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「日本の産業が競争力を取り戻すために」GINZA CROSSING Talk 東哲郎さん

東さんは、日本の産業が競争力を取り戻すカギとして「経済複雑性指標」に注目しています。その国の産業基盤にどれだけ多様性があるかを示す指標です。世界の中で日本は15年連続トップの座にありますが、これに見合った成長に結びついていません。問題はどこにあるのか、イノベーションを起こすために必要な「技術の連携」とは?


尾河眞樹さん:
若い頃は経済学者を目指していたという東さんが学生時代に読んだ印象深い一冊とは。

東哲郎さん:
『日本の粘土の足』は、私が大学院のときに読んだ本です。日本が近代化し、中国に侵攻していた世界大戦前に、フリーダ・アトリーというイギリスの女性学者が日本経済について、頭は強くて立派だが、腰から下は粘土のように弱いと書いています。つまり、日本の近代化に必要な石油や機械を輸入するための外貨は、農村で生産された生糸の輸出で得ていましたが、1929年の世界恐慌後に需要は激減し、農村は壊滅的な影響を受けました。日本は、国内の市場に根を下ろした経済に転換する必要があったのに、そうはできなかったということです。この本の内容は、今でも、グローバリゼーションについて中長期的な観点をどう考えるかということのひとつの足掛かりになります。

尾河眞樹さん:
この10年、20年の間に、半導体の産業はどう構造が変わってきたのでしょうか。

東哲郎さん:
私は東京エレクトロンに入社後、長年にわたり、世界との厳しい競争の中で日本の半導体産業の繁栄と衰退を目の当たりにしてきました。日本は、1970年代に産官学で超LSI技術研究組合をつくることで、1987年から1992年まで半導体の世界シェア40~50パーセントと世界で1位になりました。ところが1992年以降、アメリカが復活し、アジア、韓国、台湾が伸長する中で、日本の半導体シェアは約10パーセントに低下しました。

韓国や台湾の場合、マーケットが国内になかったため、初めから世界を見据え、コンスタントに投資し続けました。ところが日本は、ある程度、日本国内にマーケットがあったために世界で戦う強い意志がなく、投資環境が厳しくなると投資もやめてしまいました。さらに、利益重視の姿勢も、自分たちが世界の中でどうなっているのか、本当に役立っているのかという意識も弱かったという話をサムソンの副会長から聞いたことがあります。

2000年代以降、技術革新が進むと、アメリカでは生産設備を持たないファブレス、台湾では委託生産専門のファウンドリーなど、新たなビジネスモデルが台頭します。専業の製造メーカーと設計メーカーが協働すればコストが削減でき、強くなります。総合半導体メーカーも、強いコアを持ってコンスタントに投資を続け、開発から販売まで早い。中国も今、国を挙げて相当のお金を投入しています。中国はどんどん強くなりますので、日本は他国と連合を組み、開発力の強化と製造をうまくつなぎながらやっていかないと、厳しいでしょう。

日本の半導体製造装置の世界シェアは33パーセントとまだ強いです。今後、AIのマーケットは、半導体でいうと年率52パーセントで伸びていくといわれています。なおかつロボット、自動車、あるいは医療、工場の自動化など、日本が得意とする領域でAIは使われるため、そこをベースに半導体をもう一度復活させることが可能です。ある程度長くかかることを覚悟して積み上げていきたいし、できると思います。

尾河眞樹さん:
今後、日本の産業界全体が競争力を取り戻すためのヒントとは。

東哲郎さん:
アメリカのMITやハーバード大学などが研究した、特にハイテクノロジーの領域でどれだけ多様な製品をつくっているかという多様性を表す指標、経済複雑性指標を見ると、日本が15年間連続して世界1位です。多様性と1人当たりGDPは通常、正の相関がありますが、日本の場合は比例して強くなく、弱い。つまり、お互いにつながって生産性を上げる力が弱いのではないでしょうか。

良い例がパテントや知的所有権です。半導体領域でそれを申請した研究者を企業ごとに見て、研究者同士のつながりを見ると、アメリカの場合はつながりが非常に濃いですが、日本の場合は非常にまばらです。イノベーションはいろいろな技術が重なって起きるのに、連携が弱いがゆえに、ビジネスとして大きく結実していないのです。うまく他者をつながりながらやることで、スピードも速くなるし、いろいろな力もつながってくると思います。
 
私がいつも思っているのは、明るくやろうということ。それから、他人の弱みや欠点を否定するのではなく、受け入れることで、その人の良さが見え、将来が明るくなっていきます。

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尾河眞樹さん:
最後に、番組を見ているビジネスパーソンに何かアドバイスを。

東哲郎さん:
明るい未来を築くには、人の無限の可能性と英知を信じることが重要です。もうひとつは大志を持つこと。それを実現するためには、広い心を持って人の気持ちが分かる人間にならなくてはいけない。それから最後に、大きな組織を率いていくためには、自分が犠牲になる覚悟が必要です。人がきちんと働くように仕向けるには、人の話を聞き、なおかつ自分を犠牲にできる。重要なことだと思います。

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