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今後の為替動向、注目イベントは?尾河眞樹 特別インタビュー

はじめに
2022年3月以降、急速に円安・ドル高が進み、ついには政府・日銀による円買い介入も実施されました。この先の見通しや年内の注目イベントは、どのようなものが考えられるでしょうか。
大好評企画!TVなどでおなじみのソニーフィナンシャルグループ チーフアナリスト 尾河眞樹にインタビューしました。

Q1:
お客さまの動向を見ていると、これまではどちらかというと外貨を売る動きが目立ちましたが、140円台に乗ってからは積極的に外貨を買っている動きも見えるようになっています。尾河さんから見て、まだドル円の先高観は感じるでしょうか。

A1:
今回の円買い介入は、米国経済が減速するまでの時間稼ぎのイメージです。足下の円安・ドル高は、米国の大幅利上げに対して日本が緩和政策を維持していることによる、日米実質金利差の拡大、また、日本の経常黒字の急激な縮小によるもので、こうしたファンダメンタルズが変わらない限り、基本的には介入で「円安・ドル高トレンド」を「円高・ドル安トレンド」に転換することは難しいとみています。おそらく日本の当局もそれをわかっていると思いますので、投機的な動きを抑えるための、スピード調整としての介入だったのではないでしょうか。

9月の米消費者物価指数(CPI)で、食品とエネルギーを除くコア指数が加速していたこともあり、インフレの高止まりが懸念されています。米連邦準備理事会(FRB)は景気を犠牲にしてもインフレを抑制する意思をハッキリ示していますから、しばらく大幅な利上げは続くでしょう。これに伴い日米実質金利差が一段と拡大すれば、一時的には150円台を試す可能性もありそうです。

Q2:
米ドル金利の上昇に伴い、ソニー銀行だけでなく、ほかの金融機関も米ドル定期預金の金利が上昇しています。多くのお客さまが金利に注目していると感じますが、この先はどのような動きを予想していますか。

A2:
はい。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された、FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)を見ても、FRBの利上げはまだ当面続きそうですね。これに沿って、ソニーフィナンシャルグループも2022年9月28日発行のQuarterly Market Outlook で、見通しを引き上げました。
Quarterly Market Outlook(マーケット千里眼) 

23年3月末までに、米政策金利はさらに1.5%ポイント引き上げられる見通しで、FF金利は4.5~4.75%まで上昇すると予想しています。また、これに伴い来年前半にかけて、米2年債利回りは4.7%、10年債利回りは4.0%超まで上昇すると予想しています。

ただ、過去の米利上げ局面では、米潜在成長率を上回る水準まで実質金利(名目金利―期待インフレ率)が上昇すると、その後米国経済は景気後退に陥ったケースがほとんどでした。足下米国の潜在成長率は2.0%弱で、今お伝えした見通しに沿って米実質金利を計算すると、ゆくゆくは2.0%を確実に上回ってきます。

したがって、米国経済は来年後半には景気後退入りすると予想しており、来年末ごろにはFRBは利下げに転じる可能性が高いとみています。すでに、米ISM製造業景況指数など、一部には弱い経済指標も目立ち始めています。来年前半から、米経済指標の悪化やインフレの減速が顕著になり始めるとすると、市場は「期待」で動きますから、ドル円は今年の年末から来年初にかけてピークアウトし、来年は下落トレンドに転じる可能性もあるのではないでしょうか。一方、来年はFRBの利上げペースが鈍化するとすれば、米株式市場は来年前半に底打ち感が出るとみています。

Q3:
2022年も残りわずかですが、年内のイベントで尾河さんが注目しているものはありますか。

A3:
個人的には、24年ぶりのイベントということもあって、政府・日銀の円買い介入は、なんとなく懐かしく、感慨深いものがあります。今後介入が断続的に行われるかどうかといった点は注目すべきポイントと言えるでしょう。

また、年内のイベント、という意味では、11月の米中間選挙にも注目したいですね。今のところ、世論調査では米下院は共和党優勢、上院は民主・共和が拮抗と伝えられていますが、仮に上下両院が共和党に過半数を取られることになると、バイデン政権の政策運営が、より困難になるとみられます。これまでの財政支出拡大方向が難しくなってくるというイメージから一時的には、米株安などの影響があるかもしれません。

ウクライナ情勢や、これに伴う資源価格の動向にも注目が必要です。特に天然ガス価格は欧州経済にも大きな影響を与えますので、為替でいうと、ユーロの動向に最も大きなインパクトがあると思われます。ドイツ経済は現在、コストプッシュインフレと利上げによって、景気後退リスクに晒されている状況です。景気の過熱による、所謂ホームメイドインフレの米国と、コストプッシュインフレのユーロ圏では、同じ利上げでもユーロ圏の方が景気に与える悪影響は深刻で、ユーロはドルに対して当面軟調な展開が続きそうです。

Q4:
金利や世の中の動きからも外貨預金を始めたいと思っているものの、その一歩が踏み出せないかたへ向けて、ぜひ尾河さんからのアドバイスを教えてください。

A4:
おそらく今のような円安水準と政府・日銀によって円買い介入が実施された環境では、特に初心者のかたにとっては、外貨預金に躊躇してしまうかたが多いのではないかと思います。ただ、積立であれば、預金だけでなく投資信託もそうですが、「いつから開始しても良い」、というのが基本です。また、日本の潜在成長率が現在0.3~0.4%程度に留まるなかで、ユーロ圏が1.2%前後、米国は2.0%付近であることを踏まえると、長期的にみれば、やはり資産運用に海外の成長を取り込むことが重要であることは言うまでもありません。

特に為替相場は変動が大きくなっていますが、積立であれば相場が上昇しても下落しても淡々と買っていくという点で、変動に一喜一憂せずに済むところが非常に大きな利点です。長期的な視野で、今後数年かけるつもりで行うこと、対象を分散すること(例えば外貨預金であればドルを軸にしつつも通貨を分散するなど)、毎月同額の円資金で外貨を買うなど、積立で行うこと、所謂「長期・積立・分散」の基本をきちんと守って開始していただければ、初心者のかたでも振り返ってみて、「あの時始めてよかった!」と思える日がくると思います。


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