ホーム エンタメ 「アフター・コロナに勝ち残るために」GINZA CROSSING Talk

エンタメ

「アフター・コロナに勝ち残るために」GINZA CROSSING Talk

東洋大学教授で経済学者の竹中平蔵さんの後編。目処が立たない新型コロナの収束。パンデミックのときこそシステムを変えるチャンスだと言います。竹中さんが中心となり5月に法案が成立した「スーパーシティ構想」や必要最低限の現金を給付する「ベーシックインカム」の是非など、アフター・コロナに訪れる世界についてクロッシングトークします。

尾河眞樹さん:
人生で影響を受けられた書籍をご紹介いただけますでしょうか。

竹中平蔵さん:
私の人生で影響を受けた書籍のひとつは、スマイルズの『自助論』です。歴史をつくった徹底してひとつのことを成し遂げる人間には勤勉さと快活さというふたつの共通点があると。楽観は意志であるというアランの『幸福論』の名言がありますが、明るさは非常に重要です。
もうひとつは『研究開発と設備投資の経済学』という、私が30歳のときに初めて書いた本です。私は当時、金融機関の研究所に勤めていましたが、毎日原稿用紙に2枚ずつ書いてできた本がサントリー学芸賞を取りました。そのとき学んだのは、例えば、アメリカに行くとプライズ・ウィナー・エコノミストと紹介されることが非常にエンカレージングだということです。それ以来、私はいろいろなところで賞を出すことを勧めました。

竹中平蔵さん

尾河眞樹さん:
竹中さんは、パンデミックによってこれまでとは違う世界、ニューノーマルがつくられると言います。それはどのような世界なのでしょうか。

竹中平蔵さん:
19世紀の半ばから後半、ロンドンでコレラが流行ったときに出てきた田園都市構想を見た渋沢栄一は、日本で田園都市株式会社をつくり、郊外に町をつくるために鉄道を引きました。このように、新しいコンセプトが生まれます。
例えば、狭いマンションでの在宅勤務は大変なので、月に数回東京に行くだけなら、アクセスが便利で美しい自然のある郊外の広い家に暮らす。子どもの教育も遠隔教育でできれば、田園都市構想をもっと大きくした新しいライフスタイルができる可能性もあります。
ところが東京商工会議所の調査によると、中小企業で在宅勤務ができるのは4分の1です。日本では多くの場合、賃金は労働の成果ではなく時間に対して払われるので、在宅勤務だけでは時間の管理ができません。ですから、労働環境を変えること抜きにニューノーマルは語れないのです。
 
もうひとつ考える必要があるのは、デジタルトランスフォーメーションと5Gへの動き、つまり技術の変化が重なっていることです。4Gまでの時代、インターネットは人間が使うことが前提でしたが、5G以降はモノとモノすべてがつながるので、国土すべてをカバーする必要があります。今、日本の人間カバー率は100パーセントですが、国土カバー率は40パーセントです。田んぼの真ん中でも森林の中でもインターネットで状況をウオッチするには、インターネットインフラの概念をもっと拡張する時代になります。
そして、いくつかの規制緩和と制度改革を一気に行うことでスーパーシティ構想にもつながります。例えば、日本には自動車やセンサー、カメラの技術はある。ところが道路交通法で車は人間が運転すると決まっていて道路で実験ができず、自動運転は進まない。遠隔教育も遠隔診療も今は制約がありますが、法律を全部クリアして実現するのがスーパーシティです。

竹中平蔵さん

尾河眞樹さん:
スーパーシティ構想のきっかけとなった出来事とは?

竹中平蔵さん:
これを日本でやるべきだと思ったのは、2年前に中国のアリババ本社に行った経験からです。どの道にどのぐらい車が並んでいるか、大きなスクリーンにリアルタイムで表示され、そこに人工知能を導入し混雑率が一番下がるよう交通信号の最適化を行っていました。
その結果、平均混雑率は20パーセント、救急車の現場到達平均時間は半分に減ったのです。アリババはそれをパッケージ化して、シティブレインと名付けて世界中に売り始めました。つまり、都市空間全体をビックデータと人工知能で管理する時代なのです。

日本でもスーパーシティ構想について、今年5月にようやく法律が通りました。ただ、個人データが流れるため、その実現はこの民主主義国で住民合意を取れる強い政治的リーダーシップを持った首長が現れるか、それをサポートする優秀な企業が現れるか次第です。
グローバルな変化、技術の変化など、これから大きな変化が起きるでしょう。世界の最先端に日本が行くために挑戦するその究極のセーフティーネットとして、私はベーシックインカムを導入すべきだと思います。毎月一定額を配り、所得のある人はマイナンバーにひもづけて返すことにすれば、これはまさにベーシックインカムです。そうすると生活保護も年金も要らず、財政資金をそれほど使わないで究極のセーフティーネットをつくれます。

今の日本の最大の問題は、みんな思考が停止しているということです。その理由は、暗記型の受験勉強とザッピングです。受験勉強は詰め込み式で思考を停止させるメカニズムが見事に働いていきます。ザッピングも報道される情報を見てわかった気になってしまいます。これからは情報を受け止めるだけでなく、いったん立ち止まってきちんと考えることが必要ではないでしょうか。

★★★★★

日経CNBCにて放送されたものを、ソニー銀行公式YouTubeに掲載しています。
ぜひ、こちらもチェックしてみてくださいね。

関連タグ

尾河眞樹日経CNBC竹中平蔵

エンタメ

最新記事