【はじめに】
長引く不安定な相場展開に不安をいだいているかたも多いのではないでしょうか。これからどういった点に着目して市場に向き合っていくべきか、そして資産形成をいつ始めてどのように続けていけばよいか、TVなどでおなじみのソニーフィナンシャルホールディングス チーフアナリスト 尾河眞樹にインタビューをいたしました。こちらの記事で少しでも投資を続けよう・始めようと感じていただければ幸いです。
Q1.新型コロナウイルスの影響により、大きく相場が動いていますが、今後、為替市場・株式市場でどのような動きが想定されますか。
A1.しばらくはボラティリティの高い状態が続くとみています。世界の感染者数がピークアウトすれば、市場環境は改善するでしょうが、実体経済の悪化が経済指標に現れてくるのはこれからです。したがって、少なくとも夏場ころまでは経済指標の結果をみて、また投資家が不安になり株安に振れるリスクは残ると思います。その場合、一時的には為替は円高に振れやすくなるとみています。
Q2.過去のさまざまなショックと比べてどのような違いがありますか。
A2.コロナショックは、元凶が地政学リスクでも、リーマンショックのような住宅バブル崩壊でもなく、「ウイルス」であるという点が大きく異なります。実態経済が悪化しているのも、ウイルスを拡散させないよう、「外出や渡航の禁止や自粛」など、人為的に経済活動をストップさせていることが背景にあります。したがって、ウイルスの感染拡大が収まれば、経済活動は再開し、景気も緩やかに持ち直すとみています。
Q3.「できるだけ安値で」という投資家心理も働きますが、底値を予測することは可能ですか。
A3.底値をピタリと予測することは難しいです。感染者数のデータ推移を見ながら、ピークアウトの時期を想像することはできたとしても、そのときに例えばドル円がどの水準で底を打つか予測するのは極めて困難です。参考までに、「たい焼きの頭としっぽはくれてやれ」という相場の格言がありますが、これは相場の高値と底値を的確に当てるのは難しいので、例えば「買いたい」と思ったときに、底値を拾おうなど思わないことが大事だということです。あんこが入っていないしっぽの部分はギブアップして、買おうと思った時点から少しずつ買い下がっていくことにより、均せば結果としてあんこが入っている一番美味しいところを食べることができるという意味です。
Q4.このような投資市場の不透明な状況はいつごろまで続くと考えますか。(ターニングポイントは何か)
A4.個人的には以下の条件がそろうまでとみています。①グローバルな感染拡大のピークアウト、②各国の政策対応(協調行動)、③新薬の開発、④原油価格の回復、の4点です。
②~④についてはかなり進展しており環境は整いつつあるとみていますが、肝心の①はまだ感染の拡大に歯止めがかかっていない状況です。ただ、イタリアでは現存患者数(累計感染者から回復者と死亡者を除く)は鈍化の傾向にあり、イタリア当局も「感染がピークに達した」との認識を示していることは心強いです。中国の例にもみられるとおり、イタリアでも人の移動を徹底して抑えたことで、感染者数の急増が抑えられつつあるのかもしれません。
Q5.状況が見通せないなか、私たちはどのようなスタンスで臨むべきですか。
A5.ここは冷静に、長期的なスタンスで投資を続けていただきたいと思っています。ただ、相場が下がったからといって、一気にまとめて追加投資するのではなく、さらに下落した場合にも買える余裕をもって、ドルコスト平均法のイメージで、金額を分散して投資するのが良い時期ではないでしょうか。アセットクラスや通貨の分散も重要です。また、これから始めようと考えているかたにとっては、2月までのように、米国株が史上最高値を更新し続けている局面で投資を始めるのは難しいものの、歴史的な急落をみた後の今は、むしろスタートしやすいのではないでしょうか。外貨でも投資信託でも、上がっても下がっても毎月コツコツ買い続けるような、積立から始めるのが良いと思います。
最後に.中長期で資産形成に取り組むすべてのお客さまにメッセージをお願いします。
金融市場はこれまでの歴史において、何度も大きなショックにさらされてきました。相場の歴史は「バブルと崩壊の歴史」といってもいいくらいです。しかし、金融ショックにより一時的に景気後退局面に陥っても、その都度さまざまな対策が講じられ、市場環境も経済も結果的には持ち直しています。今回も同様に、コロナショックが終息すれば、各国の金融緩和や財政政策が奏功し、相場は大きく持ち直す局面がくると思います。10年、20年というスパンでみれば、世界経済は成長し続けているわけで、大事なことは、その間しばしば訪れる相場の急落に慌てないことです。慌てるとどうしても、ついつい相場の動きについて行きがちになり、結果、安値で売って高値で買うというパターンを繰り返すことにより、損失を膨らませてしまう可能性が高いからです。「長期、積立、分散」という資産運用の基本を心に留めて、相場の変動にかかわらず長期的にコツコツ投資を続けることこそが、長い目で見たときに資産形成の極意といえると思います。