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起業家訪問シリーズ 社長が語ってくれた起業のこと 株式会社ベーシック

ソニー銀行編集部が起業家を訪ね、起業についての想いや出来事を語っていただく「起業家訪問シリーズ」。 今回は株式会社ベーシック 代表取締役社長秋山勝さんを訪ねました。

社長の秋山さんの経歴はとてもユニークです。

秋山さんは高校卒業後、パチプロとして生計を立て、その後商社での営業職や一部上場企業での新規事業立ち上げなどを経て、2004年に株式会社ベーシックを設立しました。

株式会社ベーシックの事業内容もまたユニークです。

比較メディアを中心とした事業展開でBtoBからCtoC支援事業前まで幅広く展開。「Webマーケティングの大衆化」をビジョンに掲げ、WEBマーケティングオウンドメディアの「ferret」やマーケティングオートメーションツールの提供も手がけています。他にもスマートフォンアクセサリーのEC事業や、日本食事業の海外進出支援事業(ASEAN諸国でうどん屋さんを中心に20店舗運営中)など、多事業、多領域においてビジネスを展開中です。

そんな先鋭的なITベンチャー企業の秋山社長ですが、その起業はどのようなものだったのでしょうか。

起業の決断を後押ししたのは、焦燥感

僕の行動は「なぜ」と問うところから始まります。見たもの聞いたものに「なぜ?」を繰り返す。そのため、アイデアや事業化したいネタはいつもたくさんもってました。起業する直前までいた会社でも、新規事業としてやりたいと思っていた案がありました。 それで上司や役員にいろいろと相談したのですが、その時の会社の状況を考えると新規事業として始めるのはどうしても難しい、というのが答えでした。

でも、どうにか実現できる方法はないかとその後も情報収集のために他の起業家の方々と会ったりするうちにやっぱり自分でやってみたいという気持ちが大きくなっていきました。ずいぶん悩みましたが、最後は起業することに決めました。

その時自分を後押ししたのは、自分のアイディアを事業化したいという思いのほかに、当時の自分を取り巻く申し分ない環境と待遇に感じた「焦り」でした。

規模の大きな会社だったので、関連部署や取引企業も多種多様。それらから問題を見つけて、利益率の高い商品をつくり出すチャンスはいくらでもありました。全力を傾けなくても圧倒的な成績を出すことはすでに難しいことではなかったし、実際にかなり高い年収ももらえるようになっていました。このまま行けば順当に昇進することも想像に難くなかったのですが、その先を考えると保身に走っている自分がイメージできてしまいました。このまま、大きな挑戦をせず居心地のいいぬるま湯の中にいたら、いつか知らぬ間に茹でガエルになってしまうのではないかという焦燥感が膨らんでいきました。

この機会と焦燥が、僕の起業のきっかけでした。

「なぜ?」ばかり考えていた子供時代

僕は小さい頃、一般的な人が経験することをほとんどやってきていません。部活で運動に打ち込むとか勉強を頑張るとか。そういう王道の過ごし方を経験していなくて。その代わりに僕は、「なぜ」ばかり考えている子供でした。

僕は小学校四年生の時に勉強することを一切止めたんです。「なぜ勉強をするのか」という問いを担任の先生にしたことがあって。その時に「みんなやっているからやるのよ!」とすごい形相で怒られたんです。その時に自分の中でものすごい違和感を感じて。幼ながらに「それは勉強する理由にはならない」と強く思ったのです。それで完全に勉強することを放棄したことは自分の幼さだったと思いますが、当時自分ができる最大限の抵抗だったのかもしれません。

そのまま中学校三年生の受験直前まではまったく勉強をしないで、テストが始まったら名前だけ書いてテストを裏にして寝てました。先生には「記号くらい書け」と言われたけど、「全然分かってないのに記号を書いて仮に正解だったとしてもそれに意味があるのか」と言い返したのを覚えてます。こんな感じで、やることの目的が理解できないことには極端なまでに絶対やらない姿勢を貫くような、だいぶ頑固な子供でした。

営業経験を通してビジネスで一番大事なことに気づいた

高校卒業後、最初に入った会社は小さな商社でした。自分を肯定できない過去に戻ることだけはしたくなかったので、入った以上はそこの場所で自分の持てる全てをもって働こうということだけは決めていました。

営業として入社し、社長からは「何を売ってもいい」と言われてたんですね。「何を売ってもいいんだから、売り上げが上がらないわけがないぞ」と。世間知らずな僕は「なるほど」と思って、さっそく「何でもできます。何でも売ります」と営業に回ったのですが、これが全然だめで。「なんでも出来ます=なんにも出来ない」というメッセージを出していることに気づいていませんでした。

そこで壁にぶつかって、また「なぜ」と考えました。「そもそもモノを買うというのはどういうことなんだろう」という基本的なところに立ち返ってみたんですね。「なぜ人はモノやサービスを買うのか?」そこで気づいたのが、「多くの商売はお客さんの問題を解決している」ということ。その背景には、お客さんが抱える「痛み」「大変さ」「面倒なこと」が共通項としてあるとわかりました。つまり、僕自身がお客さんのギャップを埋めてあげられる存在であるかどうかが大事だとわかったのです。それまでの買ってほしい思いを突きつける一方的な営業スタイルから一転して、解決できるものは何かを考え提案するスタイルに変えました。それに気づいてからは営業の成績が上がり、自分でも驚くくらいメチャクチャ売れるようになりました。

売った経験が無い商品の問合せがあっても「実はそれ一番得意な商品ですよ!」と言ってまずは話を聞き出すんです。その後に、当時はインターネットに十分な情報がない時代だったので、タウンページで端からとにかく電話をかけて商品を見つけてきては提案するということをやってました。お客様の問題解決になることは全てビジネスになったので、ありとあらゆるモノが想像以上に売れました。運動会の企画、焼却炉、ロボット、表札、ヒノキのお風呂、パソコンなど。当初社長に言われた「うちはなんでも売っていい」の意味も理解できたし、問題を解決するとホントなんでも売れるんだと腹にどっしり落ちた経験でした。

所属している以上は全てを賭けるつもりで挑む

その商社には4年半勤めた後、上場直後のベンチャー企業と大手広告代理店の2社を経験しました。起業するまでの3社で共通してもっていたスタンスは、「身を置く組織に全てを賭けられるか」。その時自分が持ち合わせているもの全てで全掛けするくらいの気持ちで取り組めば、自分が思っている以上に多くのものが手に入ります。それは人であり、情報であり、お金でもあり、取引でもあります。例えば、僕は3社目に1部上場のかなり規模の大きな会社に転職しましたが、これは2社目が一緒で先に転職した人から声を掛けて貰ったことがきっかけです。今の会社の株主は3社目の取引先の方です。今まで僕が勤めた3社全ての元同僚が何名かずつ一緒に働いてくれています。

株主との関係は当時僕の部下と彼が一緒にプロジェクトを進めているなかで、部下が炎上させてしまった案件を鎮火したことがきっかけでした。そのクライアントは有名通販会社の部長の方で、その方の部下の方も困るくらいの偏屈な方でした。その方とガチの本音で何時間も問題について話し合い、結果的には大きなお仕事を任せていただくことになりました。その経緯を見ていた株主が僕に興味を持ってくれて、その後の起業の際の出資につながります。

今振り返るとこれらは偶然ではないと思っています。結局は今を精一杯やることがその先を決めていて、今が未来につながっていると多くの経験から学びました。持っているものを出し惜しみなんてする必要は全くないですよね。

創業半年で3億円の買収提案、「なぜ」の問がその先を切り開いた

そうして起業に至ったのですが、最初に立ち上げたのは、「引越しの一括見積もりサイト」です。当時引越しの見積もりをもらいたい際は、引越し業者に個別に見積もり依頼を出さなければならなかったのですが、それを一度の個人情報の入力で複数社から一度に見積もりをもらえるようにした比較サイトでした。 そして、この見積もりサイトは業界で初めての快挙をなし得ました。それはアート引越しセンターを筆頭にいわゆる大手引越し会社を初めて掲載させたのです。

結果的にこのサイトは多くの利用者が殺到することになりました。一人で運営している小さなスタートアップがそんな結果を出したので、業界でも話題になりそしてある上場企業から3億円の買収提案を受けました。創業から半年目のことです。

当時資本金は450万円ですのでこれは相当破格な提案でした。その内容は僕にとってもとても魅力的なもので、そこから信頼できる人を中心にどう思うか聞いて回りました。すると皆が皆、売ってもう一度起業したら良いと、口を揃えて同じことを言うのです。もちろん僕も当初はそう思ってました。そこでまた「なぜ」と考えたのです。なぜ価値観は十人十色なのに皆同じ結論なのかなと。出た答えは「人の価値観を統一させる程のインパクトのあるものなんだ」ということ。当時30歳そこそこの僕に扱えるのかどうか。結論、その話は断ることにしました。今必要なのはお金以上に経験であると。これもある種の自己否定なんでしょうね。

お断りに行った時に提案した側は相当驚いてて、「念のため言うけど、この金額君のものになるんだよ?」と念押しされたのを覚えています。提案内容を分かってないと思われたんでしょうね。でもお断りしてよかったと今でも思います。

「なぜ」の問いが問題の核心に導いてくれる

会社は今期14期目に入り、社員は100人を超えました。来年秋には株式上場も視野に入れています。成功の秘訣は?とよく聞かれますが、シンプルに「なぜ」と思考し続けることだと思います。答えがあるかどうかでも、自分が答えを出せるかどうかも関係ありません。違和感を感じたことを放置せず、追求し続け、問題に対峙することを諦めないことが重要です。目に見えるものだけしか見ようとしなかったら、絶対に大切な真実には気付けない。"核心"はすぐに姿を表さないけれど、それを捉えることができたら、必ず事業は伸びます。

起業を目指す人へのアドバイス

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他の人が賛成しなくても自分がやり遂げたい大事なものがあるなら起業もいいと思います。逆に多くの人が賛同するからという理由ではやらない方がいい。アメリカの起業家ピーター・ティールの言葉を借りれば、「賛成する人がいない大切な真実」は何か。それを見極めることです。なぜならば、事業のきっかけは多くの場合その人にしか気付けていないからです。ぜひ、自分の気付きを大切にしてください。

最後に、13年間事業を続けてわかったことは、自分が見極めたものを信じられるかられないか。それに全て賭けられる思いがあるか。成功するのに必要なのはそれだけだと思います。


パチプロから24億円の売り上げを誇る会社の創業社長へとかなり型破りな秋山さんのお話でしたがいかがでしたでしょうか。

秋山さんの考えの中に一貫してあったのは「なぜ」と「自己否定」を繰り返すことです。これは起業を目指していなくても人が成長する上でとても大事なことですね。

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