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30代から始めるiDeCoを徹底解説。気になるデメリットは本当? (FP相談室)

30代は将来に向けて貯蓄や投資への関心も高まる時期ではないでしょうか。
気になるキーワードのひとつがiDeCo。
iDeCoのデメリットは本当なのか?制度のポイントについて徹底解説していきます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用をして老後資産を形成する年金制度です。

加入できる人と掛金の限度額

原則20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者が加入できます。掛金の拠出限度額が、自営業、会社員などの加入資格ごとに決められており、限度額の範囲であれば、月々5,000円から1,000円単位で自由に設定ができます。掛金の金額は1年に1回限り、変更が可能です。
また、国民年金保険料を納めていれば、海外在住の人でも加入できるなど、幅広い人が利用できるようにと制度の内容が変わってきています。

iDeCoの拠出限度額

加入資格 拠出限度額 備考
自営業者等
(第1号被保険者)
月額6.8万円 国民年金基金や国民年金付加保険料との合算枠
会社員・公務員
(第2号被保険者)
会社に企業年金がない 月額2.3万円
企業型DCのみに加入 月額2.0万円 事業主掛金額との合算で月額5.5万円まで、かつ2.0万円以下
DBと企業型DCに加入 月額1.2万円
(注1)
事業主掛金額との合算で月額2.75万円まで、かつ1.2万円以下
DBのみに加入
公務員
月額1.2万円
(注2)    
専業主婦(主夫)
(第3号被保険者)
月額2.3万円



企業型DCは企業型確定拠出年金のこと、企業型DBは企業型確定給付年金・厚生年金基金・石炭工業年金基金・私立学校教職員共済のこと。2022年10月以降は、企業型確定拠出年金に加入をしている人もiDeCoに加入できるようになりましたが、企業型の確定拠出年金に個人で掛金の上乗せをする「マッチング拠出」を行っている場合は、iDeCoの利用はできません。

(注1)令和6年12月から2万円に引き上げられる。ただし、企業型DCの事業主掛金額とDB掛金相当額を加えた合計額が月額5.5万円以下
(注2)令和6年12月から2万円に引き上げられる

転職先に企業型確定拠出年金がない場合

勤務先で、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していたかたが転職した場合、転職先にも企業型DCがあれば、転職先の制度に加入し、年金資産を移換できます。
しかし60歳未満で退職し、転職先に企業型DCの制度がない場合には、企業型DCの資産をiDeCoに移換ができます。
移換手続きは、加入資格を喪失した日(退職日の翌日)の属する月の翌月から6ヶ月以内に行う必要があります。6ヶ月以内に行わない場合は、自動的に国民年金基金連合会に移換され、そのまま放置し4ヶ月を過ぎると管理手数料が差し引かれてしまいますので、手続きを怠らないようにしましょう。

3つの税制優遇

iDeCoには、3つの税制優遇があります。

1.掛金は全額所得控除の対象
掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。

(例)所得税率が10%、住民税率が10%の場合
掛金が月1万円の場合、掛金年間合計額は12万円。全額所得控除の対象になるので、所得税が12,000円、住民税が12,000円軽減される。

2.運用益は非課税
通常、金融商品の運用益には20.315%が課税されますが、iDeCoの場合、運用益は非課税です。

3.受け取り時にも税制の優遇あり
運用した資産を受け取るときは、年金で受け取るか一時金で受け取るかを選択できます。年金で受け取る場合には「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合には「退職所得控除」の対象となるため、受け取り時の税金の負担も軽減されます。

iDeCoの運用商品

iDeCoの運用は、運営管理機関である金融機関が選定する運用商品の中から選択し行います。商品は、投資信託や、定期預金・保険といった元本確保型の商品の中から選ぶことができます。複数の商品を組み合わせる場合には、どの商品を何%購入するか配分比率を決めます。

提供されている商品は、運営管理機関によって異なります。

原則60歳以降に受け取り

運用資産は、原則60歳から75歳までの間の好きなタイミングで受給を開始できます。

受け取り方法には、次の3つの方法があります。
・一定の金額を年金として定期的に受け取る
・一括ですべて受け取る
・年金と一括を併用して受け取る

iDeCoのデメリットは?

このように税制上のメリットを受けながら老後の資産形成ができるiDeCoですが、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

途中でお金が必要になった場合でも、60歳まで受け取れない。

iDeCoは、老後の資産形成を目的とした年金制度のため、原則として60歳まで引き出すことができません。
そのため、20代、30代のかたは、これから必要になるお金が不確定な段階でiDeCoを始めることには抵抗がある人もいるでしょう。

そこで、途中でお金が必要になった場合でも困らないようにするために、まずは「緊急予備資金」の準備をして、準備ができた時点でiDeCoを始めるかどうかの検討をしましょう。

「緊急予備資金」とは、もしものときのために準備をしておくお金です。病気など万一のことがあった場合に生活を立て直すまでに必要なお金として、毎月の生活費の半年分から1年分くらいを準備しておきましょう。

それでも、中途解約ができないことは不安だと思うかもしれません。しかし、いつかは準備しなくてはならない老後資金を貯めるうえでは、気軽に引き出しができず確実に貯められるという点はメリットとも考えられます。掛金の金額は、途中で変更ができますので、無理のない範囲で開始をして、ライフプランにあわせて掛金の変更をしていきましょう。

元本割れする可能性がある

iDeCoでの運用は元本割れの可能性があることを心配に思う人もいるでしょう。確かに、値動きがある商品を選択した場合は、拠出した金額を下回ってしまう可能性もあります。

またiDeCoは、加入時、運用期間中、受け取り時などに手数料もかかります。
特に口座管理手数料は、運用期間中、毎月かかります。そのため、手数料以上の運用益が出ないと結果的に損をする場合もあります。

手数料の負担感は、掛金の金額や運用方針にもよるので、所得控除のメリットを含め、手数料を上回る結果が残せるかどうかを検討してください。

絶対に元本割れをしたくないという人は、定期預金や保険商品など元本確保型の商品を選択することもできます。

しかし、低金利の中、定期預金や保険商品のみでは、増やすことは期待できません。将来に向かって物価が上昇していった場合は、準備した金額では不足してしまう可能性もあります。老後資金のように遠い将来に向けて準備をするお金の場合は、ある程度のリスクをとってでも、物価上昇に対応することも必要でしょう。

20代、30代のかたは、運用できる期間が長いという点が資産運用においては大きなメリットです。一時的に大きく価格が下がったとしてもリカバリーできるだけの時間があるからです。時間を味方につけることができるという点で、積極的な運用にチャレンジできる世代だということも踏まえておきましょう。

手続きが煩雑そうで面倒?

iDeCoに加入をする際の手続きは、次のような流れになります。

1.加入資格があるのか、加入資格区分と掛金の限度額を確認する

2.加入をする金融機関を選択する

3.金融機関から加入申込書を入手する

4.加入申込書に記入し、必要な書類を添付して提出する

特に会社員、公務員など厚生年金の被保険者の場合は、加入申込書提出時に勤務先の事業主に証明書をもらう必要があります。この手続きを会社に依頼することが面倒という声は多いのですが、この手続きは一回だけです。総務などの部署のかたであれば、すぐに作成できる書類ですので、遠慮することなく依頼しましょう。

金融機関選びが面倒?

iDeCoの取り扱いをしている金融機関は約160にもおよびます(2022年10月現在)。その中から1社を選ぶのは大変だと感じるかもしれません。特に一度加入をすると金融機関の変更をするのは、手続きも煩雑で変更手数料もかかる場合があるため、最初の選択は重要です。

金融機関を選択するうえで、次のようなポイントに注目しましょう。
・自分が運用をしたい商品があるか
・インターネット、対面、コールセンターなど手続きの方法が自分に合っているか
・口座管理手数料などの手数料がいくらか

手数料が安いことを優先するという人、対面で手続きできる金融機関がよいという人、運用したい商品で選びたい人など、何を重視するのかによって選ぶ金融機関は変わってきます。
まずは、重視するポイントから金融機関を絞って選んでみましょう。金融機関の各種手数料などを比較できるサイトもありますので、重視するポイントで比較してみるとよいでしょう。

掛金が払えなくなったら?

iDeCoは、次のような一定の条件に当てはまらない限り、中途解約はできません。
・一定以上の障害状態になり障害給付金を受け取る場合
・加入者が死亡をして、死亡一時金を受け取る場合
・国民年金保険料を支払うことができないなどの一定の条件に当てはまり、脱退一時金を受け取る場合

このように、中途解約の条件は厳しいため、将来的に掛金の支払いが難しくなったときのことが心配だという人もいるでしょう。

しかしiDeCoの掛金は、1年に1回変更ができます。月々、最低5,000円以上1,000円単位で変更ができますので、支払いが厳しくなったときは、まず、掛金の金額の変更を検討します。それでも支払いが難しくなった場合は、掛金の拠出を停止して「運用指図者」として運用のみを行うことも可能です。ただし、運用のみを行う場合でも口座管理手数料はかかりますので、掛金の拠出ができるようになったら、できるだけ早く再開しましょう。

商品選択が難しい?

iDeCoでどのように商品を選んだらよいのか、わからないという声をよく聞きます。
しかしiDeCoに限らず、資産運用では商品を選ぶことは避けられません。ここでしっかりとポイントを押さえておきましょう。

iDeCoで選べる運用商品には定期預金や保険のような「元本確保型」の商品と、運用の専門家が株式や債券などの商品に分散投資をする「元本変動型」の商品である投資信託があります。

投資信託には、日本株式、世界株式、日本債券、世界債券、不動産(REIT)、金などが投資対象のものと、それらの商品の組み合わせであるバランス型があります。

また、投資信託は投資スタイルにより次の2つに分けられます。
・日経平均株価など市場の動きを示す指標(インデックス)と同じ動きをする運用方針であるパッシブ型(インデックス型)
・指標を上回る運用成績を目指し、専門家が独自の視点で投資対象を選択するアクティブ型

どのような投資対象で運用を行っていきたいのか、投資スタイルはどちらが好みかによって商品を絞っていきます。
たとえば値下がりのリスクが気になるなら日本債券などできるだけ値動きが少ない商品を中心に選択をする、大きめの価格変動リスクを許容して大きなリターンを追求するなら世界株式を中心に選ぶなど、自分の考えや好みを踏まえた商品選びをしていきます。

特にこの分類の商品に投資をしたいというこだわりがないのであれば、分散投資ができるバランス型を選択するのもよいでしょう。

なおiDeCoの運用商品は、途中で変更も可能です。
今後、あらたに購入する商品を変更する「配分変更」と、これまで運用してきた商品を売却・解約して他の商品の買い付けをする「スイッチング」という2つの変更方法があります。

資産運用は、時間をかけてコツコツと積み立てをしていくことで分散投資の効果が高まります。商品選びが難しいと後回しにするのではなく、まずはスタートをして運用をしながら商品変更をしていくのもよいのではないでしょうか。

iDeCoは、老後資金の準備を行ううえでは最も優遇されている制度です。デメリットを踏まえたうえでも活用した方がよいと判断した場合は、この機会に加入を検討してみてはいかがでしょうか。

高田晶子(たかだ あきこ)

高田晶子(たかだ あきこ)

金融デザイン株式会社取締役。一級ファイナンシャルプランニング技能士。
大学卒業後、信託銀行に就職。信託銀行退職後、イベント会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年、ファイナンシャルプランナーとして独立。著書に「住宅ローン 賢い人はこう借りる!(共著、PHP研究所)」「絶対に知っておきたい!地震火災保険と災害時のお金(自由国民社)」など。「私にできるお金のため方・ふやし方」を学ぶオンラインゼミ「お金の知恵アカデミー」を主催。

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