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「壮絶な修行の先に見えた世界」GINZA CROSSING Talk(慈眼寺住職、塩沼亮潤さん)

塩沼さんは19歳のとき、奈良県吉野の金峯山寺で出家。往復48キロの険しい山道を繰り返し1000日も歩く「大峯千日回峰行」(せんにちかいほうぎょう)や、飲まず食わず、眠らず、横にならずを9日間続ける「四無行」(しむぎょう)など、壮絶な修行を成し遂げてきました。現在、故郷の仙台に開いたお寺で人々に仏の道を説く塩沼さんの、厳しい修行の先に見えた世界とは何だったのか。

尾河眞樹さん:
塩沼さんがそもそもお坊さんになろうと思われたきっかけは、何だったのでしょうか。また、千日回峰行とはどのようなものでしょうか。

塩沼亮潤さん:
小学生のときにテレビ番組で千日回峰行を見て、山を歩く荒行がしたいという気持ちがそのときに芽生えました。その後もその気持ちは変わらず、修行を行った先に世界に貢献できるような人間になりたいという思いでお坊さんになったという流れです。

千日回峰行は、比叡山延暦寺と吉野山金峯山寺の2ヶ所しかありません。吉野の方が歩く距離や山の険しさが2倍ほど厳しく、チャレンジャーとして厳しい方に行かなければという気持ちで、躊躇なく金峯山寺の門をたたきました。1ヶ月目ほどで、爪を触っているだけでぼろぼろと崩れてきます。毎日、おにぎりと夕方の精進料理ですからカロリーがマイナスになります。7月の後半、梅雨明けと同時に1週間くらい血尿が出ます。

しかし、死ぬかもしれないという不安は全くありません。追い込まれるほど、何とかこの苦しみを乗り越えようとするので、ここから逃れようという感覚にはなりません。世界に貢献できるようなお坊さんになりたいというのが夢でしたので、倒れたら世界行きの切符はもらえなくなりますから、モチベーションは高まる一方です。

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尾河眞樹さん:
千日回峰行の前と後では、ご自身の変化、気づきは何かありましたか。

塩沼亮潤さん:
明るくなり、笑顔が増えたような気がします。今与えられている環境が本当に幸せであり、足ることを知って今に感謝をする、生かされているだけでも感謝するという気持ちがさらに深まったように思います。

四無行では、一番大変なのが水です。喉が渇いたという生理現象は、「血液がだんだんと濃くなり危険だから飲んでください」というサインです。医学的には1日約1リットルずつコンスタントに水分が抜けていくといわれています。でも血管を通って全身に酸素を運ばないといけないので、座っているだけで120ぐらいの脈拍数になり、心臓が飛び出るぐらいの気持ち悪さが襲ってきます。3日目あたりから脳を守るために、つま先、くるぶし、膝下、手など体の遠い部分から紫色になって壊死していくような状態になります。

修行は、自分自身の内面的な心を磨いて、修行の後に光り輝く心にしなければならない期間です。どれだけその中身をしっかりと磨いたかは、仏さまと本人しかわかりません。
32歳でもう修行がなくなり、本山にいれば、あとはもう隠居生活です。それよりも、自分のお寺を建立して、社会で悩み迷っている人たちと同じ目線で触れ合って、さらに自分自身を高めていきたいと思いました。

世界にはさまざまな宗教があり、すべてが尊く素晴らしい教えですが、「うちの宗教では」となると分断が出てきます。この素晴らしい地球で、空気と水と光を共有しながら、皆が明るく楽しく生きていく、そのようなアイデアが生まれればと今挑戦しているところです。

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尾河眞樹さん:
護摩行の意味、参拝者がそれに臨む気持ちについて教えてください。

塩沼亮潤さん:
護摩は、悩みを抱えた人がそれを護摩木に書き、火に投じてお坊さんと共に祈る儀式です。現世利益的な考えでは、護摩を焚いてお祈りしたから自分の人生が良くなったといわれていますが、私は皆さんの気持ちの状態が大事だと思っています。とても明るく常に何でもプラスにしていく人は、自然といい方向に運ばれていきます。護摩に参拝をして、火を見て、そして一生懸命焚いている私の姿を見て、自分も頑張ってみようかと思った方向に運勢が動いていくから願いがかなうのでしょう。

コロナ禍で大変な状況ですが、世界中誰もがこの現実から逃げられない、与えられた環境の中で、最大限の努力をしながら淡々と生きていくしかないと思います。人としていかに生きるべきかという本質的なものに気づくきっかけになったかと思います。
ほんの一瞬でも弱腰、逃げ腰になったら駄目です。人は追い込まれると諦めますが、諦めるとは明らかに見極めるということです。一瞬のすきも見せずに、よしここから頑張っていくぞというバイタリティーを持ってほしいと思います。次から次と、これが駄目ならこの手をやってみようとあがくうちにだんだんと上手くいくようになるのです。

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