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「コロナ時代の亞門 流リーダー論(前編)」GINZA CROSSING Talk

7月は演出家の宮本亞門さんをゲストにお迎えしました。ジャンルを超えてさまざまなエンターテインメントを演出し世界の舞台で活躍、演出家としての経験をもとにビジネス書も出版している宮本さん。新型コロナと闘う人々を応援する「上を向いて プロジェクト」を立ち上げました。コロナ禍で停滞するエンターテインメントはどうなるのか、アフター・コロナの日本はどう変わるのかについてお聞きします。

尾河眞樹さん:
新型コロナウイルスでかなり影響を受けたのが、エンターテインメント業界というふうにうかがっています。

宮本亞門さん:
このコロナ禍ですべてがストップしています。私の舞台もストップしていますし、友人・キャスト・スタッフも仕事がありません。それにライブエンターテインメントは三密になりますから、再開の見通しもつかないのです。1席ずつ空けたとしても赤字公演が続くだけですし、稽古も普通は2ヶ月行いますが今は1ヶ月半です。それもマスクを着けて行います。何とかしたいのですが再開は難しいのが現実です。

最初は政府の対応も全くありませんでした。日本のエンターテインメントは、やりたい人たちが好きにやっているので、そこにお金は不要という立場に回されがちです。ところが、海外において劇場は文化・芸術や人間の在り方を語る場所という意識があり、早めに補助金が出されています。そして日本政府も少しずつ方策を出してきました。しっかりと機能するのだろうかという不安を抱きつつ、われわれ演劇人もひとつの集団をつくり、皆できちんと発言していこうとしています。

その中で「上を向いてプロジェクト」を立ち上げました。われわれも不安でしたが、これからは医療関係者が一番大変になります。彼らのためにできることを考えたとき、インターネットを通じて語り掛けることを思いついたのです。まさに私たちが担当しているのは心です。心が動かなければ、何事も動かなくなります。今回は出演者の皆さんに対して、あえて部屋にいる「一人ぼっちの不安を感じているあなた」について歌ってくださいとお願いしました。

私は自分が「がん」だとわかったとき、一瞬落ち込みましたが、まだ生きられると気づいたときの喜びと興奮は忘れられません。今までは周りを気にした発言が多かったのですが、人生は二度なしですから、これからは言うべきことを言うことにしました。そして出演者の皆さんには事務所を通さず電話をしたのです。ドキドキしましたが、いつ死ぬかわからないという思いが後押しをしてくれました。

宮本亜門さん対談風景.JPG

尾河眞樹さん:
現実を前向きに捉え、全力で走り続ける宮本さん。演出家としての出発点とは。

宮本亞門さん: 
私が舞台に興味を持ったきっかけは新橋演舞場です。その真向かいに「絵李花」という喫茶店があります。実は父と母が駆け落ちをしてつくったお店です。そこで私は生まれました。駆け落ちをするぐらい意志の強い両親、劇場の真向かい、日々のお客さん。その様子を見ているうちに、劇場への思いがどんどん募っていきました。楽屋へコーヒーを届けに行くと、表ではエネルギッシュな彼らも、裏ではとても悩んでいます。母は病気でボロボロでしたが、それを見せずにいつも彼らを勇気づけていました。しかし、その母も私が20歳のときにある舞台に立つ初日の前夜、私の下宿先で亡くなりました。そうしてバトンタッチされたこともあり、舞台で自分の役目はないかと考えたのです。

実はその前に1年ほど引きこもっていた時期があります。私は普通の人とは考え方や発想が違いました。人が笑うところと自分が笑うところも違います。それで自分を責めていたのです。日舞や洋舞などの踊りは好きでしたが、それは発散のためでした。ただ、部屋に鍵をかけて、窓のない部屋でレコードのボリュームを最大にして、音にまみれて踊っているうちに何かを感じたのです。そこから世界観が広がり、頭の中にあるイメージを舞台にすることができないかと思い演出家の道につながりました。

母が亡くなってすぐ、ニューヨークへ行きました。母は亡くなる前、「本気でやるなら一流を目指しなさい。ブロードウェイはミュージカルでも舞台でも第一線の人が活躍している」と言っていました。その遺志も含めて自分の目で見なければいけないと思ったのです。毎年ニューヨークへ行き、舞台を見てレッスンするうちに、この街で本気で勝負したいという想いが高まっていきました。やはり本場とぶつかるという醍醐味があります。毎回巨大な壁はありますが、違う国での演出はとても面白いものです。

宮本亜門氏2.JPG

尾河眞樹さん:
コロナ禍で変わる価値観。宮本さんはこの時代をどう捉え、前へ進もうと考えているのでしょうか。

宮本亞門さん:
今までは世界中がお金のような目に見えるものを信じて、そこで競争して盛り上がっていました。このままでいいのかという疑問と、ここにいなければ取り残されるという恐怖感がありました。しかし、コロナによって全く違う価値観が横から入ってきたのです。命や人の在り方を見るようになり、家族といることが幸せだと感じたという声を何度も聞きました。反対に離婚したい人も出てきていますが、それはお互いにきちんと話し合っていないことがわかったたからです。

このように以前から存在していたものが、コロナによって明確になってきました。本当に良い意味でのビジネスや進化は全員のためにあります。皆がWIN-WINで幸せになることですから、今後方向性が変わってくるはずです。われわれは演劇で自分や他者を認められる精神を持つようにしていますが、そのようなビジネスがこれからは広がっていくと思います。

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日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式YouTubeに掲載しています。
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