こんにちは、ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓です。
これまで未就学児から小学生までに、ご家庭でできる金融教育についてやっておきたいことやキャッシュレス時代のご家庭における注意点などをお伝えしました。
【おうちで金融教育1】子どもの金融教育はじめの一歩。子ども名義の口座を作ろう(未就学児~小学校低学年)
【おうちで金融教育2】毎月のお小遣いを導入する際には、必ずコレをやろう(小学生)
【おうちで金融教育3】キャッシュレス時代の金融教育の注意点は?
今どきは、高校で投資を学ぶ時代です。今回は、小学校高学年~中学生を対象に、ご家庭でできる投資教育について考えてみましょう。焦って始める必要はありませんが、子どもたちの興味の度合いに応じて、少しずつ進めてみるのもいいでしょう。
「投資って何?」をどう説明する?
2022年度より、高校の家庭科などの授業で金融教育や投資教育が行われるようになりました。ライフプランやリスク管理の考え方、金融商品のメリット・デメリット、資産形成の基礎などについて、「生きる力」として学ぶ時代になっています。ご家庭でも、子どもの様子を見ながら、投資教育を始めてみるのもいいでしょう。
まずは、小学生や中学生に「投資って何?」と聞かれたときにどう説明するかについて考えてみましょう。
私が授業で金融教育を行う際には、まず、貯金(貯蓄)と投資の対比で導入することが多いです。貯金(貯蓄)は「預金などでお金を貯めること」、投資は「株式や債券、投資信託などでお金を増やそうとすること」などと説明しています。預金や株式、債券、投資信託といった金融商品の説明は後述します。
貯蓄
・イメージは積木。
・「貯める」ことを重視。
・当初預けた元金を割り込むリスクはない。
・金融商品の例としては、普通預金や定期預金など。
投資
・苗の成長を見守るイメージ。
・「増やす」ことを重視。
・当初預けた元金を割り込むリスクがある。
・金融商品の例としては、株式や債券、投資信託など。
自分のおさいふの中からお金を出して、積木のように積んでいくのが貯蓄、おさいふの中のお金で苗木を買い、見守りながら時間をかけてじっくり育てていくのが投資のイメージと説明しています。お金の積木からは、定期的に決まった利子が受け取れます。一方、苗木の方は、定期的に花を咲かせて配当が受け取れたり、苗木自体が少しずつ成長していきます。もちろん、花が咲かないときがあったり、苗木が成長しないことがあることも加える必要があります。
投資を説明する際には、単なる「お金儲け」ではなく、投資をするという行動を通じて、社会を豊かにするものであることも説明します。企業への投資(株式の購入など)であれば、集まったお金で新商品や新サービスを開発して私たちの生活がより便利に豊かになる可能性があります。国や自治体への投資(債券の購入)であれば、国や自治体による各種サービスが充実することに使われます。
「リスクがある」「増やす」といった言葉を聞いて、まれに「投資はギャンブルみたいなもの」と勘違いしてしまうお子さんもいます。ギャンブルは集めた掛け金を分け合うため、一部の人が利益を得て、大多数の人は損をする「ゼロサムゲーム」ですが、投資はそのお金を使って企業が成長していくのを見守るものなので、基本的に違うことを説明しています。
金融商品をどう説明する?
小中学生に対する金融商品についての説明は、最初は簡単でよいと思います。一度にすべて、説明しようとしても混乱するだけですので、子どもの様子を見ながら、何回かに分けて、伝わる言葉で説明していくようにしましょう。
説明する際のポイントとなる点を書き出しておきます。
各金融商品で性質が高いものを3段階で示したものです。数字が大きい方が性質が高いものです。
預金 | 株式 | 債券 | 投資信託 | |
安全性 | 3 | 1 | 2 | 1 |
収益性 | 1 | 3 | 2 | 2~3 |
流動性 | 3 | 2 | 2 | 2 |
預金
銀行にお金を預けることを指します。普通預金(変動金利)と定期預金(固定金利)などがあり、預けていると金利がつきます。一般的に、元金や利子の支払いが確実な、安全性が高い商品とされます。万一、銀行が破綻しても、「預金保険制度」により元金1,000万円とその利息は保証されます。必要なときに引き出せるため、流動性が高い点がメリットと言えます。ただし、預金金利を上回る物価上昇が続くと、資産の価値が実質的に下がるリスクもあります。
株式
株式を購入することで企業に出資をすることを株式投資と言います。株主には、(1)経営参加権(議決権)(2)配当請求権(3)残余財産分配請求権の3つの権利があります。株主優待がある銘柄もあります。株式投資では、配当金のほか、株価が上がって売却をすれば売却益が得られます。収益性が期待できる商品ではあるものの、日々株価は変動し、安全性は決して高くありません。株式は売却した日を含め3営業日目に換金され、流動性はやや低めです。
債券
債券を買うことは資金を貸し出すことに等しく、発行される債券は「借用証書」ともいわれます。公的なものでは個人向け国債や地方債、民間のものでは社債などがあります。債券を購入すると、一定の利息を受け取り、満期日に額面額が戻ります。発行体が倒産した場合、満期時に払い戻されないリスクがあります。
投資信託
投資家から集めた資金を、専門家(ファンドマネージャー)に運用を任せるものを投資信託と言います。株式や債券の銘柄を1つの苗木とするなら、投資信託は複数の苗木のパッケージ商品。販売や換金などは証券会社や銀行が行い、運用は投資信託委託会社、資産の管理や売買などは信託銀行が行います。運用で得られた運用益は出資額に応じて分配されます。投資信託では「分配金」と言います。公社債のみで運用する投資信託を公社債投資信託、株式を組み入れて運用することができるものを株式投資信託と分類します。
リターンとリスクの関係
投資には「リスク」があることを忘れずに伝えましょう。金融商品のリターン(収益)とリスクの関係では、リスクを抑えるとリターンも小さくなる「ローリスク・ローリターン」、リターンを大きく狙うとリスクも大きくなる「ハイリスク・ハイリターン」などがあります。
リスクは小さいのに大きなリターンを狙える「ローリスク・ハイリターン」の商品はありません。「ローリスク・ハイリターン」の商品を勧められるようなことがあったら、それは詐欺の可能性が高いことなども、子どもたちに注意を促しましょう。
「投資信託」から始めるのがいいのはナゼ?
小中学生でも投資に興味を持つことがあるかもしれません。もし、「投資をやってみたい」という話が出たとき、最初に学習して欲しいのは投資信託の積み立て投資です。
投資にはリスクがあることは述べてきましたが、「投資信託」の「積み立て投資」であれば、少しでもリスクを抑えた投資が可能であるうえ、少額でも始められるので、初めての投資体験に向くと考えられます。投資信託は、例えば日本株式型であったとしても、1つのファンドの中で多くの銘柄に「分散投資」されているため、値動きがならされます。それを積み立て投資することで、投資のタイミングを分散し、高値づかみを避けて購入価格もならすことができるのです。
子どもと一緒に商品研究や投資信託選び
銀行で投資信託を購入する場合、1月1日時点で18歳になれば、自分でNISA口座を開くこともできますが、小中学生が投資を学ぶ際には、親が運用するNISA口座などの運用状況を見せながら説明してもといいでしょう。あるいは、子どもと一緒に商品研究や投資信託選びなどをするのもいいかもしれません。
投資信託の商品研究の際には、日経225やTOPIX、S&P500、全米株式、外国株式などに連動する「インデックスファンド」から選び、あるいは組み合わせを試しに考えてもらうのもいいでしょう。
ニュースや新聞をチェックする習慣を
ニュース番組などで日経平均株価やTOPIX、米国株などが報道されたら、意識して話題に出してみては?「日経平均株価が何円上がったみたいね」といった程度でもよいでしょう。ニュース(テレビやネット)や新聞をチェックする習慣がついて、政治や経済に興味を抱けば大きな収穫です。
興味を持った投資信託の基準価額の動きも時々確認をするようにしましょう。基準価額が上がったときは問題ないですが、逆に下がった、ときこそ、「積み立て投資は10年、20年の長期の勝負だから、目先のマイナスは気にしない」「基準価額が下がると、口数がたくさん買えてお得よね」などと教えてあげましょう。
いずれ自分でNISA口座を開けるようになったら、自分で投資信託の積み立てを継続できるよう、ヤル気や興味をつないでいきたいものですね。
ちなみに、生み出された利子が元金に加わり、利子に利子が付くことを「複利」と言います。複利の積み立て投資で、元金が2倍になる年数がわかる「126の法則」について話してみると、さらに興味を引くかもしれません。期待収益が3%なら、126÷3=41年、5%なら126÷5=25.2年で元金が2倍になると計算できます。こういったトリビア情報を好きなお子さんもいることでしょう。
まとめ
小中学生から投資になじむ機会があって、その後も順調に興味が膨らんでいくようなら、投資はもっと身近なものとなり、将来、社会に出たときに、資産形成の大きな力となることでしょう。投資信託の積み立て投資は特別なことではなく、自分にもできるんだという自信をつけて社会に羽ばたいていって欲しいものですね!
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
FPラウンジ代表。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。
マネー誌や女性誌等のライターを経て、94年より独立系FP。マネーコラム執筆・監修、相談業務、講演・研修などで活動中。ライフワークとして、長年、子どもの金融経済教育に携わり、小・中・高生を対象にした金融経済教育授業は200件を超える実績がある。子どもマネー総合研究会会長のほか、亜細亜大学ほかで非常勤講師も務める。
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