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ZEHとは? ZEH住宅購入の5つのメリットと将来について(FP相談室)

マイホーム購入を考え始めて、情報収集をしていくと目にする「ZEH」。これは、「ゼッチ」と読みます。省エネと関係あるらしい、補助金があるらしい。
今回はZEHって何?お得なの?という視点から解説していきます。

ZEHとは

ZEHは、経済産業省 資源エネルギー庁が平成31年2月に再定義した「ZEHの定義(改訂版)」には次のように定義づけされています。

「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現したうえで、再生可能エネルギーなどを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」(経済産業省 資源エネルギー庁:「ZEHの定義(改訂版)」より)

要は、住み心地を維持しつつ大幅に省エネを実現し、さらに再生エネルギーを活用して、家で使用するエネルギー収支のプラスマイナスゼロを目指せる仕様の住宅ということです。
ただ、寒冷地や多雪地、日当たりが悪い(低日射)など立地によっても実現できるレベルに差が出てきます。そのため、立地と実現できる基準によって次のように分けられています。

戸建ての場合
1. ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
2. Nearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
3. ZEH Oriented(ゼロ・エネルギー・ハウス指向型住宅)

基本は1の基準を満たすことが求められます。日照や面積などの不利な立地により、基準を満たせない場合のために条件が緩和された2と3があります。(認定可能な地域が限られます)

3つのいずれかに認定されれば広義のZEH住宅と呼ばれます。さらに1と2にはより高い省エネを実現できる仕様の「ZEH+」「Nearly ZEH+」「次世代ZEH+」があります。

マンションの場合
階層(何階建てか)と基準達成割合により次のように分けられています。

1. ZEH -M(ゼッチマンション、1~3階層)
2. Nearly ZEH-M(1~3階層)
3. ZEH-M Ready(4~5階層)
4. ZEH-M Oriented (6階建て以上)

二酸化炭素排出量削減に向けて、世界ではガソリン車から電気自動車への転換(EVシフト)が加速しているように住宅も同様の動きが加速しているといえます。

具体的には次の3つを満たし、別途定めた省エネ基準を満たす必要があります。

・高断熱な外壁や窓を採用することで構造躯体の高性能化を実現
・高効率設備の導入(エアコン・換気設備・照明器具・給湯器)
・太陽光発電等によりエネルギーを創る

戸建て住宅もマンションも建物の仕様については、エネルギー消費量の計算など、専門的な知識を要するため、ここでは「高いレベルでの省エネを実現できる住宅」という認識でよいと思います。

ZEH基準の住宅を購入する5つのメリット

ZEH基準の住宅を購入するメリットについては、一般的に次のようなことが挙げられます。

1. 光熱費の削減
2. エネルギー自立による防災性能の向上
3. 快適性・健康性の向上等
4. 補助金・税制の優遇が受けられる
5. 住宅ローンの金利が引き下げられる

1. 光熱費の削減
高断熱の家になることで冷暖房の使用量は減ります。また高効率の設備が導入されるとエネルギーの消費量も減ります。さらに、太陽光発電システムなどで自家発電した電気を使用することで購入する電気量が減り、結果的に光熱費の削減につながります。

2. エネルギー自立による防災性能の向上
太陽光発電システムなど家が電気を生み出せると災害時に停電が生じても自宅が発電した電気で明かりを確保するなど、生活インフラの一部を確保することも可能になります。ただ、太陽光発電システムは太陽が出ている日中にしか発電できませんので、蓄電池と組み合わせなければ、災害時のエネルギー自立という観点では、使用できる電気量や時間帯は限られてしまいます。

3. 快適性・健康性の向上等
高断熱の家では、居室間の温度差が解消されることで快適に過ごせると同時に健康上のリスク(ヒートショックなど)も減るメリットがあります。

4. 補助金・税制の優遇が受けられる
補助金
ZEH住宅で活用できる補助金には次のものがあります。

(1)ZEH各補助金
経済産業省、国土交通省、環境省の3省連携の事業であり、各省にて補助金が設定されています。戸建て住宅とマンションでは補助金の受け取り方に違いがあります。

戸建て住宅は、基本的に「購入予定者」に対しての補助です。つまり買った人が直接、補助金を受け取ります。(工務店が建てるZEH住宅の場合は工務店が補助金を受けるので、工事代金に還元させる形で購入者のメリットになります)

一方でマンションは、事業者が補助金を受け取ります。つまりマンションを建築した売主が受け取ります。ZEH仕様にすることでコストアップする分の一部が補助の対象になります。コストアップ分を補助金で補うことで販売価格への転嫁を抑えられるようにするしくみです。マンションの購入予定者が直接、補助金を受け取れるわけではありませんが、間接的に補助金のメリットを受けられます。

3省による支援制度

戸建て住宅の場合

戸建て住宅
区分 次世代ZEH+
(次世代ゼッチプラス)
ZEH+
(ゼッチプラス)
ZEH
(ゼッチ)
補助事業名称 次世代ZEH+
実証事業
戸建て住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)化等支援事業
地域型住宅
グリーン化事業
担当官庁 経済産業省 環境省 国土交通省
対象となる住宅 再エネなどのさらなる自家消費の拡大を目指した次世代ZEH+

より高性能なZEH
(ZEH+)

注文・建売住宅におけるZEH 中小工務店などによる木造住宅のZEH
補助額 定額100万円 定額100万円 定額55万円 定額140万円
(2022年予定額) (2021年実績額)
備考 補助は購入者に対して実施 補助は事業者に対して実施

マンションの場合

集合住宅
区分 ZEH-M
補助事業名称 超高層ZEH+M
実証事業
集合住宅の省CO2化促進事業
(高層ZEH-M支援事業) (低中層ZEH-M支援事業) (低中層ZEH-M支援事業)
担当官庁 経済産業省 環境省
対象となる住宅 住宅用途部分が21層以上におけるZEH-M 住宅用途部分が6~20層におけるZEH-M 住宅用途部分が4~5層におけるZEH-M 住宅用途部分が3層以下におけるZEH-M
補助額 補助対象経費の1/2以内(予定) 補助対象経費の1/3以内(予定) 補助対象経費の1/3以内(予定) 40万円/戸
(2022年予定額)
備考 補助は事業者に対して実施

「令和3年度3省による連携事業 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進に向けた取り組み」より抜粋、補助額は2022年の予定額を掲載


(2)こどもみらい住宅支援事業(マンションは対象外)
2022年から新しく始まる制度です。概要(※)は次の通りです。
対象 : (新築)子育て世帯または若者夫婦世帯*
(リフォーム)世帯を問わず対象となるリフォームをしたかた
*2003年4月2日以降出生した子を有する世帯もしくは夫婦のいずれかが1981年4月2日以降に生まれた世帯
補助額 : (新築)60万円~100万円(ZEH住宅の場合は100万円)
(リフォーム)5万円~60万円(工事内容と属性に応じて)
申請方法 : 住宅事業者が代わりに申請

※2022年2月14日時点では、国会での2022年度予算が未成立のため、概要のみ公開

税制優遇

「ZEH」住宅では、住宅ローン控除の控除対象借入限度額が一般住宅に比べて拡大されます。

住宅ローン控除対象借入額一覧
入居年 2022年~2023年に居住
控除率 0.7%
控除対象借入限度額
および
控除期間
一般住宅 3,000万円/13年間
認定住宅 5,000万円/13年間
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円/13年間
省エネ基準適合住宅 4,000万円/13年間

5.住宅ローンの金利が引き下げられる
「ZEH」住宅を購入するなら住宅ローン金利が優遇される商品もあります。「ZEH」住宅にすることで建築費がアップすれば住宅ローンの借入額も多くなりがちですが、金利が引き下げられれば、その分負担が軽減されます。

ZEHは結局お得なの?

ZEH住宅にすることで建築コストはアップします。戸建て住宅もマンションも前述の通り補助金はありますが、コストアップ分をすべて補うことは難しいでしょう。そういった観点では、購入時については負担が増えるので、決してお得とは言えません。

ただ、ZEH住宅は、消費エネルギーをゼロにすることを目指した住宅です。ランニングコストである光熱費がゼロになるということは、購入した家に住み続ける限り受けられる恩恵です。
もちろん高効率の給湯器などの機器はいずれ故障したりするでしょうが、ZEH住宅でなくともそういった機器類はいずれ交換の必要が生じます。そう考えれば、毎月のランニングコストが下がることのメリットは少なくないと思います。

ZEH住宅の将来展望

政府の政策目標では、ZEH住宅を2030年までに新築の平均にするとしています。つまり2050年にはZEH住宅を日本の新築住宅の当たり前の水準にしようとしています。

また、ここ数年の政府の住宅政策は中古住宅流通を促す方向に力を入れています。ZEH住宅など高品質の家の割合を増やし、良質な中古住宅の流通を促すことも展望として持っています。
2050年には、ZEH住宅が当たり前になっているのなら、ZEH住宅かそれに相当する仕様でなければ、中古住宅市場で高く評価されなくなっている可能性があります。
増える空き家も社会問題化しています。これから住宅を購入するかたは長く快適に使える家を未来へ残していく責任も負っているのかもしれません。

そう考えるとマイホーム購入の際には、ZEH住宅を積極的に検討する必要があるとも考えられます。

プロフィール
佐藤陽(さとう よう)

佐藤氏.PNG

プロフィール
佐藤陽(さとう よう)

佐藤氏.PNG


家づくりプランナー/ファイナンシャルプランナー
「20年後も家族が笑って過ごせるマイホーム購入」を実現するサポートを行う。
大手ハウスメーカーにて15年間勤務する。家づくりの最前線で年間300件を超える住宅ローンアドバイス、ローン取次業務を経験する。家を販売する立場で感じた売り手と買い手の情報量の違いを埋めるサポートをしたいと考え始めて、住宅購入相談を専門とするFP事務所を設立。

将来の家計を見据えた無理のない家づくり予算を導き出す独自の「家づくり予算診断サービス」はこれからマイホームを検討する相談者に好評を得ている。住宅ローンについても金融機関ごとの審査の傾向を把握した住宅ローン選定のサポートなど家づくりをお金の面からサポートしている。

机上の理論ではなく、融資申込から審査対応・融資実行までの実務に精通し、さらに家づくりの現場を知る強みを持つ。

住宅ローン相談をメニューに持つファイナンシャル・プランナーはたくさんいるが家づくりや不動産実務に精通した存在は珍しく、家づくりのセカンドオピニオンとしても機能するなど家づくりに特化した稀有なファイナンシャル・プランナー。

保有資格:ファイナンシャル・プランナー(AFP)、住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士


公式ブログ編集部から

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