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注目!円安は続くのか?今後の為替予想

【はじめに】
為替相場では円安水準が継続しています。現在の状況を引き起こしている理由と今後の予想をTVなどでおなじみのソニーフィナンシャルグループ チーフアナリスト 尾河眞樹にインタビューしました。

Q1
為替相場はドル円が一時125円台と2015年8月以来の安値になるなど、急激な円安が進行しています。なぜこのような状況が起きているのでしょうか。この状況を招いた要因を教えてください。

A1
ドル円の急上昇はドル高要因と円安要因が同時に注目されたことが背景にあります。ドル高要因は、2月下旬、ウクライナ情勢を巡り「有事のドル買い」が進んだことに加え、3月に入り、米連邦準備理事会(FRB)がこれまでより一段とタカ派に傾斜したことが挙げられるでしょう。パウエル議長は今や、5月以降の米連邦公開市場委員会(FOMC)で50Bpsの利上げを複数回行う可能性を示唆しています。

一方で日銀は、現状の緩和策を維持する方向性を明確にしていますから、日米の金融政策の格差に注目が集まる中、ドル円が急上昇しました。

Q2
対ドルだけでなく、円は多くの通貨に対して円安傾向が続いています。これはどうしてでしょうか。

A2
確かに、円は全面安の展開となっていますね。実際、インフレが加速しているのは米国だけでなく、欧州はじめ諸外国でもインフレの加速と金融引き締めの動きが顕著になる中で、日銀の金融政策だけが「ハト派」に取り残されるとの見方が広がったことも、円安を助長したと思われます。

日本の10年債利回りは日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)によって「0%付近(±0.25%)」に固定されていますが、これまで独10年債利回りはさらにこれを下回り、昨年を通してマイナス圏で推移していました。ところが、欧州中銀(ECB)が今年に入りタカ派にシフトしたことで、独10年債利回りがプラス圏に転じたため、日本の低金利状態が益々際立っています。

YCCの上限である0.25%の利回りを維持するために、日銀が3月下旬に「指値オペ」で金利の上昇を抑えたことも、円安を助長しました。さらに、日本の経常収支の悪化も円安に寄与している可能性が高いです。

Q3
現在の状況に歯止めがかかるタイミングはいつ頃になると予想しますか。今後の値動きを予想する上で重要なイベントを教えてください。

A3
FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)は、まだ今後変化する可能性があります。したがって、少なくとも6月のFOMCまでは、スピードは3月ほど速くないと思いますが、緩やかながらドル高基調は続くと予想しています。今年秋ごろにはFRBの今後の利上げペースがほぼ市場に織り込まれているであろうことを踏まえれば、ドル高圧力も徐々に後退していくとみています。

また、日本のインフレも加速すれば、今後は日本の金融政策にも注目が集まってくると思います。政策変更まではしないまでも、10年債利回りの変動幅を広げる、或いは、イールドカーブ・コントロールのターゲット金利を10年から5年に変更する可能性などに年後半から注目が集まれば、円安圧力には徐々にブレーキがかかってくるでしょう。

また、年後半のイベントとしては、米中間選挙にも注目したいです。バイデン大統領の支持率はロシアへの対応で一時持ち直しましたが、再び低迷しています。民主党が上院の過半数を失うようであれば、政策推進力が低下するとみられてドル安が進む可能性もあります。

Q4
米国をはじめ世界各国が政策金利の利上げを発表する中、日本は現在の金融緩和政策を継続する方針を発表しています。今後、日本が引き締めに転じるタイミングはいつ頃と予想しますか。

A4
すでに述べた通り、インフレの上昇から、市場参加者の関心は今後高まっていくと思いますが、実際に引き締めに転じるのはかなり先のことだと思います。黒田総裁の後任が決まり、新たな体制で今後の方針を打ち出すまでは、少なくとも政策変更はなさそうです。

例えば日銀はイールドカーブ・コントロールの枠組みは変えずに、目標金利を10年から5年に前倒しするなどの調整に踏み切る可能性はありますが、それであっても来年の秋ごろになりそうです。

ただ、資源高と円安の同時進行が続き、輸入物価の上昇が止まらないようであれば、想定されるよりも早いタイミングでの政策調整があるかもしれません。政府や日銀のスタンスの変化やその兆候には、十分注意しておく必要があるでしょう。

Q5
現在のような過度な円安の状況下では、どのようなマインドを持ち、立ち振る舞いをするべきでしょうか。外貨に関心のあるお客さまへメッセージをお願いします。

A5
3月のFRBによる利上げをみてもわかる通り、米国など海外では景気拡大、景気減速といった景気循環があり、それに応じて金融政策も緩和から引き締めへのサイクルがあります。この動きから長らく乖離しており、2013年から緩和政策を持続しているのが日本です。それを踏まえれば、今後外貨の金利が上昇するサイクルにある中で、外貨での資産運用の需要も増えると思われますし、外貨投資を検討するのには良いサイクルに入ってきたように思います。

ただ、足下世界情勢が不透明な状況であり、市場のボラティリティが高まりやすい環境であることを踏まえれば、市場変動リスクを抑える戦略が必要です。
そのためにも、長期目線で投資する通貨を分散、或いは外貨を購入するタイミングをずらす、または積み立てを行うなど、リスク分散を考えてみてはいかがでしょうか。分散投資といった場合には、類似の通貨や商品をいくつも購入しては意味がありません。値動きの異なる商品や通貨を同時に保有することをおすすめします。

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