こんにちは、ソニー銀行の溝辺です。
今回は、ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ(以下、ジャナス)のフィリップ・ウッドさんへの「クライアント・ポートフォリオ・マネージャーインタビュー後編」をお届けいたします。
溝辺:これまで、「趣味」や「ご経歴」、「クライアント・ポートフォリオ・マネージャーの業務内容」などについておうかがいしましたが、インタビュー後半では「拠点をデンバーに置いている理由」や「高いパフォーマンスをあげる秘訣」などを語っていただきます。
デンバーに運用拠点を設けた理由
溝辺:運用拠点のコロラド州デンバーとは、どのようなところですか?
フィリップさん:デンバーは米国中西部にあるコロラド州の州都です。標高が高いことで知られており、公式には標高1マイル(1,609m)。「マイル・ハイ・シティ(Mile-High City)」の愛称で親しまれています。近年はハイテク系、バイオテクノロジー系のベンチャー企業や研究所が増え、「シリコンマウンテン」とも呼ばれています。
溝辺:デンバーは「住みやすい都市」としても注目されていますね。
フィリップさん:そうなんです。さまざまなランキングや時事解説で有名な雑誌、USニューズで「全米で住みやすい都市」の2位にランクインしています。近隣の大都市であるシカゴやサンフランシスコなどと比べ、デンバーは土地や住宅関連費が安いうえ、年間365日のうち300日が晴天と気候が穏やかです。
さらに、野球のMLB、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHL、フットボールのNFLの米国4大メジャー・スポーツのチームが本拠地を構えており、1年中、スポーツ観戦を楽しむことができます。
溝辺:そのデンバーにジャナスが運用拠点を設けた理由を教えていただけますか?
当社がウォール街のあるニューヨークから離れた場所に運用拠点を設けているのには、理由があります。それは、ニューヨークやサンフランシスコなどの運用会社が集中する都市から距離を置くことで、多数派の意見に左右されることなく、他社と一線を画した独自の投資アイデアを追求することができると考えているからです。
徹底した企業調査を可能にする独自の環境
溝辺:ジャナスが考える上昇しそうな銘柄を見つける方法を教えていただけますか?
フィリップさん:徹底した企業調査です。当社では、他社ではそこまでしないだろうと思われるくらいの徹底した企業調査を行っています。
業界動向などの調査・分析は調査対象が非常に幅広く、時間と手間がかかるため、一般的な運用会社は、証券会社などの外部のアナリストによる情報収集・分析に頼る傾向があります。
当社は企業調査に関してアナリストの調査活動をサポートする独自のリサーチ・サポート・チームがあり、業界動向に関する200以上の調査プロジェクトを継続的に実施しています。
溝辺:アナリストが最大限の力を発揮できる環境が整備されていますね。
フィリップさん:はい。リサーチ・サポート・チームが草の根レベルの調査を通じて得た業界情報が提供されるため、アナリストはより詳細な企業調査・分析に専念することができます。
また、一般的な運用会社では珍しいことなのですが、株式と債券のアナリストが協働で企業調査を行うことがあります。協働することで、企業を資本面、債務面から多角的に分析することができるため、銘柄分析の精度がより一層高まるのです。
日本の不動産市場のへの期待
溝辺:日本企業への投資について、ジャナス・セレクションではどのように考えておられますか?
フィリップさん:ジャナス・セレクションの中では、グローバル・リアルエステート・ファンドが日本企業に投資しています。世界的にネット販売の拡大などの影響で、物流施設への需要が高まっていることから、日本でもこうした施設を保有・運営する企業は成長が期待できると見ています。
また、日本では長らく低金利の環境が続いているうえ、マイナス金利政策が導入されているため、高い金利を期待することは困難です。そこで、相対的に高い配当利回りが期待できるREIT市場の魅力も高まっていると見ています。
今後注目する投資テーマ
溝辺:今後注目する投資テーマはありますか?
フィリップさん:当社はテクノロジー分野の企業調査で豊富な経験があり、ジャナス・セレクションでもさまざまなハイテク企業に投資していますが、人工知能(AI)の活用が多くの分野で広がっていることは、有望な投資機会につながる可能性が高いと見ています。サービス型ソフトウェア(SaaS)は過去10年ほどで急速に普及しましたが、同様の動きが人工知能(AI)の活用でも見られると考えます。
ジャナス・セレクションの紹介とファンドの選び方
溝辺:ジャナス・セレクションについてご紹介していただけますか。
フィリップさん:ジャナス・セレクションは、日本の投資家の皆さまがお手持ちの米ドル預金をそのまま投資できる外国籍投資信託で、6つのサブファンドから構成されています。
米国の幅広い債券に投資する、ジャナス・フレキシブル・インカム・ファンド
米国の高利回り債券に投資する、ジャナス・ハイイールド・ファンド
米国株式と債券に資産配分を調整しながら投資する、ジャナス・バランス・ファンド
米国の割安株に投資する、ジャナス・ストラテジック・バリュー・ファンド
米国の成長株に集中投資する、ジャナス・フォーティ・ファンド
世界の不動産投資信託(REIT)および不動産関連株式に投資する、ジャナス・グローバル・リアルエステート・ファンド
の6種類です。
日本では2001年11月に販売が開始され、約18年間の運用実績があります。 20年近い運用実績がある外国籍投資信託は、日本国内ではあまりないのではないでしょうか。
溝辺:ジャナス・セレクションのファンドを選ぶ際に、最も重視すべきポイントはなんでしょうか?
フィリップさん:一番重要なことはお客さまがどの程度のリスクなら取ってもよいと考えているかです。安定的なリターンを望むのであれば、債券型のフレキシブル・インカム・ファンド、ハイイールド・ファンドあるいはバランス型のバランス・ファンドが適しているでしょう。多少リスクをとっても高いリターンを望むのであれば、株式型のストラテジック・バリュー・ファンド、フォーティ・ファンド、グローバル・リアルエステート・ファンドが候補になると思います。
米国人が投資に積極的なのには、理由がある?
溝辺:個人投資家の日本と米国における投資行動の違いを生むものはなんでしょうか?
フィリップさん:日本の投資信託市場は拡大傾向にあると聞いていますが、米国に比べると日本の個人投資家による投資信託の活用はまだ十分ではないようですね。 米国の投資信託の市場規模は約23兆ドル超と日本の12倍以上ですが(2019年6月末時点)、米国人が投資信託を積極的に活用しているのには、理由があると思います。
日本では株式型ファンドの人気が高いそうですが、米国の投資信託市場でも残高が最も多いのは株式型ファンドです。しかし、それぞれの投資先である日米の株式市場がこの数十年で辿ってきた道は、だいぶ違いますよね。
皆さまご存知の通り、日経平均株価は1989年末に史上最高値の3万8915円(終値ベース)を付けた後に急落しましたが、2019年10月末時点で、配当込みで換算しても1989年末を10%以上も下回っています。 一方、同じ期間の米国株式市場はどうだったかと言うと、S&P500種株価指数は1989年12月末~2019年10月末の約30年間のリターンは、1500%を超えているんです。 つまり、この期間に1万円相当のお金を投資した場合、日本株への投資では約8,700円に減ってしまったのに対し、米国株への投資では16万円超に増えたことになります。
溝辺:日本人が投資に消極的な理由にも頷けますね。
フィリップさん:約30年の間には、米国株式市場もITバブルの崩壊やリーマンショックといった大きな金融危機による下落を経験しましたが、その都度、力強く回復しました。 その結果、米国人は「市場が下落しても、投資を続けることで成果が得られる」という成功体験を獲得したため、さらに投資しようという意欲につながっているのではないでしょうか。 米国経済は今なお成長が続いています。米国は先進国の中で人口が増え続けている数少ない国であり、ハイテク産業やバイオ医薬品、エンターテインメントなど幅広い分野で世界をリードしています。 米国経済の成長の恩恵を享受する手段として米ドル建ての投資信託を活用することで、米国人が経験してきた投資の醍醐味を、日本人の投資家の皆さまが経験する機会になれば、素晴らしいと思います。
投資家の皆さまへメッセージをお願いします。
フィリップさん:ジャナス・セレクションが日本に上陸してから、今年で18年になります。 この間、経済的には良くも悪くもさまざまな歴史的出来事がありましたが、幸いにもジャナス・セレクションは設定以来、6ファンドすべてが良好なリターンを達成してきたのではないかと自負しております。ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの運用に期待を寄せて下さり、大切な資金を預けていただいている日本のお客さまのために、これからもしっかりと運用して行きたいと考えています。
【終わりに】
クライアント・ポートフォリオ・マネージャーとして、世界各国を飛び回る多忙なフィリップさんへのインタビューからは、家族への強い愛情と自然豊かなデンバーへの熱い想いが、ひしひしと伝わってきました。 その中でも特に、お子さまに対する「彼女たちが夢をかなえるためのサポートをしたい」という言葉に強く心をうたれました。 私も同じ一人の父親として、「人の夢を応援できることの素晴らしさ」について改めて気付かされる大変良い機会となりました。
また、徹底した企業調査を実現するしくみや、運用拠点の選定背景など、高いパフォーマンスをあげるファンドの裏側には、熟考された独自戦略が隠されていることを知り、感銘を受けました。 フィリップさんの「米国人が経験してきた投資の醍醐味を、日本人の投資家の皆さまが経験する機会になれば」というメッセージ。心に響いたかたも多いのではないでしょうか。
ソニー銀行 溝辺