「クラウドファンディング」(Crowdfunding)とは、群衆「クラウド(Crowd)」から資金を調達する「ファンディング(Funding)」といった意味の造語です。
社会的な課題解決や商品・サービスの開発などに必要な資金調達のあらたな手段として、徐々に大きな市場を作りつつあります。
本稿では、クラウドファンディング(以下、CF)の概要とその魅力について触れていきます。
クラウドファンディングとは?
CFは資金を必要とする企業や個人(起案者)が、運営業者(クラウドファンディング事業者)を介して応援者を募るしくみです。インターネットによる情報発信により、起案者はスピーディな資金調達が可能となりました。また、応援者にとっても関心の高い案件を見つけやすくなり、出資できるようになった点が魅力です。そして、起案者と応援者をつなぐキーワードは「共感」です。
支援:案件に対して応援者が出資
資金:起案者の募集案件に対して提供
出資募集:運営業者に対して資金調達案件の申請
リターン;応援者に対してお礼・商品・金銭などを提供。CFの型により異なる
CFは、大きく「購入型」「寄付型」「投資型」の3つに分類されます。
1 購入型
3つのパターンの中で、最も案件数が多いのは「購入型」です。出資額に応じて、モノやサービスをリターンとして受け取ります。「こんなモノを作ってみたい」「こういったサービスが欲しい」といった斬新な考えを持つ起案者に対し、出資という形で応援します。
金融商品取引法の規制対象から外れ、起案のしやすさが案件数の増加につながっていると考えられます。
応援者は、まだ世の中にないユニークなサービスの開発を支援できる親近感や、開発の進捗をゲーム感覚で追うことができるといった楽しさから、「購入型」を始めるケースが多いようです。
ただし、起案のしやすさは案件の脆弱さとつながる部分もあります。計画の遅延、資金の不足など、掲げた目標を達成できないこともあり得ます。リターンはおろか、サービスが未完成のまま出資金が戻ってこない場合もあるので要注意です。出資はリターンが約束されるものではない点はリスクとして、すべてのパターンに共通します。
2 寄付型
「寄付型」は、CFの中でも応援者の「共感」が最も色濃く反映されていると言えます。リターンに期待せず、純粋に応援するものです。寄付文化が定着していない我が国では、市場としてはまだ大きくはありませんが、税制上の優遇措置などにより今後、徐々に浸透していくと思われます。
税制上の優遇措置は寄付金控除という制度で、ある一定の要件を満たした法人や団体に寄付を行うことで所得控除を受けられるものです。広く「ふるさと納税」もそのひとつ。ただし、すべての寄付が対象となるものではありません。
3 投資型
「購入型」「寄付型」と一線を画すのが、「投資型」です。共感や応援といった共通項はあるものの、リターンを目的とした資産運用がメインとなります。CFの市場規模では最も大きなパターンです。
「投資型」は次の3つに分かれます。
3-1 融資型
『融資型』は、ソーシャルレンディングとも呼ばれています。資金の貸し付けです。応援者は融資者となり、お金を貸すことで、予定された金利を得るといった流れです。
他のCF同様、運営業者がとりまとめ、融資先の選定や金利の設定などを行います。融資先の細かな情報等を融資者は知ることができないケースもあります。そのため、運営業者の信頼度が重要になります。
融資先の経営状況の悪化や貸し倒れ、運営業者の倒産などがリスクになります。
3-2 株式型
『株式型』は、非上場企業の株式に出資するパターンです。よって、当該企業がM&Aもしくは上場できるか否かがリターンを得るために重要となります。
平成30年までは、グリーンシートと呼ばれる非上場企業の株式などを売買する制度が存在していました。今は、それに代わるものと言えるかもしれません。
IPOやM&Aにより莫大な収益を得られる可能性がある反面、成長途上の企業が対象となるため、体力が持たず経営破綻する可能性もあります。その意味では、ハイリスク、ハイリターンなパターンと言えます。このリスクを極力排除すべく、日本証券業協会により調達額、出資額それぞれに制限が設けられています。
3-3 ファンド型
投資経験者にとって、『ファンド型』は最も身近に感じられるパターンではないでしょうか。資金調達者である起案者がファンドを組成し、運営業者を通じて小口出資を募ります。リターンは事業の成果に応じた分配金です。分配金以外に、サービスやモノを受け取れる案件も多数あります。
運営業者が選定した案件の中から、出資対象を選定し応援する点では「購入型」にも似ています。一方、分配金といった金銭によるリターンは、『融資型』『株式型』にも通じます。応援と金銭によるリターンを一挙に味わえる魅力的なCFと言えます。
ただし、分配金は事業成果によるもので、約束されたものではありません。元本割れが発生する可能性もあります。
共感・応援の熱量と、資産運用としての収益性バランスを鑑み、最適な案件を見つけるのが大切です。
以上が、「投資型」になります。
リスクヘッジとしては、ひとつの案件のみに集中して投資するのではなく、複数商品への分散が重要です。CF案件のみの分散ではなく、株式や投資信託など他の金融商品を運用している場合には、それ自体がすでに分散投資と言えるのかもしれません。資産運用を重視してCFを選ぶ際には、気を付けましょう。
実際にクラウドファンディングを行うための手順・手続きについて
以下、『ファンド型』CFに出資する場合の一例です。
1
運営業者にて口座を開設します。金融機関での口座開設手順とほぼ同様です。
運営業者の選定は、信頼度(経営規模や実績など)や、案件に対する審査の厳格さなどから選ぶのがよいでしょう。また、過去に行政処分を受けていないかなども目を通しておくべきです。
2
案件の中から出資したいファンドを選び、入金(申し込み)します。
3
案件成立条件が満たされた場合(資金調達者が予定していた資金を調達できたなど)、応援者と運営業者は契約成立となり運用が開始されます。
CFは、今までになかった新しいしくみです。
資金を調達したい起案者と、共感し応援したい応援者とをつなぐ出入口でもあります。かつてないライブ感あふれる投資に、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
文責:森和哉
プロフィール
森和哉
プロフィール
森和哉
金融デザイン株式会社シニアディレクター 。二級ファイナンシャルプランニング技能士。教育工学修士。
大学卒業後、教育系出版社、教育関連企業、外資フィットネス企業執行役員を経て、2021年よりフリーに転身。投資教育プログラムの開発をはじめ、多岐にわたるプログラム開発に携わる。会社員のかたわら、日本イーラーニングコンソシアム認定eラーニングコンサルタントとして、eラーニング企業の客員研究員を務めた経験をもつ。現在の主なフィールドは、教育プログラムのデザイン、編集、ライティング。
編集部コメント
ソニー銀行には投資型クラウドファンディングの Sony Bank GATE があります。新しい事業に挑戦する企業の成長を応援しながら資産運用できる新しい商品です。挑戦企業に応援コメントを送ることもできます。募集中のファンドの中から、共感したり、応援したいと思う企業があったら、投資してみてはいかがでしょうか。
詳しくは Sony Bank GATE のページをご覧ください。