金利が1年ごとに上がっていく円定期plus⁺ のステップアップ型に関してよく聞かれるのが、「預け入れ期間後半のあまりに高い金利は本当にありえるのか」というご質問です。
「5%とか10%とかそんな高金利はありえない!」と思うかたも多いかと思いますので、ここで本当にありえない水準なのか、後半の金利は意味がないのか、について考えてみたいと思います。
なお、円定期plus⁺ は、一般的に繰上判定時の市場金利が、お預け入れ時に定められた本預金の金利より高い場合は預け入れが継続する可能性が高くなり、市場金利が低い場合は満期日が繰り上がる可能性が高くなります。
世界の1年金利水準
仕組み預金に使われる金利は国債金利よりも0.1%pt~0.5%pt程度高いのが通常ですが、ほぼ連動しているので、国債金利をベース(1年物)として話をすすめます(金利はすべて2024年6月3日現在です)。
日銀が3月にマイナス金利政策を解除したとはいえ、本邦金利は0.2%程度と世界的に見てもまだまだ超低金利なのですが、米国は5%近辺、ドイツも3%超、オーストラリアも4%超で推移しています。諸外国は先進国であっても経済が好調であることを背景に、かなりの高金利となっています。
また、我が国もかつてのバブル期では1年物定期預金金利が6%を超えていました。これらを勘案すると、円定期plus⁺ のステップアップ型における9~10年目の5%超の金利水準は決してありえない数字とは言えないのではないでしょうか。
新興国の金利はどうでしょうか。例えばブラジルは10%半ば、インドネシアは7%近く、トルコはなんと40%近くあります。トルコはインフレが収まらずトルコリラが暴落してしまったため、中央銀行が金利を大幅に引き上げています。悪い意味での高金利ですね。ちなみにどのくらい通貨が暴落したかというと、なんと直近10年で10分の1(2014年5月は1トルコリラ49.5円、2024年5月は同4.8円)。自国通貨が暴落すると自国金利を引き上げていかないと止めることはできないのです。
国力の弱さからの高金利
海外資産を豊富に有しており経済規模も世界第4位の我が国の場合は、トルコのように通貨が暴落するおそれは少ないかもしれません。しかしご存じの通り成長率は低く、国債残高は1,000兆円以上と世界でも稀にみる借金大国です。しかも国債の半分以上は日銀が保有していることもあり、さらに膨張していく可能性も考えられます。また資源の多くを輸入に頼っていますので、行き過ぎた円安に対する耐性も脆弱です。先進国としての経済的な強さはかつてのようにはありません。以前は輸出大国であったため、円安は国全体で見て恩恵の方が圧倒的に大きかったのですが、企業の海外移転や新興国の台頭、貿易赤字の拡大などでかつてほど恩恵を受けられなくなっています。
足元の円安傾向がさらに続いて、いわゆる「日本売り」に転じてしまうほどの水準およびトレンドとなってしまうと、輸入物価がさらに上がるため、悪いインフレが発生・継続してしまいます。そうなると日本銀行も景気が悪化するのを承知で金利を大幅に引き上げざるを得なくなるのではと言う人もいます。ちなみにかつてのオイルショック当時の日銀金利(当時は公定歩合でした)は9%をつけていました。そう考えると今後、悪い意味での高金利もまったくないとは言えないかもしれません。
「6年目以降の金利はありえない」つまり、5年物定期預金?
円定期plus⁺ のステップアップ型の金利は10年目に近づくほど、かなり高水準に設定してあることが多いです。その金利水準がありえないとお考えの場合は、その金利が適用される前に当社が償還させるだろうと推測していることになりますので、実質10年未満の定期預金とみなせることにならないでしょうか。例えば6年目以降の金利はありえないと思えば、その人にとってはその預金は5年物定期預金とみなすことができます。「10年物は長くて・・・」とお悩みであれば、ステップアップ型の金利を確認して、自分にとっては実質何年物とみなせるのかを踏まえてご検討いただければと思います。ただしこの場合、償還されると予想した年以降の市場金利が予想に反して仕組み預金の金利より高くなり、償還されなかった場合は、市場金利よりも不利な条件で継続されることになりますので、その点はご留意ください。
理論的には9年目以降も価値がある?
円定期plus⁺ の繰り上げ償還の判断は、担当者の気まぐれや主観で行われるものではありません。金融工学的観点から価値があるかないかで判断しています。組成時においてもそうです。例えば9年後の1年金利が10%である確率を計算すると0にはなりません(*)。また10%までいかなくてもそこへ近づく過程で価値が増加するので、当社は途中でその価値を市場で転売することもできます。理論的には仕組み預金の価値を0とはみなしていないです(今のところその価値は限りなく小さいですが)。
(*)スワップションというプロのマーケットで売買される商品で理論的価値を計算した場合です。
最終回をかなりの高水準にするにはリスクがある?
ただ5%、10%などの高金利を提示すればするほど、組成者である当社での金利リスクコントロールは難しくなります。ちょっと専門的になってしまいますが、募集時は理論的には価値があっても、今後今以上に金利が上昇していかないと、その価値は年を追うごとに急速に消滅してしまうため、減少しないようにリスクコントロールする必要があります。
またお客さまの側でもリスクは当然残ります。仕組み預金の適用金利がいくら高くても、市場金利がその仕組み預金の金利より高くなってしまった場合には、中途解約できずに市場金利よりも不利な条件で預入継続せざるを得なくなってしまうリスクは引き続きありますし、逆に市場金利が仕組み預金の金利より低くなってしまった場合には、その高金利を享受できずに償還となってしまうリスクもあります。
他国の例や過去の事例、理論的な価格付けからはまったくありえない水準ともいえないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。しかしながら現在の状況からすれば、やはり5%、10%という水準はありえないとお考えのかたもいるかもしれません。ですが、思い返してみてください。つい数年前までドル円は105円近辺でほとんど動かず、数年以内に50円も上昇するなんて当時はほとんど予想されていませんでしたが、足元では160円超をつけました。数年後、ましてや10年後などどうなっているかは誰にもわかりません。それでもここまでの高金利はありえないとお考えの場合は、償還時期を予想して、その年限までの定期預金と考えてのご検討はいかがでしょうか。
最後になりますが、円定期plus⁺ はお客さまから中途解約しなければ元本保証ですが、満期までの期間が長い商品でかつ、市場金利が仕組み預金の金利より高くなった場合でも、市場金利よりも不利な条件で継続されますし、中途解約時にはお客さまに損害金が発生し、元本割れする恐れがあります。ご検討いただけるかたは、余裕ある資金でのお申し込みをお願いします。