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「成功するサブスク、失敗するサブスク」GINZA CROSSING Talk

定額使い放題にすれば「サブスク」がすべて成功するわけではありません。サブスクには「つながり」が重要だと川上さんは言います。商品やサービスを買った後も続くユーザーと企業の関係性がポイントです。強い「つながり」を築くために必要な「ジョブ思考」とは何なのか。ヒントは、のび太の願望をかなえるドラえもん。

尾河眞樹さん:
今回のゲストは兵庫県立大学教授で、経営学者の川上昌直さん。川上さんはサブスクリプション(サブスク)研究の第一人者ですが、今のお仕事に関わるというか、何か影響を受けた映画などはありますか?

川上昌直さん:
今の仕事に影響を与えられたのは「ザ・エージェント」という映画です。主人公のトム・クルーズはスポーツエージェントです。会社にミッションステートメントの提案書を出したところ首になり、そこから彼は個人事業主として、落ち目のフットボール選手と一緒に上っていきます。私は大学4年生のとき、一度は某損害保険会社に就職が決まりましたが、父親が経営に失敗していたのを救いたいと思い、この道へ進むことを決めました。この映画を見たとき、近い未来を見せられていると感じました。大企業の擁護もなく、プロフェッショナルの世界に入るのはつらいことです。自分を奮い立たせるため、月に1回見ています。

川上昌直さん

尾河眞樹さん:
なるほど。
さて、サブスクのお話に戻りますが、サブスクは成功例ばかりではないようですね。

川上昌直さん:
確かにそうです。例えば、月8,000円で食べ放題のラーメン屋があったとして、顧客がその日は800円しか払いたくない心理なら、それがお得だと理解していても購入しません。一方、スーツのAOKIは月8,000円で1着のスーツが借りられ、クリーニングもしてくれるという非常にチャレンジングなプランでしたが、半年でやめてしまいました。AOKIが20代を狙っていたのに対し、反応したのは40代以上でした。必要なときに、都度購入していたリピーターがサブスクに流れることで、収益が減収してしまったのです。ヘビーユーザーがいる場合、サブスクはしないほうがいいと思います。

ここでは買った後も続く関係性が重要です。「この間のお洋服はいかがですか」という一言が顧客の安心と信頼を生みます。顧客のためになることが、回り回ってお金になるのがサブスクで、その魂が抜けたものは成立しません。また、この商品が売れているから、これをほしがっていると考えるのはニーズ思考です。

一方で、顧客の片付けるべき用事を考えるのはジョブ思考です。顧客は現在の状態から、そのビフォー・アフターの差分を買います。しかし、ものだけで状況を変えられる範囲は少ないため、最近は、そこに誰かが寄り添い、その使い方を教えてくれる商品が流行しています。例えば、ライザップであれば、結果にコミットすることを買っているのです。寄り添うことに価値があります。

尾河眞樹さん:
サブスク企業に求められるジョブ思考。川上さんは自身の著書で、ドラえもんとのび太の関係に例えて、わかりやすく説明しています。

川上昌直さん:
基本的にのび太は、これがほしいとは言いませんし、ドラえもんもジェットランドセルのように、高スペックなものは出しません。なぜなら、ドラえもんはのび太の状況をよくわかっているからです。のび太は説明書も読まず、運動神経も良くないため、ドラえもんはタケコプターのようにローエンドなものを出すのですが、それが彼にぴったりとはまります。また、ドラえもんは、いつもジャイアンなどを見返したいという、状況の聞き取りをして道具をセレクトしています。のび太が、どこでもドアを出してほしいと言ったとき、この状況では違うと別のものを出すこともあります。これは顧客と企業の関係に似ています。

現在、多くの企業がマーケットを顧客の年代、性別、職業、地域で分けていますが、同じ40代男性を想定しても、消費パターンは全く違います。これをそれぞれの状況に置き換え、何かしたいができていない人たち、とシチュエーションを限定してセグメントを切ってみてください。その状況に寄り添う形で見ていくと、マーケットがあるかもしれません。
そして常にケアをし続けることが大事です。その意味ではデジタル化が重要になってきます。人が寄り添うこともできますが、それでは労働集約型になり過ぎてしまいます。その辺りをAIによって自動化していきます。

尾河眞樹さん、川上昌直さん

尾河眞樹さん:
このサブスクの時代に何かアドバイスというか、あればぜひお願いします。

川上昌直さん:
皆さまの会社でもぜひ一度、今の商品をサブスク化して、やっていけるかどうかのイメージを持ってみてください。その商品を通じて顧客に寄り添い、顧客とつながれるか、情報をきちんと取れるかを試すいい機会です。もしそうでなければ、サブスク化の前にすることはそれです。ビジネスを良くするためにも、サブスクをリトマス紙としてお使いください。そこを良くすれば、売り切り商品でも十分うまくいくこともあります。ご自身の会社を投影して、赤と出るか、青と出るかのジャッジをしていただきたいと思います。

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