ファイナンシャルプランナーの豊田 眞弓です。
子どもの教育資金に関して、調査開始以来最高となる8割を超える親が不安を感じているという調査結果が出ています。不安の理由は何なのか、また、どうしたら軽減できるかなどについて考えてみましょう。
「子どもの教育資金に不安を感じる」83.5%は過去最高!
3月に、ソニー生命「子どもの教育資金に関する調査2024」の結果が公表されました。この調査は、大学生以下の子どもがいる20歳以上の男女を対象とする年1回のインターネットリサーチ(有効サンプル1,000名)で、調査を開始して14年目(2014~2016年は「子どもの教育資金と学資保険に関する調査」として発表)となります。
子どもの教育資金に関する調査2024(ソニー生命のページへリンクします)
今回のデータで最も驚きだったのは、過去最高となる83.5%の親が、子どもの教育資金に関して「不安を感じる」と回答したことです。前年比+8.1ポイントと、急な上昇です。異次元の少子化対策として、こども家庭庁が設けられ、子育て支援策が全方位で進められている最中でもあり、大きな衝撃でした。
子どもの就学段階別では、中高生の親が87.3%と最も高く、次が未就学児の親で86.3%でした。過去のデータでも同様の傾向が見られることから、大学等の進学をより現実の問題と意識する中高生の親は最も不安に陥りやすく、反対に、未就学児の親は、時間的にも先のことで現実味がないことから漠然とした不安を抱きやすいのではないかと考えます。
不安を解消する方法は後述しますが、しっかり教育資金の準備を行うことに尽きます。特に未就学児は、子どもの才能を見極めたいと習い事をたくさんさせたくなる親心もわかりますが、将来の大学時代の教育資金のための積立も並行してできるよう、バランスをとることも大事ですね。
(ソニー生命「子どもの教育資金に関する調査2024」、以下同)
不安の理由は「物価上昇」と「どのくらい必要となるかわからない」
子どもの教育資金に不安を感じる理由(複数回答)としては、「物価の上昇」が55.7%とダントツの高さでした(この項目は今回の調査から加えられたものです)。世界的な原材料価格の上昇や、円安が進んだことで2022年春頃より物価が急上昇しましたが、習い事費や塾代などの値上げを含む物価上昇を体感するにつけ、今後の教育費の増加への不安が強まったのでしょう。
教育資金に不安を感じる理由の2位は「教育資金がどのくらい必要となるかわからない」(35.2%)、3位は「収入の維持や増加に自信がない」(33.5%)でした。前回調査でも、「収入の維持や増加に自信がない」(41.8%)、「教育資金がどのくらい必要となるかわからない」(38.5%)が1位2位でしたので、この2つは物価上昇以外での不安の大きな要因となっているようです。
小学生から大学卒業までに必要だと思う教育資金は調査依頼最高額の1,439万円!
同調査では「子どもが小学生から社会人になるまでに、教育資金はいくらくらい必要だと思うか」という点も聞いています。未就学児の親のデータとなりますが、データを見ていただくとわかるように、「1,000万円くらい(1,000万円~1,400万円くらい)」と「2,000万円くらい(2,000万円~2,400万円くらい)」を選んだ人が多くなっています。この傾向は、小学生、中高生、大学生等(予備校生・浪人生・大学生・短期大学生・専門学校生)の親でも同じでした。
教育資金に不安を感じる理由の2位に「どのくらい必要となるかわからない」がありましたので、この回答も「これくらいでは?」という直感的なものも多く含まれるのかもしれません。
平均予想金額は1,439万円(前年比+3万円)となり、調査開始以来の最高額を2年連続で更新しています。平均予想金額の上昇にも物価上昇の影響が現れていると考えられます。
学校外教育費の月17,593円は調査開始以来最高額!
同調査では、学校外教育費についても調べています。スポーツや芸術などの習い事、家庭学習、教室学習(塾など)のそれぞれに1ヶ月あたりいくら支出しているかを聞き、それぞれの平均支出金額を合計した金額が17,593円となりました。この額は前回調査に続き、過去最高を更新しています。
就学段階別に平均支出金額の合計をみると、最もかけているのは、中高生の親で1ヶ月あたり25,675円、次が小学生の親で同18,914円、さらに、大学生等の親で同16,453円、未就学児の親で同9,218円と続きます。
前年の調査結果と比べると、大学生等と未就学児の親の平均額はやや下がっているものの、小学生と中高生の親は金額が上昇し、調査開始以来最も高い水準となっています。つまり、今回過去最高となったのは、小学生と中高生の親の平均額が伸びたことによるものと言えます。全体でも、2022年から上昇傾向が見られますが、これは、習い事や塾の料金の値上げが影響していると言えます。
子どもの教育費負担を「重いと感じる」は7割弱
もう1つ、データを見ておきましょう。「子どもの教育費の負担を重いと感じる」という状況がどの程度あてはまるのかを聞いた設問で、「非常にあてはまる(23.8%)と「ややあてはまる」(43.6%)を合わせた「あてはまる」は67.4%でした。この割合は、就学段階が上がるほど高くなる傾向があり、そのため、最も学費負担が大きいとされる大学生等の親で最も高くなっています。
実は、過去の調査結果と比較してみると、昨年から見ると微増しているものの、過去には70%を超えていた時期もあり、この割合は決して高くはないことがわかります。2010年4月には高校無償化(高等学校等就学支援金制度)が始まり、その後対象者が拡大したほか、自治体によっては独自の補助を拡大させるところもあります。2018年10月には幼児教育・保育の無償化が実現し、さらに、2019年4月には、低所得世帯等を対象に、大学等の無償化(高等教育の修学支援新制度)がスタートし、その後、対象者が拡大しています。
2019年頃から教育費負担を「重いと感じる」割合がやや減少傾向にあり、2022年には61.1%まで下がった理由としては、これらの施策の効果もあるのだろうと推察します。直近2年の上昇は、物価上昇の影響があるのではないかと考えられます。
不安を軽減するためにすべき4つのこと
ここまでデータを見てきましたが、子を持つ親の負担感は近年、軽減傾向にあったものの、物価上昇の波によって押し戻されつつあり、子どもの教育資金への不安はかつてないほど高まっています。つい最近も、東京大学が値上げを検討していると発表され、学生が抗議に立ち上がったと報じられました。インフレの傾向は今後も続くとみられるので、親にとって、今後も不安はますます高まるばかりです。
親の不安を「解消」するには、大学等の教育費が大幅に軽減または無償化されない限り難しいわけですが、それは現実的ではないでしょう。では、少しでも軽減につながる方法を考えてみましょう。4つ挙げられます。
1.まずは正しく怖がる
調査結果でも「小学生から大学卒業までに必要と思う教育資金は1,439万円」とありましたが、あくまでもこれは「かかるお金」と「かけるお金」であって、「教育資金」として貯めるべき金額ではありません。大学時代に向けて準備する金額は、これまでは自宅通学で300万~500万円、自宅外通学で500万~700万円を目標に貯めることを提案していましたが、これに物価上昇分を加味して+100万円程多めの目標額を設定しておいてはいかがでしょう。
2.とにかく教育資金の準備に着手
何もしないと不安は募るばかりですが、問題解消に近づくアクション起こして継続すれば、不安軽減に向かいます。児童手当分+αを積み立てることで教育資金のベースが作れますので(詳しくは次回お話しします)、とにかく着手しましょう。教育資金お準備は本来、子どもが誕生したらすぐに始めたいのですが、もし、これまでやってきていなかったのであれば、今からでも始めましょう。
3.物価上昇に負けないよう一部に投資も
教育資金の準備は、細く長くコツコツ積み立てが基本ですが、一部を投資信託の積み立てや変額年金等で運用することでインフレリスクに備えることも大事です。ただし、運用リスクもあるので、全体の3割以内にとどめ、運用リスクのない安全資産・安定資産の預金や財形貯蓄、学資保険などと組み合わせるといいでしょう。
4.共働きで収入を上げる
もう1つ大事なのは、世帯収入を上げることです。ダブルインカムは強いですし、自分の老後の年金を増やす意味でも、「扶養の範囲」などと言っていないで、フルタイムで働いてはいかがでしょう。インフレが長期化するかもしれない中、世帯収入が増えていかない限り、生活は圧迫されます。それこそ不安の種になります。
まとめ
親としては、どのような状況でも、子どもが学びたいことを学べる準備をしておいてあげたいものです。長く続いたデフレからインフレに転換となり、急な環境の変化で戸惑うばかりですが、あとで後悔することがないよう、しっかり教育資金の準備に着手をしておきましょう。不安は放置しないことが大事ですね!
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
FPラウンジ代表。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。
マネー誌や女性誌等のライターを経て、94年より独立系FP。マネーコラム執筆・監修、相談業務、講演・研修などで活動中。ライフワークとして、長年、子どもの金融経済教育に携わり、子どもマネー総合研究会会長のほか、亜細亜大学ほかで非常勤講師も務める。
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