1. マーケットレポートとAI予測
為替市場に関するマーケットレポートは、ソニー銀行のウェブサイト以外でもインターネットでさまざまなものが無料で手に入る時代ですが、「内容が難解で読んでもよくわからない」「読む時間がない」と感じているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で最近「AI予測」というものも見かけるようになりました。これまでの為替の動き方のみに注目して数学的にAIが予測するものや、似たようなチャートをAIが過去データから探して予測するものなどが出ているようです。使う側とすれば、いろいろレポートを読んだり勉強したりすることなく予測結果が数値として得られるのでわかりやすいのですが、アナリストが行うような分析はなされないため、納得感に乏しいと感じるかたもいるでしょう。また数分後~数日後までの短期的な予測が多く、もっと長いタイムスパンを見据えて預け入れる外貨預金や、満期が2週間から1ヶ月の為替リンク預金などを投資対象と検討しているかたにとっては、ニーズにマッチしたものとは言い難いかもしれません。
2. AIによるファンダメンタルズ分析
そこで当ブログでは、以上のような問題点に対応したAIによる1ヶ月予測を出していくことにしました。 AIに投入する材料には、為替レートだけでなく各種経済指標やプロが見ている周辺市況などを選び出しています。
予測結果は、「月末の為替レートは、①前月末と比べて円高か円安か、②その度合いは大きいか小さいか」という形式で、月次公表していきます。
ちなみにAIとしては、ニューラルネットなどの機械学習アルゴリズムで複数のモデルを作成し、それらを融合させて計算させています(アンサンブル学習と言います)。AI予測に関しては、ソニーグループ(株)の技術者 の協力を仰いでいます。
当然予測が外れるときもあります。特にこれまでの流れを大きく変えるようなイベント(例えばリーマンショックなど)が発生した場合には、予測の的中率は数段落ちることになります。当ブログでの予測は、あくまでご投資判断の一助としてご利用ください。
3. 米ドル円の予測結果
AIを使って予測した米ドル円の月末終値を実際の値とともに表示してみました。例えば9月末予測は「1円以上円安」となりましたが、実際の9月末の為替レートは前月末比+1.27の円安となり、予測と合致しました。
このように過去の結果も記載していきますので、予測精度の参考にしてください。もちろんこの過去の結果は、予測対象月の前月末に判明しているデータだけを使用して予測しています。これだけ見ると、円安円高の判定精度は8割程度ということになるかと思います。
年月 | USDJPY (終値) |
予測結果 | 円高安 予測判定 |
2021/1末 | 104.79 | 1円以上円安 | 当たり |
2021/2末 | 106.55 | 1円以上円高 | 外れ |
2021/3末 | 110.72 | 1円以上円安 | 当たり |
2021/4末 | 109.31 | 1円以上円高 | 当たり |
2021/5末 | 109.58 | 円安 | 当たり |
2021/6末 | 111.11 | 1円以上円安 | 当たり |
2021/7末 | 109.72 | 円高 | 当たり |
2021/8末 | 110.02 | 円安 | 当たり |
2021/9末 | 111.29 | 1円以上円安 | 当たり |
2021/10末 | 114.07 | 1円以上円安 | 当たり |
2021/11末 | 113.17 | 1円以上円安 | 外れ |
2021/12末 | ? | 1円以上円高 | ? |
今回は12月末の予測として、11月末の終値から「1円以上円高」となりました。実際に予測が当たったかは12月末にならないとわかりませんので、翌月に公表する予定です。ちなみに11月末の予測が外れたのは、新しいコロナウイルス株(オミクロン株)発生(2021年11月26日(金))により、市場が大きく変化したことによると思われます。発生までは115円台を維持していました。このように過去例を見ない大きな事象が発生すると予測精度が落ちてしまうことになりますので、ご注意ください。
4. モデルの予測精度レベル
ご参考までに、AIが生成した予測モデルの精度も公表していきます。ここでいう予測精度とは、生成された予測モデルの過去データへのフィッティング度合いです。予測モデルは投入した過去データにフィッティングするように、しかしながら未来の予測に対しても精度が上がるように生成されます。その度合いなどが高ければ高いほど、同じ事象が発生したときの将来の値予測の精度も高まります。
ここでは、その予測精度レベルを誤差率中央値という値で評価します。この値が小さいほど精度は良くなります。一般的に0~3%で「非常に高い」、3~15%で「高い」とされます。
11月末までの過去データに対するモデルの精度は、非常に高い精度になっていました。12月末はオミクロン株発生の影響からか11月末までより精度が落ちていますが、市況に大きな変化がなければ期待できる水準かと思います。
予測対象月 | 予測精度 | 評価 |
2021/12末 | 5.17% | 高い |
5. 最後に
12月末の米ドル円の予想値は11月末の為替レートより円高水準となっています。
AIの予測通りに円高予想とみた場合、1ヶ月後の為替水準によっては高金利を享受できる為替リンク預金外貨スタート型にお申し込みするのも面白いと思います。
次回はAIに投入している経済指標などやそれら指標のモデルに対する寄与度をお伝えする予定です。
本ブログは、定期的にリリースしているソニー銀行のアナリストレポートとともに、ご投資判断の一助としていただくための参考資料としてご提供しています。最終的には自己責任において取り引きを行っていただくようにお願いします。