現在の日本は金利が低く、普通預金口座にお金を預けているだけでは資産はなかなか増やせないとお気づきのかたも多いのではないでしょうか。
投資に挑戦してみたいけど、資産運用はリスクがあるので怖い・・・そんな風に感じているかたもいると思います。外貨預金は、為替変動の影響を受けて利益も損失も生まれる可能性のある資産運用ですが、そのしくみを学んでメリットとリスクを正しく理解すれば、有効な資産運用になります。
ここでは、外貨預金で資産運用をするために知っておきたい基礎情報を初心者にもわかりやすくご紹介します。
目次
1.外貨預金とは
ドルやユーロなど、日本円以外の通貨で預金することを外貨預金といいます。日本円での預金は、円で預け入れます。一方、外貨預金は、日本円を外貨に交換して預け入れます。
外貨預金で扱われている代表的な通貨は米ドルやユーロです。他にもオーストラリアドル、ニュージランドドルなどがあり、銀行によっては、英ポンド、カナダドル、スイスフラン、ノルウェークローネなど、さまざまな外貨を取り扱っています。
2.外貨預金のリスクを理解しよう
外貨預金には3つのリスクが考えられます。安全な資産運用をするために、まずは以下のリスクについてしっかり理解しましょう。
2.1 為替変動リスク(為替差損)
外貨と円を交換する際の交換レートである「為替相場」は、市場の動きに応じて常に変動しています。この変動により損失が発生する危険性を「為替変動リスク」と言い、その損失を「為替差損(かわせさそん)」と言います。
外貨預金の場合、外貨を円に換金する際の為替相場が、預金した時の為替相場より円高であると、この「為替差損」が発生します。
例)
為替相場:1ドル = 100円の時に、10万円を1,000ドルにして預け、
為替相場:1ドル = 80円になった場合
預けた1,000ドルは、日本円で8万円となり、2万円の為替差損が発生することになります。(注意:利率や手数料は計算に含まれていません。)
2.2 信用リスク(預金保護(ペイオフ)の対象外)
国内の預金は、預金保護法で守られており、金融機関が預金の払い戻しができなくなった場合にも一定額の保証があります。対して外貨預金は、万が一金融機関が破綻すると、預金の払い戻しは保証されていません。これを信用リスクといいます。
2.3 流動性リスク(外貨定期預金の場合)
流動性リスクとは、お金をいつでも自由に引き出すことのできないリスクです。外貨定期預金は、原則として中途解約できない場合が多く、できる場合でも金利の低下や清算金の支払いなど、ペナルティが課されることもあります。これは円定期預金でも同じです。
3.これが外貨預金のメリット
外貨預金には大きく2つのメリットがあります。
3.1 為替差益
「為替相場」の変動により生まれる利益が「為替差益(かわせさえき)」と呼ばれる外貨預金のメリットです。たとえば1ドル100円の時に実行したドル預金(=ドルを購入)が、1ドル120円に為替相場が変動した時に利益が得られます。特に円高の時に外貨購入することが有効な投資手段として注目されています。
3.2 金利
日本では定期預金の低金利が続いており、円預金の金利にはあまり期待ができません。しかし、外貨預金には、相対的に高い金利が適用されています。外貨を中長期的に運用することで得られる利息が、金利メリットです。
為替の変動により円高になった場合でも、その損失を金利がカバーして、利益が出ることもあるのです。
4.外貨預金の上手なリスクヘッジとは
外貨預金には、これまでに見てきたように「為替変動リスク」「ペイオフ対象外」「流動性リスク」という3つのリスクがあります。リスクを抑えて、リターンを確保するために、以下のような対策を事前に知っておくことが大切です。
4.1 余裕資金で投資する
金利が比較的高い外貨定期預金は魅力的ですが、途中解約にはペナルティのリスクがあり、これが損失につながる可能性もあります。生活に必要な資金まで投資に回して、定期預金を途中解約しなければならないような事態を招かないよう、まずは余裕資金での投資から始めましょう。
4.2 分散投資でリスクも分散
特定の通貨に集中して預金するよりも、複数の種類の通貨に分散して投資したほうが為替相場の変動リスクを抑えることができるといわれています。つまり、ある通貨のデメリットを、別の通貨のメリットによって、補完するという考え方です。リスクを分散するためには、外貨預金の通貨を変えるだけでなく、投資信託など他の資産運用と併用することもリスクヘッジと言えますね。
4.3 複数回に分けて投資する
為替変動リスクのある外資預金では、一度に多額の外貨を購入しないようにしましょう。複数回に分けて購入することで、為替変動リスクを分散させるのです。予算に合わせ、毎月同じ額の外貨を購入する「積立購入」という手段もあります。 "ドルコスト平均法"と呼ばれる「同じ金額の円貨額で外貨を定期的に購入」する方式では、円高時には米ドルが多く買え、円安時には買える米ドルが減ります。
このため、毎月同じ米ドル額を買うよりも、平均購入単価を抑えることができ、為替変動のリスクを抑えることができます。この"ドルコスト平均法"はリスクの分散を目的としており、長期的な投資計画に適した方式です。
4.4 定期的に相場や社会情勢をチェックする
為替相場は世界中の政治、経済、さまざまなイベントに影響されながら、毎日絶えず変動しています。経済指標が為替相場に与える影響を知っておくことが大切です。たとえば、為替相場への影響が大きい「米国雇用統計」は、常に確認しておきたい経済指標のひとつです。世界最大の経済規模を持つアメリカの個人消費動向を担う重要な指標であるため、世界が注目しています。
4.5 信頼できる会社を選ぶ
外貨預金は、前述のように預金保護法の対象外のため、外貨預金口座を設ける際には、経営が安定していて信頼できる金融機関を選択することが重要です。
4.6 外貨をそのまま使う
外貨購入時よりも円高になった時に、円に換金すると外貨預金に為替差損が生じますが、外貨をそのまま使えば、差損は生じないことになります。外貨をそのまま使える銀行を選択することもリスクヘッジのひとつです。
4.6.1 海外旅行で使う
海外旅行の際、国際キャッシュカードやデビッドカードを外貨預金口座と連動させておけば、現地で外貨をそのまま利用できます。
海外旅行で外貨を使えるデビットカード
5.事前に知っておきたい外貨預金のコスト
5.1 手数料
外貨預金の取り引きには預け入れと払い戻しの際に、為替手数料がかかります。この手数料は、銀行や通貨によって異なるため、事前に確認しましょう。その際、手数料ばかりに注目して取引銀行や通貨を選択してしまうと、前述したリスクヘッジ対策に関する「信用性」、「海外旅行での活用」などを見落としてしまうことがあるので、全体的に判断できるよう注意しましょう。
5.2 税金
外貨預金に関する税金は以下の2つがあります。
- 利息に対する税金
通常の円での預金と同様に、「復興特別所得税」を含め、20.315%の源泉分離課税(国税15.315%、地方税5%)がかかります。
- 為替差益(為替差損)に対する税金
雑所得として確定申告による総合課税の対象になります。また、為替差損に関しては、他の黒字の雑所得から控除できます。
外貨預金の基礎知識を一緒に見てきましたが、いかがだったでしょうか?
難しそうに思われたかもしれませんが、初心者でも簡単に為替変動リスクを抑えることができる「積立購入」はおすすめです。ソニー銀行には500円から積立購入できるサービスもあるので、余裕資金で無理なく始めるにはよいのではないでしょうか。
外貨預金を始めてみよう!と思われたかたは、外貨預金の積み立てをわかりやすく解説しているこちらの記事もあわせてご覧ください。