はじめまして。ソニー銀行の高柳です。
今後、とかく難しくなりがちな金融・経済の話題について、ざっくりとわかりやすく解説していきたいと思います。できるだけ簡単なポイント解説に努めますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今回は日本経済の命運を握る重要なものながら、近年どんどん複雑かつ難解なものになりつつある日銀の金融政策について、前編・後編に分けてお伝えします。
バブル崩壊後の長引く不況やデフレ(物価の継続的な下落)に対して、日銀はどのような戦いを続けてきたのでしょうか?
導入された順に、時の日銀総裁とともに時系列にすると
・1999年2月 ゼロ金利政策 (速水)
・2001年3月 量的緩和政策 (速水)
・2010年10月 包括的な金融緩和政策 (白川)
・2013年1月 「物価安定の目標」を導入(白川)
・2013年4月 量的・質的金融緩和(黒田)
・2016年1月 マイナス金利付き量的・質的金融緩和(黒田)
・2016年9月 長短金利操作付き量的・質的金融緩和(黒田)
それぞれどんな内容なのか、簡単に見ていきましょう。
まずはゼロ金利政策
●景気が悪い時 = 金利を下げる(金融緩和)
●景気が過熱しすぎた時 = 金利を上げる(金融引き締め)
日銀に限らず、これが各国の中央銀行がとるべき金融政策の基本です。
金利が低ければお金を借りて事業を拡張しようとする会社が増えたり、お金を借りて起業しようという人、ローンで車を買おうという人が増えるので、景気の好転が見込めるためです。
1990年代に入り、バブルの崩壊した日本は深刻な不況に突入します。
日銀は金融政策の基本どおり、90年の夏には6.0%だった政策金利を段階的に引き下げていきますが、どういうわけか金利を下げても下げても思うように景気は回復してくれません。
「こうなったらもう政策金利はゼロでもいい!」ということで、速水優総裁率いる日銀が99年2月に打ち出したのがゼロ金利政策です。
当初はあくまで緊急措置的な政策と思われていたこの政策、多少景気が好転した2000年8月と2006年7月に解除されましたが、それぞれITバブル崩壊とリーマンショックをうけて事実上の再開を余儀なくされました。
政策金利をほぼゼロまで下げたにも関わらず、景気が好転してくれない。 伝統的な金融政策の限界がささやかれはじめます。
世界初!量的緩和政策
2001年3月、速水日銀の次なる一手が「量的緩和政策」です。
これは簡単に言ってしまうと、日銀が供給するお金の量(マネタリーベースとかハイパワードマネーと呼ばれます)を増やし、世の中にたくさんお金を行き渡らせようというものです。
もう少しだけ詳しく説明すると・・・
皆さんが銀行に預金口座を持っているように、民間銀行も「銀行の銀行」たる日銀に「日銀当座預金」という預金口座を持っています。
日銀が民間銀行の持っている資産(国債など)を買い取ることで、日銀当座預金にお金をじゃぶじゃぶに供給。その増えたお金を民間銀行が企業や個人への融資に回すと景気が良くなり物価も上昇、という作戦です。
世界でも例を見ない初の試みとあって、
「そもそも効果はあるのか?」
「デフレから一転、制御不能なインフレになるのでは?」
など不安の声も聞かれましたが、福井総裁時代の2006年3月に解除されるまで一定の成果をあげたとの評価が多いようです。
むしろこの時の早すぎた量的緩和解除こそが日本のデフレ脱却を遅らせた、との声も根強くあります。
日本で世界に先駆けて実施した量的緩和政策ですが、2008年のリーマンショック以降は米国や欧州でも導入されるなど、いまや世界でも一般的な「非伝統的金融政策」として定着した感があります。
資産買い取り!包括的な金融緩和政策
2010年10月、白川方明総裁の率いる日銀は「包括的な金融緩和政策」を開始します。
日銀が証券取引所に上場されているETFやJ-REITなどの金融資産を買い入れできるようになったのが大きな特徴です。
その後、日銀が購入するETFなどの額は増加の一途をたどっていますが、いわば日銀が日本株を買い支えるような形となること、日銀が間接的に日本企業の大株主となることなどには今なお賛否両論があるようです。
なお、白川総裁は海外ですでに導入されているようなインフレターゲット(物価安定の目標)を採用することについて否定的な立場ではありましたが、2012年12月に発足した第2次安倍政権の意向をうけて、任期終了間際にこれを受け入れます(インフレ率 年2%)。
この後、2013年から本格的に動き出したアベノミクス、「黒田バズーカ」を流行語にした量的・質的緩和(異次元緩和)などにより時代は一気に動き出しますが、続きは次回後編で。
お付き合いいただき誠にありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
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