2023年11月3日(金)、日本時間21時30分に米国で10月雇用統計が発表されます。
今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。
今月の注目ポイント
「10月の米雇用統計は賃金動向がカギ」
ソニーフィナンシャルグループ シニアアナリスト 尾河 眞樹
前回9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比33.6万人増と、市場予想(同17万人)を大きく上回ったものの、全体としては年内の追加利上げを確実なものとするには至りませんでした。平均時給も前月比0.2%増と市場予想(同0.3%)を割り、前年比でも4.2%増と、8月の同4.3%から低下。2021年6月以来の低水準となりました。
今回は、雇用の増加幅や失業率は勿論のこと、賃金上昇率に一段と注目が集まると思われます。米10年債利回りが、4.9%に近づくような環境となり、金融環境が引き締まっているとの懸念からか、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーからは、追加利上げに対して懐疑的なコメントが目立つようになりました。
実際、9月の消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコア指数が前年比4.1%と、8月の同4.3%からやや減速したうえ、パウエル議長も注目する家賃を除くサービス価格の上昇率、所謂「スーパーコア」も、前年比3.91%と、8月の同4.05%から大幅に減速しました。こうした点から、市場参加者の間では追加利上げ観測が高まりにくく、短期金利の先物市場では、年内の追加利上げが3割程度しか織り込まれていません。
9月の雇用統計で、上述した賃金などが仮に強い場合にはむしろサプライズとなり、利上げ観測の高まりからドルがもう一段上昇する可能性があるので注意が必要でしょう。なお、足下のドル高・円安は、米国経済の予想外の強さと日米実質金利差の拡大で説明ができますが、為替は必ずしも金利差のみで動くわけではありません。米下院にみられる政治の分断、混乱や、9月末に可決したつなぎ予算の行方次第では、ドルと米国債に対する信認が低下しドル安に繋がる可能性もあるでしょう。さらに中東情勢の緊迫化や来年の米大統領選がドルの波乱要因となりそうですので、地政学要因にも一層注目していきたいところです。
プロフィール
尾河 眞樹
プロフィール
尾河 眞樹
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン・チェース銀行などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職。
米国雇用統計の主な指標の実績と予想
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2023年11月 | +17.5万人 | ||
2023年10月 | +16.6万人 | +33.6万人 | |
2023年9月 | +16.5万人 | +18.7万人 | +22.7万人 |
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2023年11月 | 3.8% | ||
2023年10月 | 3.7% | 3.8% | |
2023年9月 | 3.6% | 3.8% | 3.8% |
出所:時事通信社(2023年10月27日(金)時点)
米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢をみる十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。
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過去の記事はこちら
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年10月6日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年9月1日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年8月4日発表分)