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NISA、相続、贈与はどう変わる?個人の税金に関わる令和5年度税制改正(FP相談室)

2023年度(令和5年度)の与党税制改正大綱が発表されました。
今回の改正では、個人投資家の優遇制度であるNISAの拡充や相続税・贈与税の改正など、私たちの暮らしに関係する内容が多く盛り込まれています。
税制改正大綱のうち、個人の税金に関わる内容について詳しくお伝えします。
※税制改正大綱は税制改正の案であり、今後内容が変わる可能性があります。

NISAの抜本的拡充・恒久化

改正のポイント
・非課税期間が無期限に
・「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能に
・年間投資上限額が最大360万円に
・制度は恒久化

1.NISAとは?
株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益やその配当に対して20.315%(注)の税金がかかります。
NISAとは「NISA口座(非課税口座)」を開設し、その中で購入した金融商品について、これらを売却して得た利益やその配当が非課税となる制度です。

(注)所得税15.315%、地方税5%。2013年(平成25年)1月1日から2037年(令和19年)12月31日まで復興特別所得税が含みます。

2.現行のNISA
現行のNISAは、18歳以上の人が利用できる「つみたてNISA」と「一般NISA」、18歳未満の人が利用できる「ジュニアNISA」の3種類があります。
なお、「つみたてNISA」と「一般NISA」はどちらか1つしか選ぶことができません。

現行のNISA(2023年まで)
比較内容 つみたてNISA 一般NISA ジュニアNISA
対象年齢 18歳以上 18歳以上 18歳未満
投資可能期間 2042年まで 2028年まで 2023年まで
非課税保有期間 20年 5年 5年
年間投資枠 40万円 120万円 80万円
非課税で保有できる限度額 800万円 600万円 400万円
投資商品 一定の投資信託 上場株式、投資信託 上場株式、投資信託

3.改正後の新NISA
2023年度税制改正により、NISAは恒久化され、非課税保有期間の無期限化、年間投資枠の拡大など大変使いやすい制度になります。
新NISAは2024年1月1日よりスタートします。
なお、ジュニアNISAは2023年をもって廃止されます。
どのように変わるのか詳しく見ていきましょう。

①「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能に
現行のつみたてNISAは「つみたて投資枠」、一般NISAは「成長投資枠」としてその役割を引き継ぎます。これらは併用が可能になります。

②年間投資上限額が最大360万円に拡大
年間投資上限額が「つみたて投資枠」は120万円、「成長投資枠」は240万円、合計360万円に拡大されます。

③非課税で保有できる限度額が最大1,800万円に拡大
非課税で保有できる限度額が2つの枠で合計1,800万円に拡大されます。そのうち成長投資枠は1,200万円までとされています。

④非課税保有期間の無期限化
新NISAでは、つみたて投資枠、成長投資枠どちらも非課税で保有できる期間が無期限になります。

⑤制度の恒久化
現行のNISAは投資できる期間が決められていましたが、新NISAは制度が恒久化されます。そのため、いつでも投資をはじめることができ、いつでも非課税で売却できるようになります。

改正後のNISA(2024年1月以降)
比較内容 つみたて投資枠 成長投資枠
対象年齢 18歳以上
投資可能期間 恒久化
非課税保有期間 無期限
年間投資枠 120万円 240万円
非課税で保有できる限度額 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)
投資商品 一定の投資信託 上場株式、一定の投資信託

生前贈与加算の対象が3年間から7年間に延長

改正のポイント
・生前贈与加算の対象が3年間から7年間に
・2027年1月の相続税から徐々に加算期間が長くなり、2031年1月以降の相続税からまるまる7年分が加算される

1.生前贈与加算とは(現行)
贈与を受けた財産は、年間110万円までは贈与税がかかりません。
しかし贈与をした人が亡くなり、贈与を受けた人が相続または遺贈により贈与をした人の財産を受けた場合、現行では亡くなった日から3年前までに贈与を受けた財産については相続財産と合算して相続税を納めます。これを「生前贈与加算」といいます。

2.生前贈与加算の対象が3年間から7年間へ
2023年度の税制改正により、生前贈与加算の対象となる期間が3年間から7年間に拡大されます。この改正は2024年1月1日以降の贈与に係る相続税から適用されます。

生前贈与加算の期間が実際に3年より長くなるのは2027年1月の相続税からです。その後徐々に加算される期間が長くなり、2031年1月以降の相続税から7年分の贈与がまるまる生前贈与加算の対象になります。

ただし、延長された4年間に贈与された財産については、総額100万円までは相続財産に加算されません。

相続時精算課税制度にあらたに年間110万円の基礎控除が設けられる

改正のポイント
・相続時精算課税制度に、年間110万円の基礎控除が新設
・相続時精算課税制度を選択していても、年間110万円までの贈与は非課税で申告も不要

1.相続時精算課税制度とは(現行)
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫に対する累計2,500万円までの贈与に係る贈与税が非課税になる制度です。贈与額が2,500万円を超えた場合、超えた金額に対して一律20%の贈与税が課されます。
相続時精算課税制度を使うためには、税務署に「相続時精算課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

相続時精算課税制度には次の特徴があります。
①    贈与財産は2,500万円の非課税枠も含めて全額相続財産に合算され、相続税の対象となります。
②    相続時精算課税制度を使うと暦年課税の基礎控除110万円は利用できず、少額の贈与でも必ず贈与税の申告が必要になります。
③    いったん相続時精算課税制度を選択すると、選択した間柄での贈与では二度と暦年課税に戻ることはできません。

以上のことから相続時精算課税制度は使い勝手が悪く、あまり活用されることはありませんでした。

2.税制改正で年間110万円の基礎控除を新設
2023年度税制改正により、相続時精算課税制度が次のように変わります。
①現行の2,500万円の非課税枠のほか、あらたに年間110万円の基礎控除が設けられます
②年間110万円までは相続財産に加算されません。
③年間110万円までの贈与については、贈与税の申告が不要になります。

この改正は2024年1月1日以降の贈与税・相続税に適用されます。

この改正により、亡くなった日以前7年間の贈与に係る相続税については、相続時精算課税制度を使った方が暦年課税よりも有利になります。
▶ 相続時精算課税制度:亡くなった日以前7年間の贈与であっても年間110万円までは相続財産に加算不要
▶ 暦年課税:亡くなった日以前7年間の贈与は全額相続財産に加算

教育資金の一括贈与の非課税措置が一定の改正を経たうえで3年間延長

改正のポイント
・一部内容を改正したうえで2026年3月まで延長
・贈与者死亡の時点で受贈者が使いきれていない金額について、受贈者が23歳未満等であっても贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合は、死亡時に使いきれていない金額は相続財産に加算
・契約終了時点で使いきれなかった金額にかかる贈与税には一般税率を適用

1.教育資金の一括贈与の非課税措置とは(現行)
30歳未満の人が父母や祖父母から教育資金に充てるため金融機関に専用口座を設けて一括で贈与を受ける場合、1,500万円を上限に贈与税が非課税になります。

贈与者が死亡した場合、教育資金贈与のうち使いきれていない金額があるときは、受贈者がその使いきれていない金額を相続等により取得したとみなして相続財産に加算されます。
ただし、受贈者が贈与者の死亡日において次のいずれかに該当する場合には、相続財産に加算されません。

①23歳未満の場合
②学校等に在学している場合
③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合

受贈者が30歳になった場合等の理由が生じた場合、教育資金契約は終了します。契約終了時点で使いきれなかった金額があるときは、その使いきれなかった金額に対して贈与税が課されます。
この場合、受贈者が18歳以上であれば特例税率(一般よりも有利な税率)が適用されます。

2.改正後
この制度は2023年3月末で終了予定でしたが、次の改正をしたうえで2026年3月末まで3年間延長されます。

①贈与者の死亡時に受贈者が23歳未満等であっても贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合は、死亡時に使いきれていない金額は相続財産に加算される。
②受贈者が18歳以上であっても一般税率が適用される。

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例が一定の改正を経たうえで3年間延長

改正のポイント
・一部内容を改正したうえで2026年3月まで延長
・契約終了時点で使いきれなかった金額にかかる贈与税には一般税率を適用

1.結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度とは(現行)
50歳未満の人が父母や祖父母から結婚や子育て資金に充てるため金融機関に専用口座を設けて一括で贈与を受ける場合、1,000万円を上限に贈与税が非課税になります。

贈与者が死亡した場合、結婚・子育て資金贈与のうち使いきれていない金額があるときは、受贈者がその使いきれていない金額を相続等により取得したとみなして相続財産に加算されます。

受贈者が50歳になった場合等の理由が生じた場合、結婚・子育て資金管理契約は終了します。契約終了時点で使いきれなかった金額があるときは、その使いきれなかった金額に対して贈与税が課されます。
この場合、受贈者が18歳以上であれば特例税率(一般よりも有利な税率)が適用されます。

2.改正後
この制度は2023年3月末で終了予定でしたが、受贈者が18歳以上であっても一般税率が適用されるという改正をしたうえで2025年3月末まで2年間延長されます。

まとめ

2023年税制改正大綱の中から、NISAの抜本的拡充・恒久化と生前贈与加算の対象年数拡大、相続時精算課税制度の見直し、教育資金、結婚子育て資金の一括贈与の非課税制度の延長について解説しました。

特に重要なのは次の5つです。

・NISAの抜本的拡充・恒久化で、NISAがさらに充実
・生前贈与加算が3年から7年に拡大
・相続時精算課税制度にあらたに年間110万円の基礎控除が新設
・教育資金の一括贈与の非課税措置が一定の改正を経たうえで3年間延長
・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例が一定の改正を経たうえで3年間延長

資産運用や贈与など、身近な税制の改正ですので、改正点を知って制度を上手に活用してください。

本間会津子(ほんまあつこ)

本間会津子(ほんまあつこ)

税理士
2008年3月税理士登録。大学卒業後、大手税理士法人などに15年間勤務したのち2017年に独立開業。相続税の申告や対策、中小企業の税務サポートなどに従事。また「難しい税金をわかりやすく伝える」をモットーに、主に相続税や所得税確定申告をテーマとする執筆活動を行っている。
著書に「相続手続で困らないエンディングノート」(共著・ぎょうせい)などがある。

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