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木村佳子の「いつからでも始められる貯蓄と投資」〜どちらも無理なくスタート! ずっと続けられる仕組みづくりを始めよう〜

今、貯蓄がない、貯蓄ゼロという人がどの世代にも増加しています。

総務省家計調査のデータによると貯蓄率の低下は2000年頃から次第に強まり、2014年には家計貯蓄率はついにマイナスに転じています。

背景には年金生活者が増加し、年金だけでは賄いきれない支出を貯蓄の取り崩しで補っていることの影響があるとみられます。

しかし、一定の収入が得られている勤労世帯においても年収300万円未満で約4割、500万円未満で約3割、1000万~1200万円も所得がある世帯でも約2割が金融資産ゼロなのです。

年齢別では20代で約45%、30代では約31%、40代になると約35%。その他の世代各層でも30%弱の人たちが金融資産ゼロと回答しています(2016年集計)。つまり年齢の老若は関係なく、収入面で恵まれていても貯蓄できない世帯が一定数いるというのが現状なのです。

目次

  1. お金を貯めようと思っても、なかなか貯められない理由
  2. お金が貯められないのは「貯蓄」と「投資」の二層思考が原因
  3. お金を貯める仕組みをつくるには?
  4. 積立預金が金融資産づくりのすべての土台になった
  5. 金融資産を作る土台ができたら分散投資を
  6. さいごに

お金を貯めようと思っても、なかなか貯められない理由

「一定額の金融資産を持ちたい」と考え、「それにはまず貯蓄」と思っても、なぜかお金はなかなか貯められないものです。その理由は様々です。

チリツモ浪費

まず、チリツモ浪費があります。「お金を貯めたい」という人に限って「ちょっと外でお茶」という費用には無頓着であったり、喫煙習慣やイベント支出が多かったりで、貯蓄意欲と行動がアンバランスな傾向がみられます。

塵も積もれば山となる。収入があってもチリツモ支出が多ければ、当然のことながら貯蓄に回せる資金はなくなってしまいます。年収が多いからと慢心している人は、イベント支出が増加したり「自分への投資」が加速しすぎて、お金を全く貯められないケースがあります。

イベント支出

イベント支出とは、まとまった休暇をとって海外旅行に出たり、性能の良い高級車や端末が目に留まると即座に購入したり、音楽やグルメなどへの出費にためらいがなかったりという具合です。

「自分への投資」として大学院に挑戦したり、英会話上達に大金を投じたり、スキルアップにつながる支出と判断すると迷わずにどんとお金を投じます。

しかし、たとえ高額所得であっても、ある日突然解雇・倒産・経営統合などで年収が激変し、それでも生活水準を改められず、自己破産してしまうケースも少なくないのです。

お金が貯められないのは「貯蓄」と「投資」の二層思考が原因

高額所得者ならずとも、あるときは「お金を貯めよう」と思う反面、あるときは、「自分への投資」と支出してしまうのは、20歳代~30歳代なら特に悩ましいところでしょう。

自分への投資は「若いときは一度だけ。だから今、この経験をしておかなくてはならない」とか「英語スキルを磨けば収入アップが見込めるはず。だから、英会話学校に行っておくべき」など、大きな支出をともなう行動の具体化です。

この「自分に投資」という魔法のキーワードで、かなり大きな金額を動かした経験を持つ人も結構多いのではないかと思います。

「お金を貯めなければ」と思う自分と「自分に投資しなければ」と行動する自分と。どちらも真実の自分の思いに違いありません。そして、この二極を行ったり来たりしてしまうのが常といえるのです。

「貯蓄が大事」いや「自分への投資が大事」

貯蓄と自分への投資、どちらを優先すべきでしょうか?一生ついて回る自分への問いかけです。

しかし、この二極に振れているかぎり、一生お金は貯められないというのが私の見立てです。

ではどうすればいいのか?

ふたつともが自分に必要なものです。そして、その必要は一生涯続きます。ならば二極にせず、ふたつとも実現する方法をとるしかありません。お金も貯める。自分にも投資する。

このふたつを実現し続けるには、「お金を貯める仕組みをつくってしまうに限る」。これに尽きます。

お金を貯める仕組みをつくるには?

筆者が試して、非常に効果があった仕組みづくりを紹介します。
実は私も「お金を貯めないと将来が不安」と思い、ひたすらバイトに励み、元金づくりをしました。そのお金で大学に入学すると、できる級友を観ては「自分への投資が必要」と感じ、スマートに遊ぶ周囲の資産家の子女を観ては「あんなふうに人生を楽しむことができたら」とあこがれや背伸びを覚え、次第に「自分への投資」と称して、投資なのか消費なのか浪費なのか、判断がつきかねるお金の使い方をするようになりました。

その結果、お金が貯まらないライフスタイルが定着してしまったのです。何かというとすぐ購入。すぐ支出。その癖からなかなか抜け出せなくなって、小金に不自由はしないけれど、大きな金額は貯められない状態でした。

生活に困っているわけでもないけれど、「これでいいのか?」という漠然とした不安感がぬぐえない・・・。

そんなときに取り組んでみたのが月々一定金額を積み立てていく積立預金でした。

積立預金が金融資産づくりのすべての土台になった

まず毎月、コツコツ3万円を天引きで積み立てる。これを実践することにしました。3万円が多いか少ないかは人それぞれの感じ方ですが、当時の私には、ちょっと痛いけど、「飲食やバーゲンハンターで身の回り品を買ってしまったときに使う金額」という設定額でした。あればあったで使ってしまう額をあえて積み立てに回すことにしたのです。

強制的な天引きがよいところ

強制的に天引きする積立預金のよさは

  1. 月々の収入20万円から3万円を必ず天引きされていくことで、収入17万円で家計を運営することに次第に慣れた。
  2. はじめから3万円はないもの、という状況に慣れると、収入を上げようというモチベーションが強化され、仕事に熱心に取り組めた。
  3. 積み立ては一年でおまとめ定期に強制化したので1年目36万円、2年目72万円、3年目に100万円突破となり、次第に資産形成の土台をつくれているという実感が持てた。

慣れたら積立額の増額をする

月3万円がはじめからなかったことに慣れると、生命保険も1万円は保障に、残り1万円は貯蓄性の高いものにという商品選択をするようになり、別途、積み立てをもう一本増やすなどの取り組みをするようになりました。

こうした仕組みが定着するにつれ、次第に気持ちにもゆとりが持てるようになりました。そして、次第に蓄積していく家計余剰の中から自分への投資支出も思いきって取り組めるようになったのです。

自動車運転免許、資格試験、大学院でMBA取得など、収入アップにつながりそうな対象にお金を投じ、それで増えた収入は投資に回していくという流れをつくりました。

こうした仕組みがなければ、「そのうちに貯蓄」と思いながら、「大金を使うのは不安」と自分への投資にも意欲的になれず、とてもまとまった額の金融資産はつくれなかったように思います。

金融資産を作る土台ができたら分散投資を

ある程度、日本円が貯まってから分散すると効果的です。まずは大きくふたつに分けます。

  1. 円資産と外貨資産
    ●円高のときは外貨を購入
    *円資産に対して外貨を一定比率持つ場合、スタートは流動性、換金性に優れているという点で米ドルがおすすめです。
  2. キャピタルゲイン狙いかインカムゲイン狙い
    ●キャピタルゲイン(値上がり益)狙い、インカムゲイン(配当金や分配金)狙い、どちらも株式市場が低調なときにスタートさせるのがベターです。
    *キャピタルゲイン狙いでは株式、インカムゲイン狙いなら不動産リートなどがいいでしょう。

国内外の株式市場に投資する投資信託を積み立てていくことも一考に値します。

株式投資や外貨貯金、投資信託、不動産リート、住宅などに金融資産を振り分けることができるようになると、所有している金融資産のどちらかが低調なとき、一方が値上がりしているケースが多いことが分かります。

そこで値上がりしているモノを売却し、投じた資金と同額分、再度、保有するのです。
そして値下がりしている分を買い増せば、平均買いコストを下げることができます。

このように分散投資の効果は一方が悪いとき、一方に利益が生じている状況で、利益確定機会を獲得するというところにあります。

株価が安くなったときは株式投資、円高のときには外国通貨、低金利が続いたときは不動産リート、定期預金がまとまると住宅ローンの頭金に、という具合です。

このように金融資産の土台をつくるために積立預金からスタートし、ある程度、まとまった額ができたときに分散投資に資金移動させていけば、利益確定ができるタイミングを待てるようになります。

さいごに

こうして仕組みをつくっておくことで、自然に貯蓄、投資が自然にできるようになりますので、ぜひ、仕組みづくりをスタートさせるところから始めましょう。金融機関にはそうした仕組みづくりに適したメニューが用意されていますから、活用しない手はありません。
ちなみに積み立ては現在も継続しています。
結果として

  • マンション買い替えのときの頭金にできた
  • 積み立て継続で、老後資金設計の土台づくりに取り組めている
  • 株式投資、為替で資産が変動したときも積み立て預金があるため、安心

という成果になっているので、ぜひ、皆さまも金融資産の土台づくりに積み立てのスタートを始めてみてください。

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【木村佳子 きむらよしこ】

個人の資産運用に強い経済アナリスト。生活経済情報研究所㈱ビューズ代表。
一級FP技能士(国家資格)、NPO法人日本FP協会上級資格CFP。 IFTA(国際テクニカルアナリスト連盟)国際検定テクニカルアナリスト(最上級資格MFTA)。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(専門職MBA) 日本取引所グルーブ女性講座グランドマスター等で、女性の資産形成を応援するほか、上場企業IRと投資家のニーズを研究テーマとして全国で講演機会が多い。2016年よりNPO法人日本アイアールプランナーズ協会理事長。
著書に自分年金がらくらく作れる「木村佳子のカレンダー投資法」など多数。




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