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晩婚化で介護と子育てが重なる?(FP相談室)

今、日本で「晩婚化」が進んでいます。

厚生労働省によると、2021年時点の男女の平均初婚年齢は、男性31.0歳、女性29.5歳。1995年時点では男性28.5歳、女性26.3歳でしたので、この26年間で3年程度、初婚が遅くなったことになります。

それにともない、出産する年齢も上がりつつあります。2021年時点での平均出産年齢は30.9歳。出産した人のうち約3割が「35歳以上」でした。
(厚生労働省「令和3年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)

仮に、35歳で出産した場合、子どもが成人する頃には親は50代。自身の親も70〜80代になっており、場合によっては介護を必要とする時期かもしれません。

子どもの教育費がピークを迎えるタイミングで、親の介護費用の援助、自分自身の老後の準備など、お金を必要とするイベントが重なる可能性があります。

こうした人生の後半のイベントにどう対処すればよいのか、教育と介護にかかるお金の目安を確認し、今からできる対策とその考え方をご紹介しましょう。

子どもの教育費、 私立・理系は高額に

まず、子どもの教育費ですが、どのくらいかかるかは、その進路によって大きく異なります。

進路別 子どもの教育費
公立 私立 私立(理系)
幼稚園(3年間) 649,088円 1,584,777円
小学校 1,926,809円 9,592,145円
中学校 1,462,113円 4,217,172円
高等学校 1,372,072円 2,904,230円
大学(4年間) 2,425,200円 4,079,015円 5,511,961円

出典:幼稚園〜高等学校まで 文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」より、私立大学 文部科学省「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)」より、公立大学「国立大学等の授業料その他費用に関する省令」より
※金額は、在学期間中の総額

幼稚園から大学まで、すべて公立の学校に通った場合、学費の総額は約780万円、幼稚園から中学校まで公立、高校・大学(文系)は私立に通った場合は、約1,100万円、幼稚園から大学(理系)まで、すべて私立に通った場合は、約2,380万円となっています。

公立よりも私立、文系コースよりも理系コースの方が、学費は高くなる傾向にあります。

他にも、習いごとや学習塾など、学校外での費用が発生することもあるでしょう。自宅外から通う場合は、家賃や光熱費なども必要となります。
上の費用に加えて、プラスアルファの余裕をみておきたいところです。

教育費は早めの準備を

では、こうした支出に備えるには、どうすればよいのでしょうか。
ポイントは「早めに準備しておく」ことです。

一般的に教育費が本格的に増えるのは、中学や高校に進学する頃からです。ピークは大学入学時となります。
現状の家計の収支を参考にしながら、赤字になりそうな時期に備えておきましょう。

たとえば、以下のように、子と親の年齢、教育費の目安の表を作ると、費用が発生するタイミングや準備期間を整理しやすくなります。

(例)公立に通う場合の教育費
子の年齢 自分の年齢 子のイベント 1年当たりの
教育費の目安
0歳 35歳
3歳 39歳 幼稚園入園 約19万円
4歳 40歳 約22万円
5歳 41歳 約24万円
6歳 42歳 小学校入学
1年生
約35万円
7歳 43歳 2年生 約26万円
8歳 44歳 3年生 約29万円
9歳 45歳 4年生 約31万円
10歳 46歳 5年生 約34万円
11歳 47歳 6年生 約37万円
12歳 48歳 中学校入学
1年生
約46万円
13歳 49歳 2年生 約44万円
14歳 50歳 3年生 約57万円
15歳 51歳 高校入学
1年生
約51万円
16歳 52歳 2年生 約46万円
17歳 53歳 3年生 約40万円
18歳 54歳 大学入学
1年生
約82万円
19歳 55歳 2年生 約54万円
20歳 56歳 3年生 約54万円
21歳 57歳 4年生 約54万円

先の文部科学省の資料によると、公立の高校3年間で計137万円、国公立の大学4年間で計240万円の教育費がかかります。

ですから、たとえば、子どもが16歳になる頃に300万円の貯金を用意しておく、と目標を決めておくのもよいでしょう。
現在、子どもが0歳であれば、300万円÷16年間=18.75万円、年間約19万円ずつ、月額約1万6,000円を貯めていけば達成できる計算です。

問題は、進学先によって費用が大きく異なることです。
あくまで一案ですが、親が進学する学校を仮に決めてお金の準備をしておき、その後、子どもが大きくなり、実際に進路を決める段階で、その差額を足す(あるいは引く)という方法もあります。

中学受験に迷うなら、決めるのは塾通いが始まる小学4年生のタイミングです。大学に関しては、高校に入学するタイミングが一般的でしょう。
その時点で、家計の収支や貯蓄額をみながら、どれくらい教育費をかけられるか、家庭内で話し合うとよいでしょう。

また、子育てに関する公的な支援もフルに活用しましょう。
たとえば、最大で総額200万円が支給される「児童手当」を使わずに貯めておき、大学の入学金に充てる、というのも1つの手です。

幼児教育・保育の無償化もスタートしており、以前よりも、幼少期にお金を貯めやすいかもしれません。

子育ての主な公的支援
制度名 対象者 支援の内容 条件など
児童手当 0歳~中学生 月5,000円~
15,000円
支給される
(1人あたり)
22年10月以降受け取らない世帯もあり
幼児教育・保育の無償化 0歳~小学校入学前まで 保育料が無料に
一部の私立幼稚園の場合、月25,700円を上限に支給
0~2歳までは住民税非課税世帯が対象
3歳~小学校入学前までは所得制限なし
高等学校就学支援金制度 高校生など 高等学校全日制(公立)で上限月9,900円
高等学校全日制(私立)で上限月3万3,000円
を支給
世帯所得に制限あり
申請する必要あり
高等教育の修学支援新制度 大学生・専門学校生など 最大年70万円の授業料免除+最大年91万円の給付型奨学金など 世帯所得に制限あり
申請する必要あり

運用期間が長くとれる場合は資産運用もアリ

一歩踏み出せる人は、預貯金に加えて、投資による資産運用を検討してもよいでしょう。

株式に投資する場合、これまでの株価の推移を見る限り、運用期間が長いほど、利益を得られる可能性は高くなります。

仮に、子どもが生まれたタイミングで、運用を始めれば、大学入学時まで18年間の運用期間を設けることができます。世界全体の株式に投資できる投資信託などを利用して、毎月コツコツ積み立て投資をすれば、通常の預貯金よりも多くのお金を準備できる可能性があります。

投資を始める際は、「NISA」など運用益が非課税の制度を活用するなどで始めるとよいでしょう。

介護の費用 平均は600万円

続いて介護の費用です。
介護にかかる費用も個人差が大きく、モデルケースはないのが実情です。自宅を離れて、介護施設に入所する場合は、その施設の種類によっても、大きく金額が異なります。

生命保険文化センター「生命保険に関する全国調査」2021(令和3)年度によると、毎月の介護費用の平均は8.3万円、介護の平均期間は61.1ヶ月でした。加えて、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用が平均74万円かかっています。

単純に計算すると、8.3万円×61.1ヶ月+74万円=581.13万円。
あくまで平均ですが、1人あたりの介護費用は600万円弱となります。

介護のあれこれ あらかじめ親と話し合いを

こうした介護のお金は、原則、親自身のお金で賄いたいところです。
多くの場合で、子育て中の世帯が親の介護費用を負担する余裕はありません。先述したように、子どもの教育費や自分自身の退職後のお金を用意する必要があるからです。

とはいえ、親の経済状況によっては、子が支援することもあるでしょう。あるいは、お金の支援はできなくとも、介護休業などを利用してサポートすることもあるかもしれません。

そこで確認しておきたいのが、「どういった介護を受けたいか」「資産はどれくらいあるのか」ということ。

聞きづらい話題かもしれませんが、「介護が必要になったらどんなサポートができるか考えたい」など、支援の意志を親に伝えたうえで、相談してください。

市販の「エンディングノート」などを利用するのも1つの手ですね。ノートに記載されている選択肢、たとえば「最期まで自宅で過ごしたい」、「要介護認定を受けたら施設に住み替える」などに、「はい・いいえ」で回答してもらいます。

そこから話を膨らませていくことで、親の考え方も聞き出しやすくなるでしょう。

また、介護に関する費用は、その全額を支払う必要はありません。「介護保険制度」によって、保険適用内のサービスであれば、自己負担額は1〜3割です。その自己負担額にも、介護度合いによって、上限額が設定されています。

介護保険のサービスを受ける際は、「要支援」「要介護」の認定を市町村から受けた後、介護のプロである「ケアマネージャー」と一緒に「介護プラン」を作成していきます。

プラン作成の際は、どういった介護を受けたいか、親の希望を聞きながら、親の年金や資産の範囲内で、どういった介護を受けられるか、選んでいくことになります。

介護や各手続きを行うために、会社を休むこともあるかもしれません。そういった際は「介護休業」や「介護休暇」といった公的な制度を利用しましょう。

自分自身の老後資金も忘れずに

子育てと介護、いずれも不確定な要素が多いものの、早めの準備や話し合いによって、ある程度円滑に進めることも可能です。

教育費に関しては、おおむね何歳でどれくらいの出費があるか、事前にわかることもあります。どのくらいのペースでお金が必要となるかシミュレーションしておき、できる範囲内で準備しておきましょう。

注意したいのは、自分自身の老後や介護資金も必要になること。自分に必要な資金を確保したうえで、教育費や介護の援助を行う、ということも忘れないでください。

井戸美枝(いどみえ)

井戸美枝(いどみえ)

CFP®、社会保険労務士。
講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。
「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP社)『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)などがある。

公式サイト:井戸美枝オフィシャルサイト

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