お金の使い方について「生き金」という言い方をすることがあります。お金はそれ相応の価値があるように有効に使うことが大事で、そうすることで「生き金」になります。お金を生かすも無駄にするも、使う人次第なのですね。何に使えばお金は生きるのか、その見極めが大事なのでしょう。
20代のうちは、まだ余暇や趣味に使えるお金が限られているケースが多いのですが、せっかくなのでこの機会に後々の人生にプラスになるようなお金の使いかたを考えてみませんか。
20代のうちに本を買おう
「生き金」を使ういい例のひとつは、読書に使うことではないでしょうか。若いときの読書は後々の人生にまでずっとよい影響を与えます。欧米の経営者のなかには、最も大事な本は詩集と答えるひともいます。詩集はふだん親しみのないジャンルかもしれないので、その場合は事前に調べてもよいですし、大きな書店では詩集コーナーがあるので直感で気に入ったものを選んでもよいかと思います。また、成功した経営者の信念、哲学について書かれた本を読むことは仕事によい影響を与えるでしょう。日本はもちろん、世界中の経営者に目を向け、様々な考え方を吸収すれば、自然とリーダシップについて学ぶことができます。
本を買うときに書店にこだわってみるのもいいですね。書店はネット通販と違って書店員と話が出来るのも魅力です。さまざまなジャンルの本を幅広く探すなら大型書店がよく、本を選ぶ時間を大切にしたいなら最近増えている特定のジャンルの本の品揃えにこだわった趣味的な個人経営の書店がおすすめです。
20代のうちから美術館に行こう
いい芸術に触れるのもやはり後々の人生を豊かにしてくれます。美術館に行ったり、地方で開催される芸術祭巡りにお金を使ったりするのはいかがでしょう。
ひとつの作品を20分は眺めて欲しいとは、美術館のキュレーターがよく言うことです。さすがに20分は長すぎるかもしれませんね。でも、時間の許す限り立ち止まってじっくり眺めていることで、構図の妙や色づかいなど、最初気づかなかったものが表面に現れてくるのは鑑賞の醍醐味です。
20代のうちからおいしいものを食べよう
食事も重要なテーマです。
「(前略)今この瞬間の空腹は、人生に限られた貴重なリソースなんだぞ。人間は一日たった三回、一年でわずか1095回しか腹が減らんのだぞ。その貴重な一回を、単に金がないとか、そんなくだらん理由で台無しにするのか。(後略)」
(shi3zの長文日記:本当に美味いものを食おう シミシュラン2012 より)
これは元ドワンゴ取締役副社長で、現アノドス代表取締役社長の森栄樹氏について、一緒に働いていた方がブログに書いていたことです。この食事をめぐる森氏の言葉は、ドワンゴ時代に教わった重要な人生訓として紹介されています。
おいしいものといっても価値観はさまざまです。20代で1995年と96年のシャンパンの味の違いを語れる必要はありません。カニだとか熟成肉だとか高いものを選んで食べる必要もないと思います。アノドスの森氏は「600円の牛丼も、5,000円のフォアグラも美味いものは等しく美味い」という価値観を教えてくれたと同じブログで紹介されています。要は納得いく食事をするということではないかと思います。
「一日に一回は納得いく食事をする」そう心がけるだけでもいいのではないでしょうか。ご飯に生玉子でもいいのです。おいしいと思える食事をする。そのために「お金を使う」。これが大事だといえます。もちろんワインでもラーメンでも情熱を傾けて専門的知識を身につければ、人生に対する自信になります。仕事や恋愛でもその知識は武器になることもあるかもしれません。
20代のうちからホンモノを買おう
いいものとつきあうことも大事です。包丁、ヘッドフォン、自転車、カメラ、靴、さらには玩具のコレクションまで。生活必需品でなくてもその品質についてよく吟味し、ホンモノだと思ったものを買ってみましょう。ブランドでなく、納得いくものを買い、使うことが重要だと思います。
包丁は銘が入っているものがありますが製造は分業制なので、本来は個人の銘は入りません。入っている銘はブランド価値を上げるためのものです。そこに目を向けるよりも、材質は何を使っているか、どんな工程で作られているかなどを調べながら、納得したものを買ってみるのはいかがでしょうか。砥石も一緒に手に入れて手入れしながら使うと興味の分野が広がるでしょう。欧米では刃物はりっぱな趣味の分野として認められています。
20代では、趣味にお金を割ける余地はまだ少ないかもしれませんが、なにはともあれ専門店に通うことです。買わなくても話を聞いているだけで知識が増えていきます(お店のひとはそういう若いお客さんを大歓迎してくれるはずです)。"いいもの"はさまざまなストーリーがあります。ヘッドフォン、デジタル一眼レフカメラ等、興味があって、欲しいものであればなんでもいいのですが、それらの開発過程を知り、納得した商品を買ってみましょう。
いいものとつきあおうと心がけているだけでも視野は拡がり、のちのちの人生を実りあるものとしてくれるはずです。それこそお金の上手な活かし方ではないでしょうか。