2024年2月2日(金)、日本時間22時30分に米国で1月雇用統計が発表されます。
今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。
今月の注目ポイント
「米国の景気動向を見極める」
ソニーフィナンシャルグループ チーフアナリスト 尾河 眞樹
年初からドル円は急上昇し148円台を付ける展開となりました。昨年末は下落トレンドだったのに、なぜ急に反転上昇したのか、不思議に思われるかたも多いのではないでしょうか。これは、日米の金融政策に対する市場の見方が変化したことが背景にあります。
特に、米連邦準備理事会(FRB)については、米国のインフレ減速により、市場では3月の利下げ開始と、年内6回もの利下げを織り込んでいました。しかし、年明けに発表された12月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比21.6万人増と、前月の17.3万人、市場予想の17.5万人を大きく上回ったうえ、失業率も3.7%で変わらず、平均時給は前年比4.1%と、市場予想(3.9%)を上回るなど、強い結果となりました。
加えて、NY連銀のウィリアムズ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、FRBのウォラー理事など、FRBの高官から、「(インフレ鈍化の)さらなる証拠を見る必要がある」「以前ほど急いだり、迅速に利下げしたりする理由は見当たらない」などと、年内6回もの利下げを織り込む市場をけん制するような発言が相次いでいることも、利下げ期待の後退に繋がり、ドルを押し上げています。
インフレの低下に伴い、実質所得が増加していることや、市場の先走った利下げ期待で米長期金利が低下し、株価が上昇、信用スプレッドが縮小するなど、金融環境が緩んでいることも、米国経済を下支えしそうです。1月分の米雇用統計は、こうした要因で実際に景気が堅調となり、インフレが過熱するリスクを見極めるためにも、注目度は高いでしょう。仮に、前回よりも強い結果となり、平均時給も伸びが加速するなどした場合には、市場参加者の利下げ観測はさらに後退し、ドルをもう一段押し上げる可能性もありますから注意したいところです。
なお、当社ではFRBの利下げ開始は6月になると予想しています。
プロフィール
尾河 眞樹(おがわ まき)
プロフィール
尾河 眞樹(おがわ まき)
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン・チェース銀行などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職。
米国雇用統計の主な指標の実績と予想
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2024年2月 | +16.9万人 | ||
2024年1月 | +16.8万人 | +21.6万人 | |
2023年12月 | +18.3万人 | +19.9万人 | +17.3万人 |
発表年月 | 予想値 | 実績値 | 修正値 |
2024年2月 | 3.8% | ||
2024年1月 | 3.8% | 3.7% | |
2023年12月 | 3.9% | 3.7% | 3.7% |
出所:時事通信社(2024年1月26日(金)時点)
米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢をみる十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。
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過去の記事はこちら
米雇用統計・今月の注目ポイント(2024年1月5日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年12月8日発表分)
米雇用統計・今月の注目ポイント(2023年11月3日発表分)