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老後資金作りに向けて取るべきアクションは?

ファイナンシャルプランナーの深田晶恵です。
前編では、「60歳以降のお金の変化」についてお伝えしました。後編では、老後資金作りに向けて「取るべきアクション」を見ていきましょう。

「老後のお金の不安」は、お化け屋敷のお化けと同じ。カラクリがわかれば怖くありません。

支出を「年間で見える化」する

「老後」が気になりだしたら、最初にすべきは今の家計の「見える化」です。
現状の支出を把握しなければ、老後生活の予測をすることはできないからです。

コツは「年間」を通じた決算をすることです。通帳とクレジットカードの利用明細書があれば、家計簿をつけていなくても支出の年間決算は可能ですから安心してください。

年間決算書の例

項目 毎月 年数回 年間合計

支出

生活費 18万円 216万円
住居費 12万円 15万円 159万円
クルマの維持費 2万円 15万円 39万円
生命保険料 4万円 48万円
交際費・余暇費 6万円 40万円 112万円
その他の支出 30万円 30万円
A 支出合計額 42万円 100万円 604万円
収入 B 手取り収入 45万円 120万円 660万円
収支 B―A 収支 3万円 20万円 +56万円

上記例ですと、手取りで660万円は、額面だと年収880万円。これだけの年収で、年間56万円は少なすぎです。支出の見直しはマストです。

通帳を見れば、通信費や保険料など口座引き落としの支出がわかりますね。現金を引き出した分は、費目を「生活費の現金支出」とします。ここでは現金を何に使ったのかは不問とします。決算をやり遂げることを目標とします。

クレジットカードの利用明細書は、費目ごとにマーカーペンで色分けするといいでしょう。私はネットショッピングで購入するワイン代金をピンクのマーカーペンで分類し、合計金額を出しています。使い過ぎて大反省する月も...。

クレジットカードは、請求金額の合計だけチェックするのではなく、使い過ぎている支出を振り返り、見逃さないようにするのが肝心です。先のワイン代のように「気になる支出」は独立させて、毎月合計額をチェックするのも一法ですね。

決算する際、「毎月支出」と「年数回の支出」を分けることもポイントのひとつです。
住居費を例に取りましょう。住宅ローン返済額と管理費は「毎月支出」で、固定資産税は「年数回の支出」です。サラリーマンは一般的に「毎月支出」は給料から、「年数回の支出」をボーナスから支出しています。

年金生活ではボーナスがありません。現状でどの程度ボーナスに頼った支出があるのかを現役時代から知っておくことも大切なことです。

固定費とは「携帯電話料金」と「保険料」

では、毎月の支出の見直しポイントは何でしょう。まず固定費から見直すのが王道のやり方です。なぜなら、一度見直しを済ませると、翌月から支出が減った分を貯蓄や投資に回すことができるからです。

代表的な固定費は、携帯電話料金と保険料のふたつ。面倒でもこのふたつの見直しに取り組むと、月数万円の支出がカットできますから、先延ばしにせずに着手しましょう。

携帯電話料金は、大手キャリアのオンライン専用プランやサブブランドに契約を変更すると、毎月3,000~4,000円安くなることも。家族全員で見直すと、数万円にもなります。

死亡保障型の生命保険は、子どもが社会人になったら保障額を減らしたり、保険を解約するなど見直しをするのもおすすめです。インターネット通販の保険や、勤務先のグループ保険は、保険料が割安なので、それらを利用するのも一法です。

次に医療保障です。多くの人が「病気に備えるには医療保険」と考えていますが、最近は状況が変わってきています。

民間医療保険は、原則として入院または手術をしたときに給付金を受け取れるものです。しかし、厚生労働省の患者調査を見ると、入院日数は年々減り続けています。最新の調査結果では、全体の80%以上が30日以内に退院しています。

背景には、国が医療費削減を目的とする「入院短期化」の政策を取っていることと、医療技術の進歩により入院せずに外来でできる治療が増えていることがあります。

代表的なものは、がん治療でしょう。手術は入院が伴いますが、抗がん剤投与や放射線は外来できる治療となりました。がんに罹患し、外来で抗がん剤と放射線の治療を受けると、それにかかる治療費は医療保険ではカバーできず、貯蓄や毎月の収入から捻出することになります。

病気に備えるには、健康保険の「高額療養費制度」が最も頼りになります。
窓口でいったん3割を負担しても、高額療養費制度により所得に応じた限度額の超過分は後日払い戻しが受けられます。一般的な所得の人なら、1ヶ月の自己負担は9万円前後で済みます。つまり、医療費の自己負担は青天井でかかるわけではなく、一定の限度額が設けられているということです。

「病気の備えは医療保険」と思い込まずに、まずは高額療養費制度を活用し、自己負担分は毎月の収入や貯蓄をベースとする考え方を持ちましょう。

食品・日用品の支出管理は Sony Bank WALLET が便利

支出コントロールが難しいのは、変動費です。特に食費や日用品費のように支出の頻度が高く、「今月はいくら使ったのか」「今月はあといくら使ってもいいのか」を把握しにくいものです。毎日のように支出する項目は、予算を決めて、その範囲内に収めることができると、家計管理のストレスから解放されます。

私はコロナ禍で少額でのキャッシュレス決済が進んだ頃から、食品・日用品は Sony Bank WALLET で支払うようにしました。1ヶ月の予算額を決めて、月末に入金し、次の入金日まで予算内の金額でやりくりする方法です。

例えば、1ヶ月の予算を10万円として、残高不足は困るので最初は多めに20万円を入金しました。私の中では「10万円が残高ゼロ」ということです。次の月末に残高が10万円を下回ったら予算以上に使っている、反対に残高が12万円なら支出は8万円だったので予算内でやりくりできたことになります。

私の場合は、Sony Bank WALLET の円普通預金口座を「食品・日用品専用」として使っているので、管理がしやすいです。アプリで残高をチェックできるので、使った金額を自ら計算しなくても「今月あといくら使えるか」を瞬時に把握することができます。本当に便利ですよ。

キャッシュレス決済を導入していないお店もあるので、家計のお財布には1万円くらい現金も入れてあります。デビットカードを持っていない家族が買い物をしたときにはこの現金で精算するといいですね。

QRコード決済でも、1ヶ月に1回入金して予算内に収めるようにすれば同じように管理できるかもしれないですが、QRコード決済を導入していないお店もあるので、デビットカードの方が予算管理をしやすいように思います。

キャッシュレス決済を上手に使いこなすには、目的に応じて決済手段を決めることです。例えば、食費・日用品にはデビットカード、旅行代金や洋服代などはクレジットカード、日々のコンビニでの支払いは交通系ICカードなどといった具合にグループ分けをするといいでしょう。一番良くないのは、「何に使ったのかわからない支出」が増えることです。

家計管理は自分なりに工夫したマイルールが見つかると、楽しくなります。固定費の見直しも含めて、ぜひ取り組んでみてください。


深田晶恵(ふかたあきえ)

深田晶恵(ふかたあきえ)

株式会社生活設計塾クルー取締役。
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)
FP歴は28年。同じオフィスのFP6人で、金融商品・保険商品の販売をしないことをモットーとする独立系FP会社「生活設計塾クルー」を2002年に立ち上げ、個人向けのコンサルティングを行うほか、新聞・雑誌などメディアや、講演等でマネー情報を発信する。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。ダイヤモンドオンラインなどでマネーコラムを連載中。
生活設計塾クルー(生活設計塾クルーのページへリンクします)

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