという風潮になったのです。私は年老いた母親の面倒を見るため、海外勤務は断っていたので、ネスレ日本の社長になるとは思っておらず大変驚きました。

尾河眞樹さん:
マーケティングの世界的権威、フィリップ・コトラー氏から、高岡さんは日本人で最高のマーケターと絶賛されています。

高岡浩三さん:
社長になってからは、全社員にマーケティングが必要だと考えるようになりました。マーケティングとは、顧客の問題解決のプロセスから生み出される価値のことです。例えば人事部は社員のために働いていますし、採用担当者は学生や転職を考えているかたのために働いています。営業部であれば買い物に来るかたはもちろん、取引先のスーパーや問屋のすべてが顧客になります。そして皆さんが問題をお持ちなのです。ただ、顧客の問題を発見するのは難しいことです。市場調査を行いそこで見つけた問題を解決しても、ヒット商品はほとんど生まれません。それは競合他社も行っているからです。ですから、顧客が諦めている問題を見つけ出すのです。例えばAmazonがどうして革新的かというと、20世紀には買い物はお店に行くのが当然だったのに、今では自宅でスマホを操作して品物が届き自動的に決済できる。これこそがまさにイノベーションなのです。

高岡浩三氏3.JPG

私はネスレに入社して以降、海外のかたに「どうして日本だけ年に1回しか新卒を採らないんだ」などさまざまなことを質問されました。そこで本質的なことを考えるようになりました。自分が思いつかないようなことに気づくには、ダイバーシティに触れることが大事です。日本の企業の場合、それが非常に難しく、ネスレのような外資系でも、日本では98%ぐらいは日本人なのでなかなか難しいわけです。そこで私は「イノベーションアワード」を創設しました。社員全員が自身の部署の顧客について、新しい現実から来る新しい問題と解決方法を考えるのです。しかも、日本人が得意なグループワークでは行いません。結局、イノベーターはひとりなのです。社員は2,500人いますが、年間5,000件以上の応募があります。ただ、1位を取った人間も、それまでの人事評価では8割の人材がハイパフォーマーであるとは評価されていなかったのです。イノベーションを起こす能力を持つ人間を高く評価していませんでした。そこでこのような評価を変えるべく、社長在任中の10年間取り組んできました。

★ 売り上げが低迷する「キットカット」のカンフル剤として高岡さんが打ち出したのが、受験生応援キャンペーンでした。

高岡浩三さん:
社長になって以来、ニュースにもこだわるようになりました。なぜなら20年前から広告が効かなくなっているからです。例えばお昼の情報番組で、医者がポリフェノールは動脈硬化予防に良いと発信すると、次の日には赤ワインが品切れになることがありました。テレビ広告を流すより専門家が健康情報を語るだけで、すぐに店頭からものがなくなってしまうのです。人は情報をどうしても人に伝えたくなりますので、インターネットの時代には口コミがあっという間に広がるのです。

20年前にはブログがあり、こうした情報発信により最初に成功したのが、キットカットの「受験生応援キャンペーン」。当時、受験シーズンに大学へ行き、キットカットの箱を印象付けました。そうすると生徒たちは、これをニュースにしてくれました。実は以前、一部の顧客からキットカットは「きっと勝つ」に掛けて、ゲン担ぎにしているという声を聞いていました。それを我々ではなく、第三者のブログによって広めていただいたのです。つまり、21世紀はネットの時代であるからこそ、広告からPRの時代になったのです。
キットカットの受験生応援キャンペーンは商品の味や品質ではなく、人の気持ちを解決するものでした。中学生や高校生の悩みは恋愛、受験、友人関係です。これが私たちのブランドスローガンである「Have a break, Have a Kit Kat」と一致していたので、日本のキットカットの心にしようと思いました。

マーケティングは商品周りだけではありません。レクサスやメルセデス、BMWを手にするだけでお金持ちの気分になるように、ブランドは物質的な価値と精神的な価値の両方を兼ね備えています。その2つから顧客の問題を解決していかなければいけません。日本はものづくり大国といわれて、ものばかりに目がいきがちですが、現在のGAFAに代表されるインターネットの大企業はほとんど商品を作っていません。実はそれ以外の潜在的な問題を解決しているのです。


日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式YouTubeに掲載しています。
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