
2025年4月4日(金)、日本時間21:30に米国で3月雇用統計が発表されます。 今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。
今月の注目ポイント
「トランプ関税の行方を踏まえての米雇用統計」
ソニーフィナンシャルグループ シニアアナリスト 石川 久美子
ドル円相場は1月半ばから3月上旬にかけて下落基調を辿っています。これは、日本の追加利上げ観測を背景とする円買いと、米国発の貿易戦争への警戒感や、米国の経済指標結果に弱いものが目立つようになってきたことを背景とする米長期金利低下を受けたドル売りなどが背景にあります。
3月11日146円50銭台で一旦切り返しているものの、トランプ米大統領の一挙手一投足に金融市場全体が注目する、緊張感に満ち溢れた相場となっており、ドル円相場の反発もそれほど強い状態ではありません。目下のところ注目されるのが、4月2日に米国が発動すると見られている相互関税や、自動車など分野別課税などに関する報道の行方です。
一部ではこれらの発動範囲や強度が当初掲げられていたものよりも緩和されるのでは、との思惑も広がりつつありますが、実際にそうなるのかはギリギリまでわかりません。また、4月2日という期限自体もトランプ大統領次第で後ろ倒しすることも可能で、本当にこの日までに全容が明らかになるかどうかは不透明感が強い状態です。
そのような中で4月4日に発表されるこの3月雇用統計は、市場変動の「増幅装置」にもなり得るため、注意が必要です。
仮に米雇用統計発表までに米国の関税政策の全容が明らかになっており、一通り反応が落ち着いた後であれば、米雇用統計の結果にドル円が素直に反応する、という状態もあり得るでしょう。しかし、関税政策の発表後の混乱の最中ならば、米雇用統計はさらなるドル円の乱高下をもたらす材料となる一方、米雇用統計より後に詳細発表が延期された場合、市場は米雇用統計に対する関心を失うこともあり得ます。
まずしっかりと、関税関連の報道とそれを受けたドル円相場の反応を観察し、米雇用統計の発表に備えたいところです。
プロフィール
石川 久美子(いしかわ くみこ)
プロフィール
石川 久美子(いしかわ くみこ)
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から同社研究員として、外国為替相場について調査・分析を行う。2016年11月より現職。外国為替市場に関するレポート執筆の他、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」など多数のテレビやラジオ番組に出演し、金融市場の解説を行う。また、Xでの情報発信なども行っている。資源国・新興国通貨に強い。
米国雇用統計の主な指標の実績と予想
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2025年4月 | +13.0万人 | ||
2025年3月 | +16.0万人 | +15.1万人 | |
2025年2月 | +17.2万人 | +14.3万人 | +12.5万人 |
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2025年4月 | 4.2% | ||
2025年3月 | 4.0% | 4.1% | |
2025年2月 | 4.1% | 4.0% | 4.0% |
出所:時事通信社(2025年3月28日(金)時点)
米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢を見る十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。
雇用統計タイムセール
ソニー銀行では、雇用統計発表日に合わせて外貨預金の購入コスト(対円)を一律0円、FXの米ドル/円スプレッドを原則1銭固定とする特別イベントを毎月開催しています。
ぜひこの機会をご活用ください。
ここ数年で急激に進んだ「円安」は、タイミング的に「物価上昇」と重なったことで、さまざまな憶測や誤解を生み出しました。そして、いまもさまざまな要因によって日々変動しています。本書は、為替のしくみを理解し、今後、円安・円高のどちらに振れても対応できる知識を身に着けるためのものです。
なぜ円安が進み、なぜ物価は上がったのか?そもそも「円安」とはどういうことなのか?はたして円安は善なのか?悪なのか?最近は円高に振れているが、円安は終ったのか?など、私たちが「円安」「物価高」をどう乗りこなせばいいのか解説し、巷でいろいろと言われている疑問について、解き明かします。
(2025/4/28発売)
過去の記事はこちら
米雇用統計・今月の注目ポイント(2025年3月7日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2025年2月7日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2025年1月10日発表分)