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「コロナ時代の亞門流リーダー論(後編)」GINZA CROSSING Talk

作品ごとにチームを結成し、多様性あふれる人材をまとめ上げてきた宮本さん。その秘訣は、トップダウンとは正反対の"奉仕型リーダーシップ"にあると宮本さんは語ります。ブロードウェイにデビューした作品でコミュニケーションの大切さを痛感したエピソードなど、いま求められているリーダー像についてお話いただきました。

尾河眞樹さん:
演出家のお仕事のイメージは、芝居をつくり上げる総監督のような役割のイメージですが合っていますでしょうか。

宮本亞門さん:
はい。プロデューサー、台本作家、出演者、裏方、スタッフ、デザイナー、いろいろなかたたちがいて、それらをすべてひとつの大きな方向性に持っていくのが演出家の仕事です。芝居ごとに毎回メンバーを集めて新しいチームでつくるのは、最初のうちは大変でしたが、慣れてしまいました。慣れたというのは、もっと面白く、もっとできるようになったということです。いろいろな人たちをどんどん入れ込んで芝居をつくっていきます。

出演者も舞台役者だけではなく、映画関係のかたや海外のかたなど、いろいろなジャンルのかたをお呼びして混ぜ合わせをします。これは一種の異種格闘技と言えるでしょう。顔合わせで皆さんが、どのような選び方をしたのか、下手をするとこれは破たんするのではないかと怖がることもありますが、予測不能な点も含めてとても面白いのです。

宮本亞門さん

尾河眞樹さん:
ミュージカルの経験がないかたが参加すると、無理なものができ上がってしまうようなことはないのですか。

宮本亞門さん:
確かにそういうこともあります。しかし、ミュージカルというものは、もともとそれほど歴史はなく、偶然から生まれたものです。ブロードウェイに来ていたフランスのバレエ団やボードビリアン、お笑いやお芝居ができる人々、歌を歌えるオペラ関係の演者が、仕事がなくなって合わせてみたら、偶然ミュージカルが誕生したわけです。そのような化学反応が新しい何かを生んでいくことがミュージカルだと僕は思っています。多様性や新たなイノベーティブなものが生まれた瞬間を楽しんでいかないと、これはむしろ段々朽ちていく、面白かったものが腐っていくと僕は考えます。

尾河眞樹さん:
それは本当にビジネスにも通じるところがあります。この番組にご出演いただいている皆さんが異口同音に、違う人たちを集めないと、そこにイノベーションは生まれないと言います。

宮本亞門さん:
初めてオン・ブロードウェイで演出を手掛けた作品で、顔合わせもうまくいって稽古が始まりました。稽古の期間が短かったので、僕はとにかく急いで、すごい勢いで一生懸命、説明していったところ、3日目から皆さんが僕に目を合わせなくなってきたのです。
そのとき舞台監督から、なぜ相手の意見を聞かないのですか。全員プロの役者だから自分の考えるこの作品という思いで来てくれています。それをまず会話する時間がないといけません、と言われたのです。私は「自分は演出家だから指示するものだ」と勝手に思い込んでいました。

そこで、思い切って予定を変えて、毎朝3時間、車座になってミーティングをしました。そこで意見がどんどん出てきました。この先の芝居をやる意味があるのかなど根本的な話が出て、このままいくとまずいのではないかと思いましたが、皆がお互いに納得していくと、話し合いがプラスに変わっていったのです。まず聞く、そして彼らの意見をどんどん引き出していったときに、いつの間にか新しい化学反応が生まれ始めました。

自分が意見を言ったときに、「そうは思わない」という否定的な声が数多く出ます。皆、芝居を良くするために話をしているだけなのに、「自分が悪く言われているのではないか」「なぜあのような否定的なことを言うのか」と感じる自分に対して、これはやはり経験不足なのだと思いました。日本の教育でそういうことを教わったことがないからです。これでは他の国の人と仕事をすることができません。

尾河眞樹さん:
オーディションのとき、亞門さんにとってキラリと光る人とはどのような人ですか。

宮本亞門さん:
僕は、その人が変わる姿をいつも想像しています。まず歌ってもらい、では今度このような設定で歌ったらどうなりますか、というときに変われるかどうかです。想像力を駆り立てて、自分を変えることができるかどうかが選ぶ理由になります。いま、その段階で最高の歌、最高の演技でなくても、変われる幅があれば、こちらがどんどんノックしていけば、いくらでも扉が開いていきます。

いまはまるで時代が早送りになっている気がします。そのときに折れないことです。しっかりたなびきながらも、強くそれに順応しながら、頭が柔らかくなっていくことが結果的には一番、強い人になる道だと思います。何か違うものが来たときに恐れずに、必ず何かあると自分を信じ込ませることができる人。自分を信じるふりでもいいから、大丈夫だと言える人が、次の何か新しい発想、展開をつかんでいく人になるのではないかという気がしています。

人類は長い歴史を経て、常に進化してきました。永遠に人類の進化は止まらず、これからも進化を続ける途中にいるのですから、それを楽しむことです。そこで不安がっていたら人生がもったいないでしょう。私も時々、若い世代と新しいミュージカルをつくる挑戦など、不安なときがありますが、「怖がるな」と自分に言い聞かせています。多少不安でも、これまでと違う新しい価値観のほうが、皆がわくわくして期待してくれるのです。

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日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式YouTubeに掲載しています。
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