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運用のプロに聞いてみた!秘策は「コバンザメ」戦略? 攻勢に転じた「ひふみプラス」の新展開を探る

レオス・キャピタルワークス
代表取締役社長
藤野 英人さん

レオス・キャピタルワークス
国内株式戦略部長 シニア・アナリスト
ファンドマネージャー
内藤 誠さん

主に国内株に投資するファンドとしては、今や日本最大の投資信託となった「ひふみプラス」。メディアで取り上げられる機会も多く、直近でも、フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスへの投資比率を急速に引き上げたことが注目されました。「ひふみプラス」は、日本で最も知名度の高い投資信託の1つと言ってもいいのかもしれません。

そんな「ひふみプラス」、さらには世界の株式に投資する「ひふみワールド+」などを設定・運用しているのがレオス・キャピタルワークス。同社ではこの2月に最高投資責任者(CIO)が交代し、運用体制も強化しています。その背景や狙い、「ひふみプラス」の足元の運用状況と今後の方針などを、創業者の1人で代表取締役社長を務める藤野英人さんと、ファンドマネージャーの内藤誠さんにうかがいました。
(参考ファンド)
ひふみプラス
ひふみワールド+

運用のさらなる強化を目指し、二人三脚の体制に変更

今年2月、レオス・キャピタルワークスの最高投資責任者(CIO)が藤野さんから湯浅光裕さんに交代するという発表があり、大きな話題となりました。まずは、その背景からうかがえますか。

藤野 思っていた以上に反響があり、実は驚いているんですが、私としては今回の交代はごく自然な流れだったと思っています。当社におけるCIOとは、ファンドマネージャーの人事を決める権限を持つ者。つまり、私は社長である一方で、1人のファンドマネージャーでもありますから、やはりCIOは別の人間に委ねたほうが健全ではないかと考えたわけです。湯浅に対しも、「何かあれば、いつでも首を切ってくれ」と話しています(笑)。

なるほど(笑)。CIOを退かれたことで、経営に専念するのではないかという声も一部にありましたが、むしろファンドマネージャーとしての責任をより全うする立場になったことになりますね。

藤野 その通りです。運用の第一線から退いたというのは全く逆で、「ひふみプラス」とその他のひふみ投信シリーズについては、もう1人のファンドマネージャーである内藤との二人三脚の体制に変更し、運用をさらに強化していきます。

内藤はいま30代前半で、体力も気力も最も充実している時であり、私とは20歳以上も離れています。当然のことながら喧嘩にはなりませんし、お互いズケズケ言い合える関係ですから、まさにディスカッションパートナーにふさわしいと考えました。これまでの「ひふみらしさ」は守りつつ、今後は変えるべきところを変えていく。ですから、今回のCIOの交代と運用体制の変更は、前向きな変化だと捉えていただきたいですね。

内藤さんとしては、今回の変更を受けてどんなことを考えていますか。

内藤 私は当社に入社して3年目になりますが、やはり変えるべきところは藤野と一緒に改革していきたいと考えています。例えば、私が入社した直後はコロナ禍で、経営者のかたとの面談などもほとんどリモートで行っていました。それが最近になってようやく対面でお話をうかがえるようになり、その重要性を改めて実感しているところです。ですから、各アナリストがなるべく対面で経営者と会い、その場で何を感じたのか、即座にフィードバックできるような体制を作っていきたいですね。

もちろん私自身も、担当している企業は引き続き訪問していきますから、同じ目線で議論を重ねながら、そこで得られた情報をポートフォリオ(投資対象資産の組み合わせ)に反映させていくわけです。それを藤野にぶつけてさらに揉んでいき、最終的なポートフォリオを決定していくことになります。

藤野 建築における「共同設計」のようなものだと考えていただくといいかもしれません。ただし、内藤は棟梁として現場で作業をしながら設計もする。私が大きなコンセプトを考え、彼が棟梁として細かい部分の調節をしたりしながら、より緻密な設計図に仕上げていくというイメージでしょうか。

「物言う株主」が存在感を増す中、「ひふみプラス」の新戦略とは?

では、その内藤さんから、「ひふみプラス」の足元の状況、今後の見通しなどをうかがえますか。

内藤 直近のパフォーマンスは必ずしも良いとは言えませんが、その背景には、ここ数年の日本株式市場で大型株優位の状況が続いてきたことがあります。とはいえ、中小型株ファンドのカテゴリーで見れば、「ひふみプラス」のパフォーマンスは相対的に悪いものではなく、それは大型株の比率を徐々に上げてきたからです。ただし、その比率を思い切って上げられなかったのも事実で、それは私たちが大型株を満遍なく見られる体制ではなかったことが一因となっています。ですから、先ほどの変革には、そこを変えていく狙いもあるわけです。

大型株優位の傾向は、今後も基本的には変わらないと思いますが、一方で、足元では中小型株の再評価が進行しています。事実、2025年に入ってからは中小型株のパフォーマンスが盛り返してきていて、いわば溜まりに溜まったマグマが徐々にあふれてきているような状況です。中長期で捉えれば、中小型株のほうがより高いリターンを上げられるでしょう。

そうした中、今後の「ひふみプラス」のポートフォリオはバーベル型にしていく必要があると考えています。つまり、両端が膨らんだバーベルのように、大型株と中小型株をそれぞれ保有するのです。もっとも、大型株であれ中小型株であれ、株主還元を重視した資本政策をしっかり考えていない企業は、市場から無視され続けてしまうはずですから、その点はしっかり見極めていく必要があります。

藤野 2025年の大きなテーマが、トランプ政権の動向であるのは言うまでありません。中でも最も影響を受けるのは金融市場だと考えていて、実際に米国では金融株が上昇し始めています。その理由の1つが、これまでM&Aを規制してきた米連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン氏の退任で、トランプ政権では一気に緩和へと向かうと見ています。各業界で再編が進むと予想され、今は多くの金融機関がM&Aの活発化に向けた「弾込め」をしている段階だと言っていいでしょう。そのため「ひふみプラス」でも「ひふみワールド+」でも、金融株の比率を上げているのです。

そうした中、いま世界の中で最もアクティビスト(物言う株主)が活躍できる場として、米国と並んで注目されているのが日本です。と言うのも、日本ではいまだにコングロマリット(巨大複合企業グループ)が多く、その中には実態がよく分からないような企業があったりしますし、経営体制にもまだまだ改善の余地があるのです。ホンダと日産の経営統合は破談になってしまいましたが、他にもさまざまな業界で再編に向けた交渉が水面下で行われていて、アクティビストの存在感も増しているのです。

「ひふみプラス」の組入最上位銘柄が、フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスになっているのは(2025年1月末時点)、まさに象徴的ですね。

藤野 私たち自身はアクティビストではありませんが、それでも、アクティビストの後を追いかける"コバンザメ"戦略ができると考えています。どういうことかと言えば、一定のボリュームの投資をしたうえで、会社側の主張とアクティビスト側の主張をそれぞれ聞き、株主総会では正しいと思えるほうに投票する。結果として、企業価値を引き上げられるわけです。これができるのは、「ひふみプラス」をはじめとするひふみ投信シリーズが、これだけの規模にまで成長できたからでもあります。

「ひふみって面白い」。そう思ってもらえる存在であり続けたい

なるほど、今後は残高の大きさも強みになるわけですね。一方で、「ひふみプラス」と言えばその圧倒的なパフォーマンスで人気を集めてきたものの、ここ数年は残高が大きくなったため、パフォーマンスが悪化したと言われたりもしていたようですが......。

藤野 確かに、そんな声をよく耳にしますが、そこには大きな誤解があります。私たちは一貫していて、残高の増加に伴って大型株も組み入れているものの、依然として中小型株の比率は高く保っています。先ほど内藤も話していた通り、むしろ大型株を組み入れていたからこそ、他の中小型株ファンドと比べてパフォーマンスは良く、つまり中小型株の運用が悪かったわけではありません。最大の要因は中小型株全体の低迷で、残高の大きさとパフォーマンスの悪化は関係ありません。

2025年に入ってからは、明らかに中小型株の動きが変わってきていますし、いよいよ私たちのターンが来たという手ごたえもあります。しかも、アクティビストの存在感が高まる中、私たちは残高というパワーを活かすこともできる。改めて、今年は非常に期待が持てる年になると強調しておきたいと思います。

内藤 だからこそ、残高はもっと大きくしていく必要があるのでしょう。大型株の世界で言えば、まだまだ私たちの存在感は小さく、メインプレーヤーではありませんからね。残高が大きくなれば、企業とのコミュニケーションもさらに円滑になるはずです。

とはいえ、いわば少数与党に対してキャスティングボードを握る野党のような存在に、すでになっているのかもしれません。

藤野 そうありたいですね。私たちが行動することで企業価値が上がり、株価も上昇すれば、お互いがハッピーになれるわけですから。

最近の投信市場ではインデックスファンドが隆盛ですが、それはまさにアクティブファンドだからできることでもありますね。

藤野 単に投資をするだけではなく、アクションを起こすことに付加価値が生まれる時代になっていくのではないでしょうか。今は大きな転換点であり、これからの5年間は従来とは全く違うものになる。そうした時代の変化を受け、私たちもいよいよ攻勢に出る時だと捉えているのです。

あとは投資の楽しさ、意義などももっとお伝えしていきたいですし、何よりも「やっぱりひふみって面白い」と、ワクワクしていただきたい。もちろん最終的には、パフォーマンスでも結果を出していくことが重要なのは言うまでもありません。

内藤 その点で言うと、当社には面白いアイデアを持っているアナリストやファンドマネージャーがたくさんいますから、私を含めてもっとお客さまの前に出て、どんな理由でこの銘柄を組み入れ、どんな考え方で運用をしているのか、これまで以上にしっかりお伝えしていく必要もあるのでしょう。それがお客さまに伝わることで、より長く持っていただけるインセンティブとなり、それがファンドの持続性、継続性にもつながる。新体制では、そうした好循環が生まれやすいようにしていきたいとも考えています。

藤野 内藤が前面に出る分、私はどちらかと言えば盾になりたいと思っています。もし何かあれば、身体が大きい分、石をぶつけやすいでしょうからね(笑)。

いずれにしても、2025年は貴社にとっても「ひふみプラス」にとっても大きな転機であり、いろいろと楽しみな年になりそうですね。次回は貴社でさまざまな形で注力されている金融経済教育についてお聞きします。本日はありがとうございました。

インタビュー・文:金融エディター・菊地 敏明

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