「2024年から新NISAが始まる」そんなニュースをさまざまなメディアで目にする機会が増えてきました。これまで資産運用に全く興味がなかったという人の中にも、気になっているかたが少なくないかもしれませんね。
そもそもこの新NISAとは、どんな制度なのでしょう?NISAは愛称であり、正式名称は「少額投資非課税制度」。ごく簡単に言えば、資産運用で得た利益が非課税になる制度のことです。
もっとも、NISA自体は2014年にスタートしています。それが今になって、なぜこれだけ大きな話題になっているのかといえば、中身が大幅に拡充され、2024年からはより「おトクな」制度に生まれ変わるから。それがまさに新NISAです。
資産運用が非課税でできる時代になった!?
今回の変更点で最大のメリットは次のふたつ。ひとつは、これまで利用できる期間に制限があったのが恒久化されたこと。ふたつ目は、非課税となる投資金額の枠が拡大されたことです。
恒久化によって一生涯を通して使える制度となり、拡大された投資額の上限は従来の3倍の年間360万円、トータルでは1,800万円となりました。この1,800万円という金額を考えると、ほとんどの人が資産運用を非課税でできるようになったとすらいえるのかもしれません。
これほど「おトクな」制度になったわけですから、大きな話題になるのも当然のこと。しかも、近年はコロナウイルスの影響もあって将来への不安が高まり、さらには2019年のいわゆる「老後2,000万円問題」も影響し、資産運用を始める人が飛躍的に増加していました。新NISAはそうした傾向に、さらに拍車を掛けるのではないでしょうか。
けれども、どんなに有利な制度が用意されても、一方で資産運用には「なかなか踏み出せない」という人が多いのも事実。新NISAなど資産運用に関するニュースに対しても、ネットのコメント欄には驚くほど否定的な意見があったりします。例えば、「投資は素人が手を出すものではない」とか、あるいは、最近の日本の「貯蓄から投資へ」を促進する風潮もあってか、「だまされてはいけない」といったコメントも散見されます。
老後の生活資金は年金だけでは賄えない
それでは、資産運用はそんなに特別なもので、必要ないものなのか、改めてその必要性を考えてみましょう。
今多くの人が老後の生活への不安を抱えているはずですが、一昔前のように年金だけでゆとりある生活ができないのは明らかです。少子高齢化が進展する日本において、残念ながらその状況が改善する見込みも低いといわざるを得ないでしょう。前述の「老後2,000万円問題」にしても、本来は必要な金額は人によって違うはずが、2,000万円という金額が独り歩きしたために「炎上」してしまったものの、老後の生活資金を年金だけで賄えないという指摘はやはり否定できません。
もちろん、「年金制度はいずれ崩壊する」などといった極端な意見を信じ、過度に不安になってしまうのも考えものです。それでも、十分な収入があって資産を蓄えられるという人以外は、運用しながら少しずつ資産を増やしていくという選択肢も必要になるのでしょう。
「老後は誰もが一人の投資家になる」の意味
私たちがお金を「稼ぐ」手段は、実はふたつしかありません。それは、「働く」か「資産運用をする」か。作家の橘玲さんは『雨の降る日曜は幸福について考えよう』(幻冬舎)の中で、「老後は誰もが一人の投資家になる」と書いています。つまり、いずれ働けなくなるときが来れば、年金と資産運用以外にお金を得る手段はなくなり、それは「投資家になる」と言い換えられるということです。
しかも、私たちが納めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかった分は積み立てられ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通して株式や債券などに投資されています。間接的にではあっても、私たちはすでに投資家であるとすらいっていいのかもしれません。ですから、資産運用というのは特別でもなんでもなく、ごく当たり前のものなのです。
いずれは「誰もが投資家になる」のであれば、資産運用はなるべく早く始めた方がいいでしょう。最近も金融詐欺の被害はあとを絶ちませんが、その中には、ある程度の金融リテラシーを持っている人からすれば、信じられないようなケースも少なくありません。しかし、例えば退職金をもらって初めて資産運用に挑戦した人などが、そうした詐欺にコロッとだまされてしまう。早くから資産運用を始めていれば、明らかな詐欺にだまされたりもしないはずで、今や金融知識は生活に不可欠なものになっています。
さらに、資産運用において最も大切な原則のひとつが、「時間を味方につける」です。これは長く運用すればするほどリスクも軽減され、リターンも大きくなる可能性が高いという意味で、だからこそ、「早く始めて長く運用する」ことが重要になるのです。
その点、間もなく新NISAが始まる今が、資産運用への第一歩を踏み出す絶好の機会であるのは間違いありません。