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「日本を救うのは"マーケティング"だ!(後編)」GINZA CROSSING Talk

高岡さんがネスレ時代に考案した「ネスカフェアンバサダー」というビジネスモデル。顧客の問題解決という視点から生まれたイノベーションですが、始めてみると意外な発見があったといいます。後編ではマーケティングとイノベーションの関係、ネスレ退職後に高岡さんが取り組むデジタル技術を活用したマーケティングについてお聞きします。

尾河眞樹さん:
ネスレ時代、数々のマーケティング戦略を成功させてきた高岡さんですが、イノベーションに関してはいかがでしょうか。

高岡浩三さん:
イノベーションとは技術革新のことです。例えば顧客の問題に焦点を当てると、すでに顧客自身がわかっている問題がありますが、顧客が諦めていたり、まだ気付いていなかったりする問題もあります。その問題を発見し、解決して出てくるものがイノベーションです。商品の不具合を直すことをイノベーションとは言いません。私はリノベーションという言い方をしています。

ネスカフェアンバサダーについては、バブルがはじける前まで日本企業では総務部がコーヒーを買い、社員はそれをただで飲んでいました。しかし、バブルがはじけると会社はその経費を出せなくなってしまったのです。そこで家庭用マシンをオフィスの片隅に置くことで、簡単にリーズナブルなコストで、飲めなくなっているという問題を解決しました。ヤクルトレディのようなビジネスモデルではコストがかかりますし、ましてや今は人手不足です。これではもうからないということで、インターネットでアンバサダーを募りました。代理店機能の役割を無償で行っていただくという虫のいいモデルを考えたのです。マシンを無料で貸与する際、貯金箱を一緒に送り、コーヒーを飲んだかたはそこへ30円ほど入れていただきます。翌月、そのお金でコーヒー代をアンバサダーにクレジットカードで支払っていただくのです。

ただ、アンバサダーのモチベーションもあります。カプセルや水のタンクの入れ替えのように面倒な作業がありますし、お金も集めなければいけません。そのため先に北海道でテストを行うことにしました。そしてコマーシャルを流したのですが、すぐに1,000人の応募があったことには驚きました。皆さんにお聞きしたところ、毎朝ありがとうと言われるのがうれしいということでした。人に対して何かをしてあげる。結果としてお礼を言われる。皆が誰かにリスペクトされたいという思いを持っているのです。また、これは後から気付いたことですが、大きなオフィスには部署間の壁があり、コミュニケーションがありません。しかし、片隅にネスカフェコーナーを置くことで皆が集まり、コミュニケーションを取れるようになりました。最初からすべての問題が発見できていたわけではないのです。

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尾河眞樹さん:
日本人の働き方で、よく労働生産性の低さが指摘されますが、その原因はマネジメントに問題があると話しておられます。

高岡浩三さん:
私は仕事を顧客の問題を考える時間だと思っています。作業とはPowerPointで毎月決まった報告書を用意することなどです。それはホワイトカラーが誇れるような仕事ではありません。日本の労働生産性の低さは、そのメリハリがついていないところにあります。また、ホワイトカラーは人余りです。世の中は総じて人不足ですし、労働人口は減少しています。それは事実ですが、やはりブルーカラーの問題であって、ホワイトカラーはつくりすぎて余っているのです。その証拠にここ2、3年、大企業は最高益を出しながらもリストラを始めています。今はデジタルの時代ですから、20年前や30年前にできなかった仕事も簡単にできます。当時と同じだけの人員は要りません。私も10年間で社員を500人減らしました。営業職は630人から300人と半分以下にしましたが、それでも売り上げは毎年伸び続けました。

尾河眞樹さん:
ネスレ退職後の新たな挑戦はデジタル技術を駆使して、顧客の問題を解決するコンサルティング業務です。これについてお聞かせください。

高岡浩三さん:
私は本年3月末にネスレの社長を退任しました。3月30日が60歳の誕生日できりが良かったのです。また、70歳までは元気と考えると、まだやりたいことができると思いました。これまで私はネスカフェアンバサダーを打ち出し、eコマースの売上比率を2割まで上げました。これはまさにデジタルトランスフォーメーションです。しかし、日本企業はまだ遅れています。それを手助けするコンサルテーションをやってみたいのです。

イノベーションは産業革命に依存しています。20世紀は電気と石油でしたが、今はGAFAをはじめとする企業がAIによって顧客の問題解決を図っています。既存産業もデジタルによって変わらなければ生き残れません。個人データを集めるためにも、商品やサービスの売買のしくみそのものをeコマースに変える作業が必要です。しかし、今はピュアプレーヤーのAmazonや楽天に牛耳られています。私はそれを解決するために、サイバーエージェントとセプテーニにご協力をいただいています。このギグエコノミーという働き方は21世紀において普通になってきました。音楽業界で演奏しているかたがソロで誰かのライブへ行って稼ぐのと一緒で、独立請負人です。例えば人事経験のある個人事業主であれば、スタートアップ企業や中小企業の人事を何社も請け負う。このほうが会社もコストは安いですし、個人事業主も給料は高くなります。これは今、世界で38兆円のビジネスです。

我々はデジタルやAI、ロボット化への移り変わりの時代に身を置いています。だからこそ失敗を恐れずにチャレンジしてください。ただし、人と同じことをしてはいけません。この変革のときに人と同じことをすると必ず失敗します。とにかく新しいことをやり続けてください。そのためにも顧客の問題に目を向けることをおすすめします。


日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式YouTubeに掲載しています。
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