2022年10月7日(金)、日本時間21時30分に米国で10月雇用統計が発表されます。
今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。
今月の注目ポイント
「労働市場からインフレの動向を探る」
ソニーフィナンシャルグループ シニアアナリスト 石川 久美子
足下、ドル円相場は波乱の展開となっています。9月20から21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、3会合連続の0.75%利上げを発表。メンバーの政策金利の見通し中央値は2022年末に4.375%(6月:3.38%)、2023年末に4.625%(同:3.750%)、2024年末に3.875%(同:3.375%)と、上方修正となりました。
インフレ見通しも上方修正された他、声明でも積極的にインフレを抑制するとの姿勢が表明されており、初動のドルは上昇。ただ、その後に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が記者会見で「労働市場がある程度鈍化する可能性はかなり高い」「住宅市場は調整局面を通過する必要があるだろう」「無傷でインフレ退治する方法はない」などと発言。米国の金融政策運営においては、これまでの利上げによって労働市場と住宅市場の過熱感が鎮静化し、米国のインフレの強力な牽引役となっている家賃とその他サービス(≒賃金)の伸びに落ち着きが見られるかどうかがカギとなるでしょう。
賃金を抑制するためには、失業率の上昇がポイントとなってくると考えられます。失業率は7月に3.5%、8月に3.6%と低水準での推移が続いています。今回の雇用統計においては、失業率の上昇が見られるか、また平均賃金の伸びが抑制されてくるかが特に注目されそうです。失業率の上昇は直接的には米経済の悪化が意識されるため、仮に市場予想以上に上昇すれば、(他の項目との兼ね合いもありますが)発表直後はドル売りで反応する可能性があります。ただし、インフレ抑制への期待が市場に広がればドルの下げ幅は限られ、その後底堅い推移になると見ています。
プロフィール
石川 久美子
プロフィール
石川 久美子
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から同社研究員として、外国為替相場について調査・分析を行う。2016年11月より現職。
米国雇用統計の主な指標の実績と予想
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2022年10月 | +24.9万人 | ||
2022年9月 | +30.0万人 | +31.5万人 | |
2022年8月 | +25.0万人 | +52.8万人 | +52.6万人 |
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2022年10月 | 3.7% | ||
2022年9月 | 3.5% | 3.7% | |
2022年8月 | 3.6% | 3.5% | 3.5% |
出所:時事通信社(2022年9月30日(金)時点)
米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢をみる十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。
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過去の記事はこちら
米雇用統計・今月の注目ポイント(2022年9月2日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2022年8月5日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2022年7月8日発表分)