2023年12月8日(金)、日本時間22時30分に米国で11月雇用統計が発表されます。
今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。
今月の注目ポイント
「結果を受けた、米利下げの開始時期・回数への思惑に注意」
ソニーフィナンシャルグループ シニアアナリスト 石川 久美子
11月のドル円相場は一時152円に迫ったものの、上値の重い様子が見られています。これは、米国の追加利上げ観測が急速に後退したためです。11月1日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明および米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見の内容がハト派的な内容であったと市場で受け止められたうえ、3日の米10月雇用統計、14日の米10月消費者物価指数(CPI)の結果が市場予想よりも弱いものとなる中、「インフレが減速し、追加利上げ不要になるのでは」との観測が広がり、これがドルの重石となりました。
ただし、日本の金融政策が緩和的なまま当面は維持される、と見方が根強い中では円売り圧力も根強く、ドル円は高値圏での推移が続いています。
そうした中で迎える11月雇用統計、焦点は引き続き賃金になります。インフレが継続的に減速していくためには、労働需給に一段の緩みが見られる必要があります。非農業部門雇用者数や失業率のみならず、労働参加率、平均時給などが市場予想以上よりも弱く、前の月よりも弱くなっているかどうかを確認したいところです。
ただし、本稿執筆時点の市場では、来年半ばにも利下げを開始し、年末までに少なくとも3回、多い場合は4回(1回25%ポイントで換算)もの利下げを予想している状態です。一方、9月時点にFOMCメンバーの出した政策金利予想のうち、最も弱気なメンバーでも、来年の利下げ回数予想は2回。市場の見方が先行きについてやや弱気に傾いていることを考慮すると、市場予想よりも強めの結果が出た場合は見通しの修正を絡めてドル買いが強めに出る可能性がある点には注意が必要です。
プロフィール
石川 久美子
プロフィール
石川 久美子
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から同社研究員として、外国為替相場について調査・分析を行う。2016年11月より現職。外国為替市場に関するレポート執筆の他、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」など多数のテレビやラジオ番組に出演し、金融市場の解説を行う。また、SNSの情報発信なども行っている。資源国・新興国通貨に強い。
米国雇用統計の主な指標の実績と予想
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2023年12月 | +20.2万人 | ||
2023年11月 | +19.0万人 | +15.0万人 | |
2023年10月 | +16.6万人 | +33.6万人 | +29.7万人 |
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2023年12月 | 3.9% | ||
2023年11月 | 3.8% | 3.9% | |
2023年10月 | 3.7% | 3.8% | 3.8% |
出所:時事通信社(2023年12月1日(金)時点)
米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢をみる十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。
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過去の記事はこちら
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年11月3日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年10月6日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年9月1日発表分)