2023年3月10日(金)、日本時間22時30分に米国で2月雇用統計が発表されます。
今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。
今月の注目ポイント
「2月の米雇用統計は、米金融政策の今後を占う重要なイベント」
ソニーフィナンシャルグループ チーフアナリスト 尾河 眞樹
2023年2月の米雇用統計は、市場参加者の注目度が非常に高い。 背景としては、1月の米雇用統計が予想外に強かったことや米インフレも市場予想を上回ったことなどが挙げられよう。 以降、 米連邦公開市場委員会(FOMC) メンバーからもこれまでよりタカ派的な発言が相次いだため、市場では米政策金利見通しが徐々に上方修正されてきた。利上げの最終地点(ターミナルレート)の市場予想は5.3%付近まで上昇。年内利下げの織り込みは1回弱まで減少し、この間米10年債利回りは3.9%台まで上昇した。
3月21、22日のFOMCは、メンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)や経済見通しが公表されるため、今後の米金融政策の方向性が示される重要なイベントだが、今回の米雇用統計は、同FOMCを前に米国の雇用情勢を確認できるラストチャンスでもある。
前回1月の雇用統計では、 非農業部門雇用者数が前月比51万7,000人増、失業率は3.4%と、53年ぶりの低水準をつけるなど、サプライズの好結果だった。 2月はさすがに同水準からそれぞれ悪化するとみているが、2月1日に公表された12月のJOLTS 求人件数も、 11月の1,044万人から 1,101万人に むしろ増加しており、この結果、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル 議長が注目している「求人倍率(=求人数/失業者数)」も再び1.9倍まで上昇した。
また、新規失業保険申請件数も、1月13日の週以降、5週連続して20万人を割り込むなど、米労働市場は依然ひっ迫しており、賃金インフレが加速しやすい環境である点には注意が必要だ。
3月9日に公表される1月の求人件数に加え3月10日公表の2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数や失業率がどの程度悪化するかに注目が集まろう。 引き続き市場予想を超える強い結果になる、あるいは平均時給が前年比で大幅に上昇するようなら、 FOMCメンバーがさらにタカ派にシフトするとの見方が広がり、長期金利上昇や米株価下落、ドルの急上などに繋がる公算が大きい。
プロフィール
尾河 眞樹
プロフィール
尾河 眞樹
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン・チェース銀行などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職。
米国雇用統計の主な指標の実績と予想
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2023年3月 | +22.2万人 | ||
2023年2月 | +19.0万人 | +51.7万人 | |
2023年1月 | +20.1万人 | +22.3万人 | +26.0万人 |
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2023年3月 | 3.4% | ||
2023年2月 | 3.6% | 3.4% | |
2023年1月 | 3.7% | 3.5% | 3.5% |
出所:時事通信社(2023年3月3日(金)時点)
米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢を見る十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。
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米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年2月3日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年1月6日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2022年12月2日発表分)